ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《92.嘘 動2》(アレク視点)

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他者を卑下する言葉を感じても、弱者の失敗を嬉しそうにする表情を目にしても、出来るだけ視線を逸らすように心がけて来た。けれど習慣と言うものは恐ろしいもので、どうしても自然と目の端で追ってしまう自分がいる。
だから何かを感じ取れても黙っていようと懸命に心がけて来た。
けれど流石にもう限界だ!
こちらには聞こえていないと思っているのだろう。先程から他者を貶める暴言の数々を吐き散らし、それだけでも胸の奥に少しずつ蟠りが蓄積している感はぬぐえなかったと言うのに、それに加えて有ろうことかマリーの事を卑下するような口調を強く感じ取ってしまった!
その瞬間、怒りで思わず身が震い出した。だが、懸命に視線を逸らし平常心を心がけ、内なる心を抑え込んだ!
手を取っていた令嬢は、緊張からか私の些細な変化に気付く事は無かったが、おそらく私が彼女の手を振り払いたい衝動に突如駆られたあの瞬間の様子を、リレントは逃がさなかった様に思う。
彼の視線は私に冷静になる様にと無言で訴えかけており、そのお蔭で私は何とか令嬢の手を離す事無く感情をコントロールし、何とか自らを抑え込む事に成功する事が出来た。
二人の未来の為にここは怒りを沈めなければと自らに賢明に言い聞かせての結果だったのだが、今振り返っても自分でも良く耐えられたと思う。
けれど今しがた、間近でマリーを笑いの種にした者が『良い気味』等と言う明確な暴言を口にした!
おまけに次の相手はこの者等だと言うではないか!!
こんなカスのような令嬢等の相手をこれからしなければならないのかと思うと、嫌悪感以外の何も覚えられなくなってしまった。
他者を貶める事に喜びを感じる輩に……、何より愛するマリーの名を辱める言葉を口にした者の手を取るなど、幾ら頼まれても御免だと思った!
だが、それでも……、出来るだけ煮えたぎる心の内を表に出さぬよう、最善の注意を払いながら強張る表情を押さえつつ、鋭く睨みを効かせる程度に押さえ言葉を口にした。

「リレント!」

「はい、旦那様」

「幼気な令嬢に対し労りの心を持てぬ者の相手はしたくない。即刻対処せよ」

「はっ!」

「クレア様、マレイラ様、それにマクベリー家のイレイア様とマレイナ様ご苦労様でした。お引き取りを」

自分でも良くこの程度の言葉に押さえられたものだと褒めてやりたいほど的確な言葉だったと思う。
その意を汲み取り瞬時にリレントも的確な判断を下してくれた事に感謝した。
だのに、この令嬢等と来たら呆れ返るばかりの現状だ……。

「なっ、何よ! 次は私の番なのよ! 帰る訳無いじゃない!!」

「私も絶対に帰りませんから!」

「そうよ、そうよ! あの娘が気を失ったのは私達のせいではありませんわ」

今の話を聞いていなかったのか? それとも馬鹿なのか?

「我が主はその事を申しているのではございません。他の者の失敗を嬉々とする言動が他においても認められましたので、その事を申し上げているのです!」

主の心を瞬時に読み取り、簡潔的に物事を言い伝えることが出来るかも有能な従者役割だと思っているが、リレントはその点においても完ぺきだった。
にも拘わらず……。

「傍で見ていなかったのに、誰が何を言ったかなんて貴方に何が分かるのよ! いい加減な事言わないでよ。失礼だわ!」

「そうよ、そうよ!!」

「…………」

見られていないと思えば何を言っても許されるとでも思っているのか?
半ば呆れ返った様な眼差しで、リレントが私の方へ視線を移している。
何を言わんとしているのか、心の内が手に取る様に理解出来る。
リレントも私と同じ考えだ。
視線を合わせると、無言でゆっくりと頷いた。

「これ以上我が主の不敬を買いたくないのであれば即刻お帰り下さい!」

「まあ何? その態度! たかが従者の分際で私達に逆らうなんて生意気よ!」

「そうよ、そうよ! 不愉快だわ!!」

不愉快なのはこっちだ!!
聞く耳など持たぬ令嬢等の発言、それに加えて己が最も信頼を寄せている友とも呼べるべきリレントに対するまさかの暴言に、私の憤りはついにこの時最高潮に達した。

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~ Comment ~

NoTitle 

まあ、情動的なのも淑女の嗜みということで。
私はそういうのは嫌いじゃないですけどね。
嫌いではないですが、傍観しているのが一番いいですね。
楽しいですから。

LandM様 

今日は。

はい、ここは傍観者に限ります!(笑)
巻き込まれるのは私もご免です。
でも、書く方は必死です。つじつまが合わなくなったらお終いだし(苦笑)
引き続き楽しんで頂ければ幸いです。

いつもコメント有り難うございます。
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