ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《89.解 読1》

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アリシラ様はロナルドを見送った途端声をころして笑い始めた。

「馬鹿な子ね。所在も聞かずに突っ走るなんて」

確かに……。とりあえずアリシラ様が来られた方角へ向けて走り去って行ったが、直ぐに見つける事が出来るのだろうか?

「アリシラ様。あの……、有難うございました」

「ふふっ、良いのよ。けれどアレクシスからの伝令を受けた時は驚いたわ。あの指輪を貴女に託したと言う話しは既に聞いてはいたのだけれど、まさか奪われるだなんて……」

「申し訳ありません……」

アレクから貰ったあの指輪は、アレクがお母様亡きあと大切にしていた形見の品でもある。それはアリシラ様にとっても同様大切な想い出の詰まった品であると言う事に間違いない。
本当に不可抗力であったとは言え、もっと注意すべきだったと今更ながらに悔いるばかりだった。

「何辛気臭い顔をなさっているのよ。馬鹿ね」

「アリシラ様……」

「私の方こそ事情を聞いていたのに、ずっと気になりつつも中々行動に移せなくて……。抜け出せなくて遅くなってしまってごめんなさいね」

「そんなッ。とんでも無いです!」

「けれど、王太子妃殿下と御一緒していたら貴女と居る筈のマニエール男爵夫人の姿をお見かけしたものだから、本当にびっくりしたわ。男爵と御一緒だったから、これから謁見だと言う事を直ぐに察することが出来たから事情を話しこちらへ赴かせて頂いたのだけれど、まさか用意周到、あの者が既に婚約者気取りで攻め入っていると言う場面は想定外だったわ。本当に間に合ってよかったわ。貴女に何かあってはアレクシスに申し訳が立たないもの」

「そんなっ。けれど私も、本当にびっくりしました……。アリシラ様に来て頂いて、本当に良かったです。けれど、まさかあの状況からこの様な展開になるとは夢にも思っておりませんでした」

「ああ、あれはね。ふふふっ」

何か思い出し笑いをしているようだ。
あの緊迫した状況の、何がそんなに面白い出来事だったのだろうか?

「仕掛けに惑わされてあの者の慌てふためいた姿、今思い返しても可笑しくて。私笑いを堪えるのに実は必死だったのよ」

「仕掛け?! あれは……、仕掛けだったのですか?」

「首飾りの件はね」

半信半疑ではあったが、まさかの告げられた事実に、一瞬呆気に取られた。

詳しく話を伺ってみれば、何やら諸々の式典がつつがなく進み、無礼講となり割り当てられていた最初のダンスの相手を済ませ、やれやれと思っていた所で警務騎士団総帥長パウウェル氏が直々にやって来て話しがあるからと別室へ連れられたのだと言う。
既に従者のリレントさんを介して伝言を受け取っていた事から、何の為に警務騎士団総帥長殿が直々に来られたのかは直ぐに飲み込めたらしい。
そして用意された部屋を訪れると、そこには本日祝いの宴にと呼んであった奇術師が待機していたとの事だった。

「詳しい事情を教えては頂けなかったのだけど、おそらく貴女の前に現れるであろうロナルドに、出来る事ならば呪術が如何に恐ろしいものであるかと言う事実を刷り込み、妹御共々アレクシスの許へ駆けつけるように仕組んで欲しいと頼まれたのよ。けれどテロネーゼは既に自らの意思でアレクシスの許へ先に赴いていたものだから、こちらとしてのターゲットはロナルド唯一人に絞る事が出来たと言う訳」

呪術の存在は我が国の国民ならば周知の事実だ。
けれどそれは遠い昔の出来事で、現在では人的に害を及ぼすようなものは既に残っていないと思っている者も、若者を中心に結構多いのだと言う。勿論恐怖を感じている者も中にはいるが、ロナルドが如何思っているか分らぬ以上、恐怖心を駆り立てるように仕向けると言うのは必要不可欠な事だった。
だが、それを知らしめる為には自らが所持している結婚指輪に施されてある束縛の呪術だけでは心許ない。恐怖心を煽るにはこれだけでは無理だと考えたらしい。

「脅しでは無く確かに強力な呪術の存在は今も残っているのよ。けれどこの事はわざわざ公にするものでも無いのよ。だから誰も何も言わないし、我が家でも話が漏れぬ様に今まで厳重な注意を怠らなかったわ。けれど今回はこのままでは更なる危機を招きかねない現状でもあったから、強硬手段に出ることにしたの」

呪術の施された指輪の存在を公にした理由をアリシラ様はその様に話してくれた。
私自身も呪術の存在については中途半端な認識しか今まで持ち合わせていなかったので、今回そのお蔭できっと呪術の存在を柔軟に受け止めることが出来たのだと思う。

「だから奇術と併用させて抑揚をつけながら言葉巧に恐怖心を煽る様に話しの流れを持って行ってみたのだけど、何とか成功した様で良かったわ」

何とか所か大成功だと思う。

「本当に有難うございました」

私は感謝の言葉を述べながら深々と頭を下げた。
もう一つの真相を明らかにしたいと思いながら……。

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~ Comment ~

NoTitle 

更新、お疲れ様です。

ふむ、首飾りの方については何かの装置を作動させたとして、
指輪の方は本物の呪いの力ってことですね。
呪術は現実のものとして今もまだ存在しているということですね。おおっぴらにしてないだけで。

そりゃ、指輪がひとりでに勝手に元の指に戻るとか、そういう力じゃなければ不自然ですものね。これが科学の力だけでやったらある意味呪術より凄いことですし(笑)

しかし、上層部は相当大がかりに売国奴を追いつめようとしてますね。
こういう呪術って大っぴらにしてしまうと、できることの限界を知られるっていう短所がありますから(どうなるかわからないってのがこういう類の力が恐れられてる理由のはず)
わざわざその一部をあかしてまで、みんなしてマリーを守るためだけでなく、事件解決に全力を尽くしているようですね。

ひとまずの危機は去った模様、マリーはマリーで今のうちに聞くべき所を聞いて読者にも種明かしみたいな情報を引き出してもらいたいところです。

yama様 

今日は。

はい。仰る通りです。
ロナルドに関しては国外への流出が許されていない国宝石のアクアローズの原石横流しの容疑がかかっているので上層部も必死です。
ただ証拠不十分でまだ捕らえられない為、色々必死です。
なので上層部がマリーに協力した理由も指輪の事だけが理由ではありません。

一先ずマリーの危機はこれで脱しました。
あとは今後の状況に精神的に如何切り抜けてくれるか位ですかね。

いつもコメント有り難うございます。

NoTitle 

何にしても、呪いも何もかも利用するのが策略ということなんでしょうね。あるいは。。。まあ、こっちの方が個人的には好きですが。

LandM様 

今日は。
そうですね。何もかも利用できるものは利用する。そう言う作戦なので。
社交界の影のドンはきっとアリシラ様ですね(笑)

いつもコメント有り難うございます。
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