ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《88.誘 導6》

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予感は的中し、次の瞬間アリシラ様が重大なる言葉を口にされた。

「けれど、やはり一番怖いものは王族から降嫁された王女様方の嫁入り道具として持ち込まれた品々よね。輿入れの際の積み荷が狙われる事も当時多かった事から歴代の王は王女様を心配してかなり強い呪術が積み荷に施されていたと言われているわ。その様な物はおそらく過去においては不問のままでしょうし、現在においてもその点は……、あら御免なさい。これ以上はタブーだったわ。ふふっ」

今の……、意味有り気に何処か含んだ様な間と笑みは、何を言わんとしているのか?

王家に関しては、今でもお抱えの呪術師を数名秘かに抱えており、軍事的目的としての呪術師を登用しているのではないかとの噂も時折耳にする。
その真相は定かでは無いが、国を守るための隠密の部隊が存在しても不思議はないと私は思っている。
けれど今の話の流れでは、それ以降の降嫁された王女様方の輿入れに際する積み荷にも何らかの術が施されていると、まるで言っている様な気も……。

(アリシラ様……、何をお考えなのですか?)

妹の事を心配し、先程から右往左往しながらやっと……心騒ぎつつも少しだけ安堵感を漂わせていたかに思われていたロナルドに、突如この様な話を聞かせると言う事は、何かやはり狙っての行動なのだろうか?

「……現在においては……、如何なのですか!?……」

追い討ちを掛けられ、少しおどおどとしつつゆっくりとした口調で言葉を口にするロナルド。
その表情は真っ青だった。

我が国の王女様方は他国にも輿入れされている方々もいるが、自国でも高家にかなりの割合で降嫁なさっている。
4代前のグラッセ家に王女が降嫁されている事をロナルドが知っているのかいないのかそれは知らないが、馬鹿でも公爵家や侯爵家に多く降嫁なさっているであろう事は誰にでも直ぐに理解出来ると思う。
今のその言葉は、客観的に見ればロナルドの妹であるテロネーゼが信じているグラッセ家の紋章の刻まれた指輪には強い呪術がかけられているかもしれないと遠回しに言っている様なもので……。
その詳しい呪術の内容が分らぬ以上、ロナルドの慌てる様子も十分理解出来た。
これではとても心穏やかでは居られないだろう。

「ですからそれはお話し出来ませんの。それよりも私は今話題になっている指輪の出所が気になりますわ。大そう立派なものの様でしたし、何やらお妹御に詰め寄られていたグラッセ侯爵も指輪の事は気にしていらした様に見受けられましたけれど……」

その言葉に我に返った様にロナルドが私に振り向いた!

「……お前、やはり、俺を謀っていたのか!!」

「いえ……、あの……、だから送り主は分らないと……」

(アリシラ様ッ。こんな時に何と言う事を仰るのですかッ?!)

と……、とにかく当初の予定道理、私は必死にシラを切りつづけた……。
凄みのあるロナルドの言葉に、それ以上の言葉を紡ぎ出す事が最早不可能で……、私は思わず後ずさりしながら救いを求めるようにアリシラ様を顧みた。
アリシラ様は、まるでこの状況を楽しんでいるかのように、満面の笑顔でニッコリとただ微笑まれている……。
これは、一人で何とかしろと言う事ですか?!

「……けっ、けれど……、分らないのだから、そう言う事も有り得るかもしれない……かもしれない……」

なっ、何を言っているんだか自分でも分からなくなってきそうだ……。
半分涙目になりそうになりながらも、必死に応戦する言葉を考え続けていると、後ろで何やらクスリッと含み笑いが聞こえて来て、ポンっと肩を叩かれた。

「まあ、良いわ……、今後に期待しましょう」

「えっ?!」

「ねえ、こんな所で彼女を責めるよりも、そんなに心配なさるほど大切なお妹さんならば、他にする事があるのではなくて?」

アリシラ様から言葉を告げられた途端、ロナルドが我に返った様にハッとした。
そしてとても複雑な表情を見せた。

「ねえ、如何なさるおつもり?」

「それは……」

「そ・れ・は?」

「……」

「人を責めてばかりで物事は解決するものなの? 私ならばも少なくとも直ぐに行動に移すけれど。指の事も心配ですものね?」

「……ゆ……び?」

「仮にその指輪が降嫁なさった王女の残されたものだとすれば、触れているだけの状況で変化が無いのは当たり前ね。強い呪術が施されているものは嵌めた途端呪術が解放される物が多いのよ」

「そんな話、そう易々と信じられる筈……」

「あら、まさか無いとでも思っていらっしゃるの? 我が家にも残されていてよ。7代前の降嫁された王女様が持ち込まれたと言うお品の中にそう言った類の物がありますわ。何ならこれから我が家へいらして頂ければお見せ致しますわよ。如何なさいます?」

「!!……」

「そうそう。けれどそれまでにお妹さんの指が……、まだ繋がっていると宜しいけれど……。我が家にお誘いしたからだと、事が起こってから責め立てられても迷惑ですものね。ふふっ」

「……ッ!」

途端、ロナルドは悔しそうに拳を握りしめると、脱兎の如く走り去って行った……。

アリシラ様、お見事です!

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~ Comment ~

NoTitle 

更新、お疲れ様です。

あははは、アリシラさん、見事売国奴を撃退!
マリーもマリーでまだまだですけどよく頑張りましたね。
やっぱりこういうシーンは溜飲が下がってすっきりします。

国家お抱えの呪術師で結成された隠密部隊。
もし、この国が乱れていたらそれに対抗する秘密結社!
みたいなお話もあったんでしょうね。今のお話とは関係ありませんが(笑)

さて、ようやく売国奴も撃退したことですし、そろそろマリーにだけ種明かしするところでしょうかね。
どんな仕掛けでも、実際信じさせたアリシアさんの立ち回り、マリーも見習ってくれるといいですね。

yama様 

今日は。

なっ、なんとか誘導終了しました。
この場面、説明だけに済ませようか迷っていたんですが、ずにきちんと書いて良かったと思える事。結構大変でしたが、溜飲が下がってすっきりしたと言って頂けると書いて良かったと思えます。(結構大変でしたが^^;)

国家お抱えの呪術師で結成された隠密部隊は今回のお話では出て来ませんが、設定的に国が乱れていたらきっと大活躍していた事は疑う余地はありませんね。

マリーだけへの種明かし、これって皆さん読みたいのかな?早くアレクの場面が読みたいのかな?と思いつつ、何か書かないと私自身がスッキリしなくて^^;実は今書いている所だったんですが、そう言って頂けると何かホッと出来ます。
このまま早々に書き上げて、私も次はアレクの場面を書こうと思います^^

いつもコメント有り難うございます。

 

アリシラ様「実は全部ノンフィクションで」

マリー「えっ……(蒼白)」


なんて冗談を頭の隅で考えてニヤニヤするアリシラ様、というのを考えてしまいました。そのくらいの余裕はありそうです。

ロナルドもやられっぱなしではないでしょうし、これからどうなっていくのか、まだ先は長そうですね。楽しみ!


 

ポール・ブリッツ様 

今日は。

はははっ。アリシラ様なら最悪それでもやってのけてくれそうですよね♪

この先あまり長くする気は無かったんですが、って言うか100話越えしそうな状況になるとは全くの想定外で、今回は短めに纏めるつもりだったのに可笑しいなぁ(笑)
ロナルドの件は何処まで掘り下げるかなぁ。ホント彼の性格から言ってこのまま黙ってはいないと思うんですよね。
もうキャラが勝手に動いてくれるので、私は彼等の言いなりに書いてます。(勿論大筋は頭の中にありますが)
ロナルドについては国外での所業もありますし、そこはあまり長くせずサラリと抑えるつもりなんですが……。
出来るだけ年内完結を目指す予定なので←ホントか?(笑)

体力無くて最近夜直ぐ眠くなるので、この所ストック殆どなくて時間が欲しい……、仕事がある日疲れて書いてて眠くならない体力が欲しい!(爆)
ストック10話位あったら先が見えそうなんだけどなぁ(笑)

いつもコメント有り難うございます。

NoTitle 

ま、何かに振り回されて、誰かを責めるのは簡単ですけどね。
いや、それはそれで面倒くさいことになりそうですが。
人に振り回されるのはともかくモノに振り回されるのは止めた方がいいですね。何にしても。

LandM様 

今日は。

書いていて結構今の場面は面倒くさかったです。でも、書かないと後悔しそうだったのでしっかり書きました。
また間にちょっと色々ありますが、一番面倒と思っていた事は通り過ぎたので少しホッとしています(笑)
人に振り回されるより確かにモノに振り回される方がたちが悪いですものね^^;

いつもコメント有り難うございます。
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