ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《98.嘘 動8》(アレク視点)

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息を切らせてやって来たその者は、到着するなり私とテロネーゼの間に割って入って来た。

「即刻その指輪を捨てるんだ、テロネーゼ!!」

「何を言っているの? お兄様まで、馬鹿言わないで!」

「そうじゃない!! その指輪は危険なんだ!」

急にその話を聞き、辺りがにわかにざわめき始める。
危険と聞いて直ぐに呪術と関連付ける者は少ないかもしれないが、おそらく疑念を抱く者はいるだろう。
この兄の訪れで、少し不味い展開になりそうだと思っていれば、如何やら話の流れがこちらの思惑とは別の意味で好転を始めそうな雰囲気に、一瞬だが呆然としてしまった。

「……危険? この指輪が!? 馬鹿言わないで! 有り得ないわ。一昔前ならいざ知らず、今を何時代と思っているの? 全く……」

兄をせせら笑うような少し呆れた口調の妹に、ロナルドは少し考え込んでいる様だった。

「もしかしたら……呪術がいけられているかもしれない……」

「馬鹿馬鹿しい。お兄さまだって呪術なんてもう存在しないって何時も言っていたじゃない」

「それはそうだったが……でも、違っていたんだ! 一世紀以上前の古いものについてはその限りでは無いらしくて……」

おそらくロナルドとしては意を決して言葉を述べたつもりだったのだろうが、その言葉を聞いてテロネーゼは更に問題無いと位置付けたようだった。
如何いう事なのかと思って聞いていると、それは男の自分等では恐らく想像する事の難しい事が理由だった。

「何よ。もう、びっくりさせないでよ! ならば何の問題もないじゃない。見て、このデザインは今年の最も流行とされているものよ」
「流行?」

「だから全く心配いらないわ。だから私の事は、もうほおっておいて。私には私の考えがあるんだから!」

強い口調で自信有り気に兄の言葉を嗜めまくっているテロネーゼに、一瞬感謝の言葉を述べたくなった。

「最新のデザイン? ……これがか?!」

「お兄様知らないの? パープルローズのデザインは、今年一番の流行なのよ。本当に誰から聞いたのよ、そんなデマ。お兄様でも騙される事があるのね」

「……あっ……」

何か思う事でもあったのか?
ロナルドはいきなり『クソッ!!』と言葉を吐き捨てると悔しそうに頭を掻き毟った。
まさかここでこんな風に悔しがるロナルドの姿を目の当たりにする事になろうとは思いもしなかったが、お蔭で一気に何か色々と誤魔化せた気がして、腹の中で笑いが止まらない。
リレントのこちらに目を配る表情が何処か疑念に満ちてはいたが、そこはあえて気にしないようにと心がけた。
これで一気に話が片付いてくれると有難いのだが、それでは都合が良すぎると言うモノか?
何やらロナルドは頭を抱えて想いを巡らせている様だった。

しかし、流行は繰り返されるものだと言うが、まさかこう言う所でこの様なオチが待っていようとは思いもしなかった。
そう言えば確かにあの宝石商も似たような事を言っていたか……。
今年の流行は現国王の御印であるパープルローズと言う事だったが、この色は中々無いもので、純度の高いアクアローズをそれに見立てて今売れ筋だと言っていた。
中でもこの指輪同様に薔薇の細工で掘ってくれとの注文が一番多いのだと言っていたが、それはこう言う事だったのだ。

「……お兄様、しっかりしてよ。お兄様らしくも無い……」

頭を抱え込むロナルドの姿に、少し呆れ返ったとでも言いたげな様子のテロネーゼ。
妹の事が心配で、おそらくここまで駆けて来たであろうに、報われないその声に少しだけ同情を覚えていたのだが、暫くすると無言のまま沈黙を続けていたロナルドが、私を仰ぎ見て訝しげな表情をした姿を見て、私は自らの考えが甘かった事に気付いた。

「……何か企んでいるのですか?」

突然こちらに向けられた言葉に、一瞬心の臓が大きく脈打った。

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~ Comment ~

NoTitle 

更新、お疲れ様です。


この兄妹、本当に売国行為をするほどの頭を持っているのか?って思うほど馬鹿馬鹿しいやりとりしてますよね(笑)

こんな公な場面で呪いとか何だとか言ってたら、誰もが疑うにきまっているというのに。

流行って繰り返されるものなんですかね。作中で言ってる通りに男の私じゃわかりませんが、デザインだけで最新のものと思うのはやっぱり軽率ですよね。

とはいえ、そう簡単にはうまくはいかなさそう。
アレクを疑い始めた売国奴にどんなやりとりでかわすのか楽しみです。

yama様 

今日は。

ホントに今現在はかなり馬鹿馬鹿しいやり取りをしてますね。この兄妹^^;
ロナルドも妹が心配で翻弄されていたので今まで冷静さを欠きかなり間抜ズラですが、ちょっと今冷静になってしまったようなので、ここから変わって来るかも?しれませんね(笑)

軽率な所、ここがテロネーゼらしいですね。
ってか彼女の場合自分の都合の良いように物事を考える所があるので、彼女に考えさせればこうなります(爆)

そうそう、上手くいきそうでそういかないですね、何か気付いた様子ですね^^;
ロナルドだけなら切り抜けられる可能性もありかもしれませんが、傍には……。この先はまだ内緒です(笑)

いつもコメント有り難うございます。

NoTitle 

いつの時代でもそういうのは信じられていますけどね。
私はそうでもないですけど。
私の車も心臓発作で亡くなった方のを拝借してますけど、そういうのは誰も買いたがらないですからね。私は気にせず買いましたけど。

LandM様 

今日は。

こういうものは最近の若い方は気にしない方が増加傾向にあると言いますものね。
私は結構なんでも怖がりな方なんで^^;
基本、何事もどちらかと言えば自分の目で見なければ信じない!と決めていますが、それでも何か怖いんですよ~。
気にならない方が羨ましいです。

つもコメント有り難うございます。
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