ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《104.真 実3》

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言うに事欠いていきなり何を言い出すのだと思っていれば戸惑う私を尻目に、更にアレクシスは話を深めようとしていた。

「強制はしない。だがお前がそれ程の事を求めるならば、彼女にそれ位しても良いのではないのか? 今までのお前の彼女に対する尊厳を否定するような言動や諸々の所行には目に余るものが見受けられた。今までずっと黙っていたが、幼き頃より彼女を良く知る者の一人として……、また良識ある貴族の一員としても看過できない。本当はその妹にも自らの非を詫びて貰いたい所だが、流石にこの状況では無理だろう。だから考慮する。先ずはお前が心を入れ替えて謝罪しろ!」

「人の足元をッ……」

アレクシスを睨みつけ、何か今にも言い出しそうなロナルドの表情が視界に入り、私は慌てた。

「グラッセ侯爵。わっ、私は別にその事は、もう気にしていませんから」

「私が我慢できないんだ!」

間髪入れずに言葉を制された。

「アレッ……グラッセ侯爵……」

ほんの一瞬だけだったと思うが、私とアレクに絡まるかすかな視線に気付いたのか? 元より疑念を抱いている感の漂っていたロナルドが、鋭い言葉を私達に叩きつけようとしているのが示唆でき慌てた。

「やっぱり、お前らッ」

「いえ……あのッ、違うの……えっと……」

ここで余計な事を口にされ、全てを台無しにする訳には行かない!
けれどこの状況をどうやって打破出来るのかも分らない。
戸惑いを隠せないまま、ただまごついてしまっているばかりの私を、そこでも救ってくれたのはやはりアリシラ様だった。

「滅多な事は口にしない方が良いわよ。おそらく貴女の妹を唯一救うことが出来るのは、彼女だけなのだから」

「「えっ!?」」

思いがけずロナルドの声に私の声が重なり、互いに顔を見合わせてしまった。
すると、たちどころに今度はアレクシスの表情が強張って来て、怒りを含んでいるような気が……。
公の場で滅多に表情を崩さないアレクシスの只ならぬ状況を不思議に思い、心配になり少し見上げて覗き込む様に小首を傾げていると、今度は急にフルフルと手が小刻みに震え出し、額に手を当て『クソぅッ』と小さな声で言葉を吐き捨てられた。

「あの、如何か……」

突然のアレクシスらしからぬ発言を不思議に思い声を掛けようとしたら、アリシラ様から軽く返された。

「ああ、良いのよ。別に気にしないで。己の了見の狭さに一人で自己嫌悪して完結しているだけだから」

「はぃ? ……」

アリシラ様の言葉の意味が分かった様な、分らない様な……。
不機嫌そうなアレクシスの表情も気になるけれど、今はそれよりも私へ振られた会話への対処が最優先であると判断し、アレクシスを横目で静かに見送りながら、私はアリシラ様に再び視線を戻した。

「では……先程の件は一体如何いう……?」

私の声にロナルドも耳を傾け、射るようにアリシラ様を見つめていた。

「先程グラッセ侯爵が仰っていたでしょ? 『指輪は主に依存するから誰にでも授けられるものではない』って。私の指輪と同系統のものならば、きっと指輪の主にならば如何にか出来る可能性は大きいと思うの」

「それで謝罪等と口にするとは、自己顕示欲の塊だな。己のモノでも無い女に対しての執着にしては度が過ぎるのではないか?」

「お前の価値観と一緒にしないでくれ。少なくとも私はお前よりマニエール男爵令嬢の事は良く知っている! 彼女はお前などに傷つけられて良い様な娘では無い! 心根の優しい側に居るだけで誰でも心癒されるような存在だ。それをッ……。お前のような者からそのような発言をされる等、考えただけで虫唾が走る!」

「何だとォ……。もう一度言ってみろ!」

ああ、細い糸の様に絡み合った二人のこの状態を、一体如何すれば……。
それに、よくよく聞いてみればこの二人のやりとりは、受け取り方によっては私が指輪の主だと認めた上で、尚且つ二人の関係についても微妙なニュアンスで公言しているような気がしないでもないような……。

こう言う場合、私が何か介入すべきなのか?
直ぐには答えが見いだせず、戸惑い、如何言葉を紡ぐ事が正解なのかと考えあぐねていると、アレクシスが更なる爆弾を投下した。

「お前に対して二度も無駄口を叩く必要性を感じない。もっとも、今お前が頭で考えている事ならば言い当ててやっても良いが?」

ここまでくればもう、更なる挑発的とも思われる言動を、唯々見守る事しか出来なかった……。

「はっ、当てられるものなら当ててみろ!」

「よもやバウッセリアの戦いで英雄として称えられ、その後爵位を賜ったモロゲン・ダーゼリアン子爵の子孫である者ならば如何にか出来るのではないか等と言う、浅はかな考え事を抱いているのではないか?」

「そっ、そんな事はッ」

少し言葉を詰まらせながら慌てる様子を見れば、それが当たらずも遠からぬ答えであった事は明白だった。

「ダーゼリアン子爵は私も良く知っているが、流石に直系とあってある種の能力には長けているのは確かだ。だが、残念だったな。彼の専門は読心術だ。軍務省においても大いに貢献してくれているようだから、この会場でも探せば容易に見つかるとは思うが、お門違いも良い所だ。……いや、待てよ。今ここに連れて来て、お前の心の内でも読んで貰う手もあるか。きっと面白い事が分かるかもしれないしな」

「ッ…………」

告げられた言葉に、ロナルドは苦痛に満ちた表情を浮かばせていた。

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NoTitle 

この人が黒幕ですか?

いや、これまで「いいものチーム」の中で何食わぬ顔をして行動していた人間が、実は裏切者の黒幕、という展開ではないかと思っていたもので……。

ポール・ブリッツ様 

今日は。

黒幕は、違いますよぉ~^^
あっ、でもその読みで良いと思います(笑)
誰かはまだ内緒ですが^m^

いつもコメント有り難うございます。

NoTitle 

こんばんわ(^ω^)

なにかもう、マリーさん蚊帳の外(笑)
アレクさんも、相当の忍耐を重ねてきたから、ここぞとばかりにジワジワ噴出してますね><
前からこれは言ってやりたかった! という思いがセリフに滲み出してるし、マリーさんオロオロしながらもイイ読みw

ロナルドさん、思わぬ形で追い詰められてきてますね>< テロネーゼさんとうとう一言も発せずな今回、よほど痛いのかな・・・。少し可哀想|д゚)w

ユズキ様 

今日は。

この回は、アレクの溜り溜った鬱憤が(笑)
アレクがこうなってしまったら、マリーが対処するしかないですし、色々アリシラ様やお母様に教えて頂いているのでマリー頑張ってます。自分なりに^^

ロナルドは思わぬところで詰め寄られ、さあどうするのか?
テロネーゼは後ろで痛みと闘ってます。
次回ちょっとですが出て来ます。

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