ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《110.真 実9》

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ずっと状況を見守っていたアレクシスのまさかの行動に、私は息を飲んだ。
彼は妹を抱えて戸惑っていたロナルドの前に立つと、その腕から奪う様にテロネーゼ嬢を抱きしめた。

「お前、何をッ」

「ただ抱きしめているだけでは状況は何も変わらない。お前が出来ぬなら私がするまでだ!」

アレクシスに抱き寄せられるとは思ってもいなかったのか、テロネーゼ嬢は痛みで顔を歪めながらも驚きの表情でアレクシスを見上げ、じっと見つめている。
何を言葉にするでもなく……。

「貴女にとっては不本意かもしれないが、どれだけ足掻きこの指輪を欲した所で、指輪の主とならざる者には既に如何する事も出来ない実情なのだ。このまま手を拱いていれば間違いなく指輪は貴女を更なる苦痛に追い込む事になる。それは私にとっても本意ではないのだ」

「…………」

何の言葉も発せないまま、ただ無言で目を伏せるテロネーゼ嬢の姿。
彼女は一体何を思い、考えているのだろうか?

「貴女も知っていると思うが、本来この指輪が持つべき役割は神聖なるものだ。故に主を守りこそすれ、人を傷つけるべきものであってはならないと思っている。だから全てを予測できたとは言わないが、最悪の事態も考慮して、今回指輪紛失の話を聞いた時点で私はある対策を講じた。もうその指輪に囚われる必要は無いぞ」

(えっ?)

告げられた瞬間、私は息を飲んだ。
それって如何いう……?!

「実は先程、その指輪の聖なる申請を解除する書類にサインした」

「!!…………」

「故にその指輪は今、唯の“我が家に伝わる家宝の指輪”と言う意味合いしか持ち合わせてはいない。そのような指輪では貴女にとっても、最早無用なものとなるのではないか?」

(……と言う事は、あの指輪を持つ意味合いは既に消失してしまった……と言う事?!)

あの指輪を託されて思いを馳せた朝の事を思い出し、私は少なからず動揺していた。

「ずっと貴女がこの指輪に思いを馳せていた事も知っている。だからこちらもそれ相応の対処をさせて貰った。……貴女の想いに応えられず、すまない……」

「…………っ」

思いもよらなかった衝撃と、アレクシスの態度にテロネーゼ嬢も動揺を隠せないようだった。
アレクシスからの言葉は、テロネーゼ嬢にとってもかなり意外だったようで、投げかけられた優しい言葉に彼女は微かに唇を震わせるとアレクシスの背中に片腕を回し、その胸に顔を埋めて小さく頷いていた。

「うぅッ……」

泣いているのか痛みから漏れ出た声なのか、私には判断がつかなかった。

私自身、この衝撃的な内容には、まだ頭がついて行かない……。
けれど彼女の想いを考えると私自身あれ程傷つけられたにも関わらず、心の底からテロネーゼ嬢を憎む事が出来ない気がした。
もし、これが逆の立場だったら……。
彼女と同じ手段を取る事は無かったかもしれないが、もし、アレクシスが他の人に想いを寄せていたとしたら、もしかしたら私もその人に対し憎しみの心を抱いてしまっていたかもしれない……。
そう思うと彼女の行動は理解出来ないが、その想いは痛い程分かる気がした。


彼女が柔軟な態度を示してくれた事は本当に良かったと思う。
けれど、二人の様子を流石に和やかな気持ちでは見ることは出来なかった。
アレクシスがここまで協力してくれるとは思ってもいなかったから、彼の協力は勿論嬉しいものだったのだけれど……。

何処かその想いが、私の意識を散漫にさせていたのか?

「意識を集中させろ!」

アレクシスからの突然の厳しい声に、私は我に返った。

「はっ、はいッ」

そうだった。今は他の事に心を奪われて考え込むような余裕などないのだ。
身を引き締めなくては!

慌てて現状を確認しようとテロネーゼ嬢の指に目を向ければ、アレクシスが手を添えて彼女の腕を支えていた。
指輪は腫れあがった皮膚が食い込みながらも、指の付け根にしっかりと収められていた。
しかし、既に皮膚がめり込み指輪の金属部分が微かにしか確認出来ぬこの状況で、本当にこの私に指輪を外す事が可能なのだろうか?

私はおそるおそるアレクの瞳を覗き込んだ。

「大丈夫だ。私が側に居る」

彼の優しい眼差しと告げられた言葉は今の私にとって、とても心強いものだった。

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NoTitle 

ちょっとモノの価値を考えさせる内容ですね。

私自身、モノはモノという考え方で。
それに価値ははない、という考えであって、
大量消費社会の考えを受けている考えなんでしょうけど。

ファンタジーにしても昔にしても
モノには価値がある。
・・・という考え方が良いなと思いました。

モノの価値は人が決める。
もっと言えば個人が決める。
そういうのが小説から伝わってきました。

LandM様 

今日は。

モノに対する価値観は人それぞれだと私は思っているので。
モノの溢れる大量生産可能な今の時代と過去でも違いますし、今回の指輪のように家宝であると共に違った意味合いを持つモノならば尚更かなと思っています。
上手く伝わっているようで良かったです。

いつもコメント有り難うござせます。
それぞれにとっての唯一のモノ。それがこの指輪だと思っています。

いつもコメント有り難うございます。
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