ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《101.異 変》

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足早に追い駆けて、追い駆けて、追い駆けて……。
アリシラ様がこんなに早い動きができる方だとは思いもよらなかった。
普段はゆったり構えていらして優雅な身のこなしなのに、今日は今までになく俊敏な動きで『失礼』とか『御免なさい』などと言いながら犇めく人ごみを縫うが如く颯爽と足早にすり抜けて行く。
身長差もあるからそのせいもあると思うのだけれど、流石にアリシラ様のように憮然とした態度で後を追う事も出来ず、私は身を低くして頭を下げながらその間を掻い潜り抜けて行くからどうしても遅れを取ってしまう。
ついて行くのがやっとと言う状況だった。
そしてやっとアリシラ様がピタリと止まり、やれやれと思い胸を撫ぜおろしていたら、目の前立ちはだかる凛とした爽やかな眼差しに息を飲んた。

「あっ……」

少々驚いたような眼差してこちらを見つめていたアレクは瞬時に表情を緩ませた。
チラっとだけ私を横見して名を口ずさまれた様な気がしたが、気のせいだろうか?
直ぐにアリシラ様に視線を戻すと、はっきりとした口調で言葉を口にした。

「いらしたのですか」

「ええ、こんな楽しそうな場面、またとないもの。少々遅れを取ってしまったようだけれど、まあ展望は明るい様だから良かったわね」

何を思ったのかアリシラ様はいきなりテロネーゼ嬢の手を取り、指に嵌められている本来私の持つべき指輪に目を落すと、薄笑みを浮かべそう告げた。

(この状況で、展望が如何明るいのだろうか?……)

「なっ、何なのよいきなり!!」

突然手を取られ何かを感じたのか、無造作に添えられたその手を振り掃うと指輪の嵌めた手を抱えるようにテロネーゼ嬢は身を竦めた。
凄い形相でアリシラ様を睨んでいる。
……アリシラ様が誰であるかを分かっていないのだろうか?

「テロネーゼ、止さないか!」

「だって、お兄様ッ!」

一人で大騒ぎしているテロネーゼ嬢に対してロナルドは全くもって冷静で、私の存在に気付いているだろうに目すら合わせようともしない。それ所か……。

「……この状況に何か言う事は無いのですか?! 貴女様が先程仰った内容とは随分と違う様に思うのですが?」

しっかりと状況を受け止め、アリシラ様に詰め寄っている。
先程までの戸惑いと不安に満ちた表情は微塵も感じさせない。

「あら、そうかしら? それにしても、こちらのお嬢さんは随分と威勢のいいのね。でも、そうしていられるのは何時までなのかしらねぇ」

涼しげに、薄笑みをほんのり浮かべるアリシラ様って……、何だか怖い……。

「何……だって!?」

「……そうなのですか?!」

少し驚いた眼差しで振り返る様に妹を見つめるロナルドと、まじまじと覗き込む様にテロネーゼ嬢を食い入るように見つめているアレクシス。
その姿はとても対照的だった。

「……なによ……、何なのよもう!!」

見つめられているテロネーゼ嬢はこの異様な空気にどうやらいたたまれないでいるらしい。
気になりその姿をじっと目で追っていると、一瞬アレクと視線が絡んだ。

「あっ、あの……、クラッセ侯爵様。御機嫌麗しゅうございます……」

公衆の面前だ。アレクの事を親しく呼ぶことはまだ出来ない。
そう思い、きちんと礼儀を重んじて挨拶したつもりだったのだが、アレクは急に不機嫌そうに表情を強張らせたような気がする。
何か、不味かっただろうか?

「…………」

「旦那さまッ」

リレントさんに声を掛けられ、ゆっくりとアレクが言葉を口にした。

「マニエール男爵令嬢も、お元気そうで何よりです……」

何だかとても気まずい……。
アレクとこんな風に口を利くなんて、何だかとても変な気分だった。
少し心苦しく思っていると、それに追い討ちを掛けるが如く、間髪入れずにとっても嫌な声を耳にした……。

「あら、貴女いらしていたの? 御機嫌よう。お・ね・え・さ・ま」

何だがそのとてもわざとらしい言い様に、思わず腹立たしさを覚えた。

「……御機嫌よう。テロネーゼさん……」

だが、私が言葉を口にした瞬間、テロネーゼ嬢が一瞬眉を揺らしたような気がした。
今の……なに?

「何? その目! 何か言いた気ね」

「……いえ……」

「ふ~ん」

一瞬、テロネーゼ嬢の表情が揺らいだ気がしたのは、やはり気のせいだったようだ。

手を翳し、わざとらしくこちらに指輪を見せびらかしているような姿に、思わず怒りで叫びそうになるのを必死で堪えた……。
今は未だ、私自身が自ら先走った行動を取る訳には行かない状況だ。
口元まで出かかった煮えたぎる思いを、必死で飲み込み耐え忍んでいると、突然テロネーゼ嬢の表情がやはり少し歪んだ気がした。

「テロネーゼ……さん?」

「いっ……」

何が起こったのか?
急に指輪を嵌めている手を抱え込み、テロネーゼ嬢が身を竦め座り込んでしまった。

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~ Comment ~

NoTitle 

更新、お疲れ様です。

アリシラさんはあくまで冷静な模様、それ以外の方のテンパってる様子が見て取れます。

アレクとマリーが他人行儀に接しようとして逆に不自然なのが笑えます。
周囲の方はほとんどぽかーんとなってるでしょうね。

発動まで時間がかかるものだったのか、それともマリーが現れたからこそ発動したのか、アレクは知らなくてアリシラさんが知ってる呪い。

こんな公の場所で発動してどんな醜聞になってしまうのか、まあクソ女がどんな呪いをかけられようが同情はしませんがね。

yama様 

今日は。

アリシラ様以外、多かれ少なかれ戸惑いを隠せない状況ですね。
アレクとマリーは、表向きには現時点ではアレで正解なはずなんですが、アレクも頭では分かっているものの面白くないんですよね^^;
マリーが関わってくると冷静さが損なわれる傾向にあるのでアレクは気を付けないといけません。
返ってマリーの方が色々ありすぎて肝が据わった節があったりします(笑)

術の発動についてはアレクとアリシラ様はアレクのお母さまより似たような情報を得ていましたが、外部からの色々な情報を得ている分アリシラ様の方が詳しいと言った所です。
これからまた詳しくなっていくのでお楽しみ頂ければと思います。

いつもコメント有り難うございます。
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