ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《106.真 実5》

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今目の前に展開しているのは、妹を抱きしめて甲斐甲斐しく接しているロナルドの姿。
ロナルドが自らの行いを謝罪するなんてありえないと思っていたけれど、そんな彼でも妹の為ならば多少なりとも人となりの感情は持ち合わせているらしい。
少し意外だったけれど、今日の様子を見ていれば、ロナルドにとって妹の存在がどれだけ大きなものかと言う事は理解出来た。
唯一目にしている彼の良識ある人間らしい優しい一面。
けれど、そう言う彼の姿を見ても、認めるつもりは無いけれど、内輪で結婚話が進んでいる相手だと言うのに私にはそれ以上の感情は微塵も抱けない。
親の決めた縁談には愚問を唱えずに嫁ぐのが貴族の習わしだと言う事は知っているし、自分も本来はそう有るべきだと言う事は分かっている。けれど私はその世間の常識を自らの手で打ち壊す事に決めた。
またロナルドと別の意味で貴族としての良識ある行動をしていないと他者に知れ、咎められても仕方が無いと思っている。
それでも私は決めたのだ!
この傍で見守り、私を愛し理解してくれているアレクシスと共に生きて行くと言う事を……。何があっても、もう後戻りだけは決してありえないッ。
内なる決意を再確認し、ふと見上げれば、そこには柔らかく温かな眼差しがあった。

今の私が彼の為に何が出来るのだろうか?
次なる行動を起こさなければならないのは私だと言う事は勿論分かっている。
謝罪の言葉を口にしたロナルドが何を私に期待しているのかも。
それは勿論今目の前で起こっている状況の鎮静化で間違いないと思う。

痛みで苦悩る妹に優しく声を掛け励まそうとするロナルドの姿。
ずっと今まで自分勝手な冷たい人だと思っていたけど、妹にはこれだけ優しいのだ。彼は……。
彼の遠回しの謝罪の言葉の中に、私は初めてロナルドの良識的言葉を耳にしたような気がしていた。
二人の動向を見守っていると、唯ずっと様子を見守っているだけの私に痺れを切らせたのかロナルドが急に振り返り、射すような眼差しを向けた。

「あっ……」

眼光鋭い彼の眼差しは『早くしろよ!』とてもまるで訴えかけている様だった。
ならば早く何とかしてあげなくてはと思うのだけれど……、ロナルドには本当に申し訳ないのだけれど、実は私には今……、だから自分が如何すれば良いのかが全く分かていない……。
自ら出来る事は協力すると言っておいて、今更本当に申し訳ないのだけれど……。

「ごめんなさいロナルド。私、如何すれば良いのかしら?」

「はあ!?」

眉を引き攣らせ、眉間がピクピク動いている……。こっ、怖いッ!

「なっ、何か傍で言葉でも唱えれば良いのかしら? 抜けるようにお祈りすれば良い?!」

「……この期に及んで、何を言ってるんだ!?」

「でも、初めての事だから、教えて頂かないと分らなくて……」

おそらく期待外れだったのだろう私の答えに、ロナルドの表情はみるみるうちに険しくなり、手はワナワナト震え出した。

「ふざけるなッ!」

「!!…………」

途端に、怒鳴られた……。こっ、こわいッ……。

「そんな事自分で考えろよ!! お前がその指輪の主なんだろ?!」

「……ええ。た……ぶ……ン?」

「はあ!?」

「いえ、そうだと……思います? いえ、そうです!」

ロナルドに睨まれて、慌てて言いかけた言葉を訂正した。半分涙目になりながら……。

「なら、やれよ! お前しか頼れないんだから!」

「はっ、はいッ!!」(ごっ、御もっともです……)

助が欲しくて、アレクシスとアリシラ様に視線を向けたが、何一つ言葉をかけてくれる気配は無かった……。
こういう時は『自分で考えろ!』と言う事なのだろう。
けれど、怖いものは怖い。ロナルドに対して話すのは、未だに馴れないし怖いのだ。
彼からは言葉や心に言い表せられない程の深い傷を刻みつけられた。
それがトラウマとなっていて、いつも意を決しても、結局それが表情や行動に現れてしまう……。
断ち切れるものならば私だって断ち切りたいのに、恐怖が更にその上を行き断ち切れないのだ。

(このままでは駄目だ!)

私は大きく深呼吸をすると目を閉じて、真剣に頭の中で考えた。

出来るか分らないけれど一先ずロナルドの事を頭の中で考える事を止めてみるように心がけてみようと思う。
そして冷静になるのだ。冷静に……。

(考える事はテロネーゼさんの事だけ。ロナルドは関係ない!)

私は心の中で何度も唱えるように言葉を繰り返した。


よし!
おそらく指輪はテロネーゼさんから無理矢理引き抜こうとしても拒否されるだろう事は間違いない。
ならば強行突破するしかない!

私は目を見開くと、ただ一点、指輪に視線を集中させた。
腹はくくった。もう、迷わない!
自らに何度も言い聞かせ、私は踵を正すとハッキリとした口調でこう告げた。

「テロネーゼさんを説得してください。私が引き抜いてみますから!」

「おっ、おう!」

「さあ、テロネーゼ。とにかく指輪を何とかして貰おう。このままじゃ埒が明かない」

「……嫌よ! その娘にッ……うッ……借りを作るのだけは……絶対にぃ……イヤッ!!」

「テロネーゼッ!!」

どれだけ私はテロネーゼ嬢に嫌われているのか?
私も勿論彼女の事を好ましくは思ってはいないけれど、ここまで人に嫌われた事は今だかつてない、初めての経験だった。

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NoTitle 

おはようございます(^ω^)

さすがマリーさん、「おぉ」と期待膨らませて「はあ!?」ですね(笑)
ちょっとロナルドさんの気持ちが理解出来る気がしましたww
らしいといえばらしいけど、マリーさんのおろおろぶりは、ロナルドさんにとってはもうイライラにしかならないですね~。胸中を朗読して聞かされているわけでもなし、表情に「怖いよぅ」と出ていれば尚更で。

視点を変えて物語やキャラ達の心情や状況が語られると、ほんと面白いですw さすが涼音さん( ^∀^)

認めているけど認めるわけには行かない女の意地全開のテロネーゼさんが、どう折れてマリーさんに助けを乞うことになるか楽しみです♪

ユズキ様 

今日は^^

はい。マリーは機転がきくタイプではないですし、やはり用意周到に何でも出来るタイプではないので、どうしてもこうなってしまいます(笑)
もう本当にマリーのこの状況にロナルドはイライラしどうしです。
人によってはもっと話を間欠的に進めて欲しいみたいな方も居る様なのですが、これは賛否両論のようだし、私は特に心情的なものはきちんと書きたい方なので、そう言って頂けると嬉しいです^^(あっちでちょっと言われた^^;)

テロネーゼの女の意地が何処まで続くのか?(笑)
とりあえず、次回はアレク視点です。
引き続きまた違う角度で楽しんで頂けると幸いです。

いつもコメント有り難うございます。

NoTitle 

更新、お疲れ様です。

一瞬、やっぱり駄目だこの子って思いました(笑)
悪役の方から突っ込まれるヒロインって珍しいと思います。
ちゃんとマリーが頑張ろうとしてるのはわかるからアレクもアリシラさんもやれやれと微笑ましい気持ちが混じってるんでしょうね。

とはいっても、ちゃんと自分を奮い立たせようとするマリーにまあいいかと思いました。こういうのは慣れていけばいいんですよね。

しかし、このクソ女、それほどマリーが嫌いなのか。
マリーが以前、彼女に嫌われるような行為をしてたなら話は別ですけど、アレク絡みで一方的に嫌われてるだけですもんね。

もういっそ指ごと斬ってしまえ、どうせ売国奴の一族以外は誰も反対しないから…な過激な思考も出てしまいます(笑)

そんな思惑とは別にマリーがどうやってこの女を説得するのか、
まあ『物理的に』説得してもいんですがね♪

NoTitle 

呼吸。
意外に大切ですよね。
特に小説の間ということを考えると。
私も呼吸を大切にします。人が生きているということですからね。

yama様 

今日は。

やっぱりマリーの性格から言っていきなりお任せあれ展開にはならないかな?的な感じでこうなりました。こんな短時間に急成長も不自然な話になりますし。
確かに悪役から突っ込まれるヒロインってないですね(爆)

はい。アレクとアリシラ様はマリーの成長を促す意味で見守っています。マリーには成長して貰わないといけないので。
やはり自ら考え行動した方がより短期間で成長が望めると思うし。

テロネーゼは完全に己の身勝手な理由からマリーを嫌っています。
>もういっそ指ごと斬ってしまえ、発言。
一瞬私の頭の中にもそれは過りましたが、流石にそれは出来ないかな的な。(そうなるならここでマリーが頑張る意味なくなるし……)
でも、それなりの状況には陥るかも?(笑)
説得はどうなるでしょうね?そもそも説得できるのか?!
次回もお楽しみ頂ければ幸いです。

いつもコメント有り難うございます。

LandM様 

今日は。

呼吸、意外にホント大切だと私も感じてます。
そうですよね。物語の中で彼らは生きているのですから。
私もいつもその事を前提に置いて書いています。
それを感じ取って頂けるのは本当に嬉しいです^^

いつもコメント有り難うございます。
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