パウリンの娘

パウリンの娘《第12章5》

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ローレライは己の運命を呪いたい気持ちになっていた。
自分がどうしてこのような過酷な運命を背負わなければならなかったのか・・・・。
あんなに辛い思いをして、やっと自分の気持ちに気付けた今になってパウリンが今までにない反応を見せていた。
首からかけられた絹袋越しにあの時、ライサンドから傷つけられた時に、微かに光を放っていたのだ。
それに目を奪われ手に取ろうとライサンドが一瞬ひるんだ時にゼロが飛び込んできた。
その後光は直ぐに静まり、あれから時々光を放っている。
きっと何かが運命に向かって動き始めているに違いなかった。
袋を取り出し開けて覗いたらどうなるのか!?
そこに自分の婚約者が映し出されているのか!?
まさにあの時に光ったと言う事は、まさかライサンドが運命の相手と言う事ではないのだろうか!?
ローレライは怖くてパウリンに触れる事が出来なかった。

“トントン”と扉を叩く音がした。

「私だ」

ゼロの声にローレライは服の上から握っていたパウリンの絹袋をサッっと離した。
サビエルが直ぐに扉を開け、ゼロを労う。

「お帰りなさい」

そう声を掛けるとゼロは微かに微笑んでくれローレライは直ぐに駆け寄りたいと思ったけれど躊躇してしまった。
ゼロは自分が居ない間のローレライの様子を先ず聞き、その後で何やら今まで出かけていた事についてサビエルに話をしていた。

「では、私はこれからシザーレ様と合流致します」

「頼んだぞ」

「はい」

サビエルはこちらを向き一礼すると部屋を出て行った。

ゼロはじーっと見ていたローレライに気が付いていた。

「どうした!? もぅ要らないのか!?」

ゼロが腕をトントンと叩いてそう告げるとローレライはゼロの腕にしがみ付いた。

「遠慮するな。自然に大丈夫になるまで一緒に居られる時は傍に居てやる。無理しなくていい」

「ごめんなさい」

「謝るな」

「有難う」

そう言うとゼロはローレライの頭をクシャクシャっと撫ぜるとポンポンと軽く叩いた。 

ローレライは自然と笑みが零れた。
ああ、やっぱり変わらない。
ゼロはゼロだ。
そして、とても優しい。
ローレライは嬉しい気持ちと、このままでいてはいけない。運命と向き合わなければと言う良心の呵責との狭間で心が揺れ動いていた。
でも、今だけは、このままでいさせて欲しいと願っていた。

「何か俺・・・・邪魔!?」

ルシオンは絡まる二人の視線を目の前にして自分の居場所がここにはない事を察知していた。

「そんな事ないわ。お兄様もここに居て」

「ああ、その方が良い」

ゼロはローレライへの自分の気持ちに気付いてから出来るだけ二人きりになるのは止した方が良いと思っていた。
気付いてしまった想いは会う毎により深いものになって行くのが自分でも分かった。
だからルシオンが傍に居てくれる事で自分の気持ちにも自然と歯止めがかけられ好都合だと思っていた。
二人きりに等なってしまったら次に自分がどのような行動をとってしまうのかはっきり言って自信が無かった。
昨夜、ローレライが寝ているのを良い事に、自分は身勝手な欲望に勝てずについ行動を起こしてしまった。
それは、ある意味ではライサンドのした事と同類だ。
ただ違うのは相手を思いやれるかやれないかの違いと、己の欲望を何処まで押さえる事が出来るかと言う点だ。
間違っても相手の気持ちを考えずに自分にはとてもライサンドのやった様な真似までは出来ないし、複数の者に愛情や欲望を注げるほど器用な人間でも無い。
きっとローレライに出会えなければ、このような気持ちを抱く事も無かっただろう。
だからこそ自分の気持ちが揺るぎないものと自覚した時点で、本来は直ぐにでも告白するべきだと思っている。
何も無ければ今朝の時点で告白していたかもしれない。
だが、今のローレライの気持ちを考えると直ぐに想いを伝える事は自分のエゴではないかと思えてくる。
ライサンドがどのようにローレライを口説き言葉をかけたのか知る由もなく、自分も同じような言葉をもし告げてしまったらライサンドと重なり恐怖を募らせてしまうのではないかと言う懸念があった。
大切にしたいからこそ今は告げるべきではないと思っていた。
それにあのような怖い思いをした後では、誰であろうと受け入れることなど出来ないかもしれない。 
ローレライの気持ちがもう少し落ち着いて、せめて一人でも部屋に居られる様になったら・・・・。
自分は剣の師としてではなく、一人の男としてずっと共に傍に居たいと思っている事を告げようと思っていた。
嫌われていないのは確かだ。
ローレライが自分に感じてくれているのは師弟愛か、友愛か、愛情か。
どのような結果になろうと万全の時を待ち、後悔だけはしたくないと思った。

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~ Comment ~

NoTitle 

後悔しても仕方がない運命もあり、悩むこと自体は仕方ないのですけどね。ただ、サイが投げなれた以上は、途中で進路を変更するのはとてつもない労力を伴いますからね。これは人生にもいえることですが。小事の積み重ねが、大事に至る。今までの行動の結果が現状になるのですから。

LandM 様 

そうですね。サイが投げられた以上、どのようにあがいた所で結果は変わりません。
ゼロにとってかなり辛い選択でもありますが、こう言う人なので、間違っても外れた道を進むことはできません。
彼が最終的にどのような決断を下すのか、運命の導きがどのようなものなのか温かく見守って頂ければと思います。

いつも有り難うございます^^
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