ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《107.真 実6》(アレク視点)

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あの男に怒号を浴びせられ、怯えきった眼差しで、こちらに目を向けられた時には、思わず助け船を出してやりたくもあったが、今ここで手を貸せば、それは決してマリーの為にはならない。今までマリーが頑張って来ていた事が全て水の泡となってしまう。
とてそんな事はさせられないから、心を鬼にして、涼やかに動向を見守る事に徹し続けた。

自分で何とかしなければならないと自覚したのか、最初は心許なげな表情ではあったが、俯きながらも懸命に何かを考えようとしているようだった。
ここで自ら答えを見い出すことの重要性を彼女は分かってくれているだろうか?
少しの不安とほのかな期待を抱きながら動向を見守っていると、やがて何かを覚悟したのか彼女の表情が急に引き締まったものとなった。
如何やら腹はくくったようだ。
そして彼女の導き出した答えに安堵しながらも、あの男に指示を出す凛とした美しい姿に、思わず見惚れた。……と共に不安を覚えた。

(よもやあの男も私と同じ感情を抱きは……)

マリーの話では、あの男は双子の兄の婚約者に思いを寄せていると言う事だった。
その話が本当であれば今現在マリーに恋愛感情は無いのかもしれないが、それも直接本人から聞いた話では無い。何よりマリーがそう簡単に人の心を探る事が得意とも思えない。
私自身も今までどれだけその事に悩まされて来た事か……。
どちらにせよ最愛の妹を救い出したとなれば、あの男も今は唯の利用価値のある家の娘としての存在でしかないように思われているマリーの事を、それだけではなく違う感情を抱きはじめないとも限らない。感謝から好意が芽生え恋愛じみた感情を抱いてしまうのは良くある話だ。
そうなれば今仮契約的状況にある二人の婚約申請話だけでも厄介と思っているのに、その上恋愛感情までも覆いかぶさればそれこそ如何なってしまうのか?
事件性を追求し、失脚させるだけでは済まなくなってしまうかもしれない。
二人が近距離であの女を挟んで格闘している姿を垣間見て、自分はここで叔母上と共にただ観衆に浸っていても良いものだろうかと考え始めた。
二人の間に、ここは何としても距離を作っておくべきでは無いのか?
あの男に、人に感謝すると言う感覚がもし存在するのならば、それは絶対にマリエッタ一人に向けられるものであってはならないのだ!

「嫌だって……言っているのッ……、ぅアアッ!!」

「ほら見ろ! もう強がるのは止めろよッ」

聞こえて来るのは腕を拘束しようとする兄ロナルドを、ふらつきながらも払い除けようと抵抗する強情な女の姿。
痛みで表情を歪めるあの女の姿に、見上げた根性だとそれだけは認めてやっても良いと少しだけ思ったが、不意に目を向けたその先に映る光景に私は一瞬にして凍り付いてしまった。
暴れる女を何とか押さえつけようと、跳ね返されぐらつきそうになるロナルドの腕を支えようと、マリーが自らの身を挺してそれを助けようとしているのだッ

「もっとしっかり押さえて下さい! これでは指輪に触れることも出来ません!」

マリーは離れようとするあの女の肩肘を後ろから自らの脇で支え込むと、抵抗しようとする腕の可動域を狭くし、その動きを封じた。
その様はともすればあの女を介して二人が寄り添い、支え合っている様にも見えなくもなく……、心に更なるモヤモヤ感を生み出した。

いや、分かっている。状況的に、これが致し方ないと言う事位……。
だが、この胸の奥で沸々と湧き上がる感情を、私は最早如何やって沈めれば良いのか分らないッ。奥歯を強く噛みしめ己の感情を押し殺そうと必死で耐えた。
だが……、あの男の側にマリーがいて、肌が接触している状況に嫉妬で狂いそうになる。
こんな事だから叔母上からも『了見が狭い』等と言われてしまうのだ。きっと……。
ああ、本当に私はマリーの事となると抑えが利かない。
ある意味これはマリーの行動以上に厄介な感情だ。くそっ!

「コラッ! 頼むから、おとなしく……ッ、 イテッ こいつひっかきやがった!!」

「お願いですからテロネーゼさん。一度だけ、ねっ。駄目なら直ぐにやめますから」

私が嫉妬に苦しんでいる間にも、マリーは足蹴にされても必死にしがみ付き、真剣に事を成そうと取り組んでいる。

「キャッ!」

あっ、尻餅をついた!
だっ、大丈夫か!?

思わず身を乗り出した所を叔母上に制された。

「グラッセ侯爵!」

きっと叔母上が止めてくれなければ、このまま駆け寄り抱きしめていた……。

「貴方もまだまだ青いわね」

「ほっといてください。自分でもわかっていますから……」

耳元で溜息まじりに聞こえて来る叔母上の言葉に、呆れられているに違いないと悟った。だが、それは仕方が無いと思う。
私はそれ程に、マリエッタを愛しているのだッ。

尻に手を当てさすりながらまた立ち上がり、果敢にもあの女に挑もうとするマリエッタの姿。
あの健気なマリーの賢明さが、あの女に通じるのか? いや、通じなくては可笑しいだろう!?
如何かマリーの努力が無駄にならないようにと、願わずにはいられない……。

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~ Comment ~

NoTitle 

更新、お疲れ様です。


『何よりマリーがそう簡単に人の心を探る事が得意とも思えない』

まったくだ(笑)
恋人にもこういう面ではあんまり信用されてないなんて事実とはいえちょっと酷い。
とはいえ、アレクもマリーに関してだけは人のこと言えないじゃんと笑ってしまいます。

しかし、現在大の男と女が二人がかりで女と取っ組み合いをしているんですよね、しかも公の場で…。
アリシラさんも止めなくていいのかな?まあ二人のことを守ってくれてるだろうからなんとかしてくれるとは思うのですが…。

アレクも嫉妬するのもいいんですが、今大事なのはそこじゃないような(笑)

社交界でどういう珍事として広まるんだろうと変な期待をしていますが、マリーが頑張ってる中、アレクはどうやってこの場を収めるのかなと楽しみです。

NoTitle 

おはようございます(´∀`)

アレクさん過保護(笑)
涼やかな表の裏側は過保護でホントに青いですねw その心境のアレコレをマリーさんが聞いたら、それだけでマリーさんのほうが成長しちゃいそうな気がしましたw
でもこの心の葛藤、テロネーゼさん聞かなくてよかったね、と思ってしまいました。
アレクさんとマリーさんにとってはお邪魔虫でしかないテロネーゼさんだけど、アレクさんが好きで好きで暴走しちゃっているんだから、やっぱそこはね・・・女として本音もなにも聞きたくはナイと思ったり。

第三者視点から物語を読んだら、テロネーゼさんへの同情とかそこまで思いも至らないけど、こうして二人の視点で物語を読むと、脇役達の思いとかが、二人にどう向けられているのかがより実感できますね~。
腹をくくったマリーさん、なかなか行動的w ガンバレ!!

yama様 

今日は。

人は恋すると相愛にでもならないと中々臆病になって心が読めなかったり惑わされたりするものです。それを顧みず盲目的に突進してしまったりすることもありますが。
アレクもマリーとの恋に関しては他人事ではありませんね。確かに(笑)

アリシラ様は動向を見守っているという状況でしょうか。
不必要に手を出す事には反対ですが、必要とあれば口は出すしアレクが協力する事も容認すると思います。
アレクは悶々としながら見守りつつ、おそらくはその内ッ。おっとこれは次回のネタバレになるので内緒と言う事で。

次もアレク視点ですが、かなり話も進むので引き続き動向を見守りつつ楽しんで頂ければ幸いです。

いつもコメント有り難うございます。

ユズキ様 

今日は^^

アレク感情のままに走ったら大変な事になります。
実は滅茶苦茶過保護なので、公の場でなく二人っきりになったら、マリー頑張れって感じですかね(笑)
きっとここまで思われているとマリーはまだ感じていないと思うので、将来的にはアレクの想いがマリーを成長させる糧となり得るのではないかと思っています^^

ははっ、このアレクの心の葛藤をテロネーゼが聞いたら、もうはらわた煮えたぎりでしょうね^^;
テロネーゼ勿論聞きたくないでしょうね。聞けと言っても聞く耳持ず途中でマジ切れして突っ走るんじゃないかと・・・・^^;怖いです。。。

第三者視点から読んでると、確かにテロネーゼに同情する人はいないでしょうね。元々そう言うキャラだし。
視点変え、面倒な時もありますが、結構楽しかったりします。
やはり視点が変われば絡むキャラも変わって来るので、それでまた別の楽しみ方が出来ると言う点では利点と思ってます。

マリー頑張ってます♪
次のアレク視点で状況がかなり進展します。
アレクがどう動くのかも含めて引き続きお楽しみ頂ければ幸いです。

いつもコメント有り難うございます。

NoTitle 

ま、若くていいと思いますが。
そういう若さでも、蛮勇でも進もうとしているのは。
・・・と思いながら見ています。

LandM様 

今日は。

はい。ここは生温かい気持ちで読んで頂ければと思います(笑)
惚気てはいますが、やる気はありますので^^

いつもコメント有り難うございます。
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