ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《113.暴 露2》

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忘れ去られかけた出来事を蒸し返したりするものだから、それが講じて指輪の主が何故私なのかと言う疑問まで再浮上してしまい、私は更に頭を抱えた。
二人の間で如何いう話がついているのかすら分らない私には、こちらに話を振られた所で如何考えてもこれから的確な返答が出来るとも思えず、一体如如何すれば良いのかと問い正したくなって来た。
けれど少し二人を睨みつける事位が精一杯で、それ以外何も出来ずにいた。
私の向けた視線に気づいたアレクシスは苦笑いを漏らしていたが、アリシラ様は平然とした態度を崩さない。全くブレる様子も見せずに強かな態度で、全く姿勢を崩さない。
ああ、やっぱり如何足掻いてもアリシラ様には太刀打ちできない……。
こうやって何もせずに二人を見守っていれば、事は全て恙なく終わるのではないだろうかとさえ思えて来てしまう。
けれどそれでは自分が情けなさすぎる……。
流石に現在貴族社会の中枢に立たれているお人は違うと言う事を痛感した。

結局、私の嫌な予想は当たってしまい、話は徐々にと革新へと詰め寄られて行き、遂には言い逃れの出来ない所までやって来てしまった。
きっと、来る! 私が問い詰められる場面は直ぐにでもッ。
胸の鼓動を早くさせながら状況を見守っていると息が詰まりそうになる。
そして遂にその時が近づいて来た事を感じて、私は大きく身を構えた。

「まあ、ではあの指輪は本当にグラッセ侯爵自身が送られたものなの?」

「はい。母の遺言で。生前母はマニエール男爵令嬢を亡くした我が娘のように思い、とても可愛がっておりました。彼女が社交界にデビューした暁にはこの指輪を授けたいと兼ねてから思っていたようで」

「では、侯爵もそれに異存はないのですね」

「はい。元より私も彼女の事はずっと親しく思っておりましたし、マニエール男爵を通じ求婚の申し出もしたのですが……見事に振られてしまいまして……」

「!!」

まさか、アレクシスがそこまで正直に事を公にするとは思ってもいなかった。

「まあ! グラッセ侯爵を?!」

アレクシスの告白で、私は突然蔑むような不審めいた眼差しをご夫人等に向けられてしまう事となり、もうパニックに陥りそうだった。

「彼女を責めるのは止めて下さいよ。これは男爵の一存で決められた事の様ですから」

目に見えて私が怯えている事に気付いたアレクシスは、そう告げると柔らかな笑みを浮かべて私に向けた。
まるで心配するなと言っている様にも感じられ優しさは感じ取れるけれど、とても精神的にそう落ち着いていられる状況では無かった。
すると耳打ち際で囁かれ目を見開いた。

(真実をそのまま話せば我々が唯の悪者だ。けれど上手くやれば味方についてくれるかもしれない。特にこの夫人はとても凄い方なんだ。信頼していい。だからね、適当に私に話しを合わせて。いいね?)

急に告げられた言葉に、私は食い入るようにアレクシスを見つめ返した。
何か良く話は飲み込めないけれど、彼が私達の為に手を尽くそうとしている事だけは理解出来た。 

しかし、凄い方とは一体如何言う事なのだろうか?
おそらくアレクが告げているのは、こちらの老齢のご夫人の方だと思うのだけれど……。
アリシラ様に視線を向ければ小さく頷きながら満面な笑みを返された。
二人を信じてついて行く! 私にはそれしか無いと腹をくくった。

とは言え、私はアリシラ様やアレクの様に社交界の方々と密接に通じていないから、その時々の状況に応じた言葉などもきっと直ぐには出て来ない。
アレクからは話を合わせるようにと言われたから、とにかくあまり否定的にならないように慎重に言葉を選んで対応せねばと自らに言い聞かせた。

「それでマニエール男爵令嬢はこのグラッセ侯爵の何処が置きに召さなかったのかしら?」

(うッ、ついに来た!)

いきなり確信めいた言葉を叩きつけられ、思わず一歩その身を引いてしまった……。
これは返答如何によっては、とんでもなく状況が変わってしまうかもしれない質問だと思う。

(正解は何? アレクが求めている答えは何なのかしら?)

必死に考えてみたけれど、これが確実だと断言できるようなような言葉を思いつくことが出来ず、戸惑いは隠せない……。
不安になり思わずアレクシスを振り返ると、優しい笑みを零してゆっくりと頷かれた。
その状況は、まるで大丈夫だと告げられている様でもあり……、そう考えていると何だか急に心が落ち着いて来て何かが吹っ切れるのを感じた。
如何転んだ所で、結局はどうせ有る事ない事囁かれ叩かれるかもしれないのならば、アレクのように隠すべき所を踏まえて、事実を告げて叩かれた方がマシだ!
私はそう決意して、勇気を持って言葉を口にした。

「いえ、私はその様な事は何も……。父からはいきなりドワイヤル伯爵家との結婚が決まったと告げられただけで、クラッセ侯爵との話は、つい先日侯爵の口から初めてお聞きし、もっと早くにお伺いしたかったと思っておりました」

「では、侯爵がお嫌いな訳では無いのね?」

「勿論です」

「まあ!」

(……『まあ!』って何? 正解? 如何なの?!)

ああ、心臓に悪い……。脈打つ胸の鼓動が耳まで聞こえて来るような緊張感を味わいながら、私は次なる夫人の動向を見守っていた。すると……。

「そうだったのですか? では、私はあの指輪の申請を取り下げるべきではありませんでしたね。そうと知っていれば私は力ずくでも貴女を奪って逃げたのに!」

「!!」

アレクのあまりにも開放的すぎる発言に、思わず絶句してしまった。

「侯爵ったら大胆なお発言です事」

そう告げるなり口元を隠しながら微笑を浮かべる老齢のご夫人。
アレクの反応には驚かされたが如何やら夫人の反応は悪くない気がして、何とかホッと胸を撫ぜ下ろす事が出来た。
でも、今のアレクの発言は、真実をそのまま仰々しく告げているだけな気がしないでもない……。

「笑い事ではありませんよ。私は至って本気なのですからッ」

「あら、御免なさい。けれど何だか楽しくて。こう言うお二人の初々しい反応を見ていると、つい私も久し振りに昔の癖が出そうだわ」

「それは願ってもない事です。是非ご協力くださいポリゼベーテ伯爵夫人!」

ポリゼベーテ……伯爵夫人?
何処かで聞いた事のある名のような……。

私はその名を思い出そうと、必死で記憶の糸を手繰り始めた。

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~ Comment ~

NoTitle 

更新、お疲れ様です。

アレクとアリシラさんの行動に戸惑いながらも二人にまかせっきりじゃいられないと感じるマリー。
さらにアレクは脚色はありながらもほとんど事実のことを語った模様。

アレクは、作戦でもあるんでしょうけど、惚気てもいるんでしょうねえ。一部、すれ違っていたことを黒歴史にしたい所もあるでしょうに(笑)

マリーもマリーで今回はうまくいったかな?嘘はいってないですもんね。本当は彼女も惚気たいなら惚気たいでしょうに。

もしこれですでに二人が体も結ばれた後だと後で知ったら社交界はこの茶番をどう面白おかしくするんでしょうかね。何故かそこが気になってしまいます(笑)

ポリゼベーテ伯爵夫人…、今まで作中では登場してなかった名前の方ですが、これが二人をどうされるのかな?

yama様 

今日は。

はい、今までが今までだけに、この状況はかなり戸惑っているようですね。
マリーも今何をするべきが一生懸命考えながら行動しています。
ここに来てアレクが何故急に告白じみた態度をとっているのかは、おそらく次話位で推測できるのではないかと思っています。
ははっ^^、とても既にそう言う関係であることまでは流石に暴露はねぇ^^;
ポリゼベーテ伯爵夫人をアレクは動かすことが出来るのか、次回何処まで入るかは書いてみないと分かりませんが、乞うご期待です。

いつもコメント有り難うございます。

NoTitle 

視点が少しずれるのですが。
≫真実をそのまま話せば我々が唯の悪者だ。けれど上手くやれば味方についてくれるかもしれない。

という一節はまこと正しくて。
悪者とするのは結局のところ人ですからね。
人が人を悪者にする。
そういうのが見て取れる一節で感服しました。

LandM様 

今日は。

何か私が内に秘めたメッセージ的言葉をいつも上手く拾って下さり、本当に有り難いです。
こういうのって何か「見過ごされる事大だろうな」といつも思っているので。。。

結局の所、話し方、捉え方一つで人は良い者にも悪者にもなるのですから、ある意味言葉って本当に難しいですよね。
賛同頂き嬉しいです。

いつもコメント有り難うございます。
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