ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《99.嘘 動9》(アレク視点)

 ←ずっと心に決めていた《98.嘘 動8》(アレク視点) →ずっと心に決めていた《100.嘘 動10》(アレク視点)
妹を心配するあまりか、話に聞いていたより些か腑抜けな奴だと思っていたが、暫く考え込む様子を覗かせた後は、急に目つきが変わった。
奴の中で何があった?
いや、それが奴の本来の姿なのか?!
まさか、急に奴がこちらにあのような視線を向けて来るとは思いもしなかった。
ロナルドの表情は疑念に満ちており、その口から漏れ出た言葉は私を強く捕らえた。

「何の事だ?」

とりあえず惚けてはみたが、正に一触即発の雰囲気が漂っていた。

「……この状況、どう考えて見ても可笑しくないですか?!」

先程までの焦った様な口調ではなく、その喋り方は落ち着きはらっていた。

「ほぅ。で、その根拠は?」

「ここに向かうまでの間、色々な者にグラッセ侯爵、貴方の行方を聞いた。すると色々な話が飛び込んで来た。うちのテロネーゼとの話は噂にすらなっていないのに、今日湧いて出た様な話で場内は満ち溢れていた。花嫁探しのダンスだの、指輪を見つけた者への報奨も、それにマリエッタとの貴方の噂を口にしている者までいる始末。今この城中は貴方の噂話でもちきりだった。これって何処か可笑しくありませんか?」

確かに数ある噂話の中で、こちらの話だけが優先して流されるのは不自然だ。
それは方々で敢てその話をこちらが流しているからで、確かにそこは痛い点を突かれたと思った。
どうやらやはりこの者は、唯の腑抜けではないようだ。

「成る程、どうやら貴方は私が思っていたほど愚か者ではないらしいな」

ここまでくれば、もう正面切って戦うまでだと腹を括った。

「なっ!」

「妹とはそんなに可愛いものか? 理性を削がれる程に」

「それはッ……」

「まあ、兄妹のいない私には正確には分かりかねる感情だが、私情で気が削がれると言う事は自分がそれだけの人間でしかないと言う事だ。まだまだ未熟だな」

「貴方に言われる筋合いはない!」

当然だ。私も人の事は言えない。事マリーが絡むと冷静さを欠くのは避けられない気がしてならない。まだまだ未熟だ。

「確かに。これ以上他人事に干渉する気は私も更々無い。だが、指輪の事となれば話は別だ。その指輪は我が家に代々伝わる家宝の指輪かもしれないのだからね。その指輪について、貴方が何を思われているか正確には推測しかねるが、おそらくその半分位は正解だとは思いますよ」

やはり悪い事に手を染める輩はある意味で頭が切れるのだと言う事を、この時私は思い知る事になった。

「クソッ! テロネーゼ、その指輪を捨てろ!!」

やはりコイツは一筋縄ではいかない。
そう思った所だったが、兄から告げられた言葉に自らの我で対抗しようとする愚かな妹の存在が私に何か活路が見いだせるのではないかと言う期待を抱かせた。

「それだけは、嫌!」

「こんな時に何駄々を捏ねているんだ!」

「この指輪は私のものよ! 絶対にこれだけは嫌! 誰にも渡さないわ!!」

「テロネーゼ!!」

傍から指輪を手放す気が無かったのだと、この時テロネーゼは自らの口で証明した。
おそらく告げた当人は分かっていない。だが、ロナルドは違うようだ。

「その指輪はまだお前のものでは無い! こう言う形で手にしても決してお前の思い通りになりはしない!」

おそらくロナルドは呪術についてかなりの理解を示し始めている。
それはこちらも望んだ事ではあったのだが、それが裏目に出りはしないかとこの時初めてその事を恐れた。
彼の中では今正にこの指輪は呪術がかけられたものとして存在しているに違いない。
その上で彼は彼なりの正しいと思える選択をし、行動しているように思われる。
たが、妹の存在が現時点において彼の重荷になりえる存在である事は間違いない。
そう確信すると、私は心の内で思わずほくそ笑まずにはいられなかった。

押して頂けると励みになります^^

にほんブログ村
にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村


総もくじ  3kaku_s_L.png パウリンの娘
総もくじ  3kaku_s_L.png 記憶の彼方とその果てに
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ&感謝
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【ずっと心に決めていた《98.嘘 動8》(アレク視点)】へ
  • 【ずっと心に決めていた《100.嘘 動10》(アレク視点)】へ

~ Comment ~

NoTitle 

更新、お疲れ様です。

むむむ、さすがに疑い始めるとアレクも油断できなくなりましたね。
ただ、今こうしてアホな妹が何かをしようとする分、アレクの方がまだ有利のようですね。

こんなアホな妹でも大切なら売国行為などせずに普通に正面から物事に取り組めばよかったものを、そしたらマリーより素敵な女性とも心を通じ合えたはずなのに、そこだけは惜しいですねえ。


マリーも追っているだろうし、マリーが合流したらどんなカオス(私どれだけこういう面でのマリーを信用してないんだと思いますが(笑))な状況になるか楽しみです。

yama様 

今日は。

何かアレクも油断大敵状態になってしまいました。
が、仰る通り馬鹿な妹が傍に居るのでロナルドにとってはそれがどう出るかと言う所でしょうか。

妹が馬鹿でもアホでも無条件で可愛い、可愛いってただ言っているだけだったのがロナルドです。
その彼が売国奴的事をすることになった理由はまた何れ少し触れますが、本当におっしゃる通りですよねぇ。
でも、まあそれが出来ていたらテロネーゼはここまでなってなかったかもしれませんが、それでも限度があるかな。
どう考えてもマリーより素敵な女性のテロネーゼって想像つかない(笑)

マリー、そろそろ来そうですよね。
ははっ、信用無いですよね。今までが今までだし(笑)
でも、マリーはマリーなりにとりあえず成長はしているようなので、温かく見守って頂ければと思います。

いつもコメント有り難うございます。

鍵コメN様 

初めまして。
いつもご覧頂き、有り難うございます。
仰る通りの誤字でした^^;
早速、訂正させて頂きました。
お教え頂き助かりました。有り難うございました。

NoTitle 

こんばんわ('∇')

初めてロナルドさんが頼もしく見えた(笑)
いろいろ刷り込まれて、道中噂話を聞いて、でも冷静になってしまうところは、さすがお邪魔虫w

アレクさんと兄の攻防の真ん中で、意地まっしぐらになっているテロネーゼさん、ますます可愛くなっている(笑)
ロナルドさんは、マリーさんの前ではトコトン嫌なやつだけど、妹の前ではこんなになるんだなあ・・と新しい顔をちょろちょろ覗かせてくれますね(^ω^)
次が楽しみです。

ユズキ様 

今日は。

私も書いてて、そろそろこいつにはしっかりして貰わないと設定崩れていくぞと、自らに言い聞かせ頭の中切り替えました(笑)
テロネーゼはある意味凄い執着ですよね。
彼女は好き嫌いの別れるキャラだと思っているし、おそらく嫌いな方が大部分と思うのですが(元々嫌われキャラだし)、彼女のあのパワーは結構自分でも好きです♪(ある意味尊敬)
ロナルドも妹同様、自分の思い通り事が運ばないと嫌なタイプですが、それでも彼は精神的に大人だし、自分の置かれた立場が分かっているのでそこが彼女との大きな違いです。強欲ですが^^;

いつもコメント有り難うございます。

NoTitle 

物欲があるということに関していえば。
それは持っていないといけない欲望だと思います。
所有権もしかりですが。
・・・にしても、盗みや身を滅ぼすことになると辞めた方がいいですが。

LandM様 

今日は。

物欲は誰にでもあると思いますが、やはり盗みや身を滅ぼすほどの物欲は不味いですよね。
テロネーゼ、そろそろ諦めないとマズイぞ!(笑)

いつもコメント有り難うございます。
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【ずっと心に決めていた《98.嘘 動8》(アレク視点)】へ
  • 【ずっと心に決めていた《100.嘘 動10》(アレク視点)】へ