ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《126.回 想2》(アレク視点)

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思い返してみれば、閣下と多くの関わりを持ち政務に携わっていたのは、出仕するようになってからどれ位の期間だっただろうか?
最初の頃は領地の管理も何もかも全て人任せで、ただ政務を疎かにしないようにと、そればかりを考えて閣下の指示の下動いていた。
当時は新しい環境に馴れる事に必死で、他の事に目が行かなかった……。そう捉えるのが正しいのかもしれない。
とにかく早く一人前になりたくて、言われるがままに賢明に政務に携わっていたように思う。
そして、ようやく慣れて来たと自分でも思っていた頃だった。叔母上からの茶会の誘いを受けたのは……。
そこで私は、生涯を通じて信頼し続けることが出来るであろう最大な友を得る事になるのだ。

サンドール公爵家の長子であるパウウェルとは、今までにも城内において多少の面識はあった。勿論挨拶を交わす程度のもだけだったのだが、その印象は決して悪いものでは無かった。
だから、まさか叔母上宅で正式に招かれた茶会の席で、あのような言葉を投げかけられる事になろうとは思いもしなかったのだ。

『あの前尚書閣下のご子息が出仕すると聞いていたから、どれだけ骨のある奴が来るのかと楽しみにしていたのだが、どうやら言い様に扱われているだけらしいじゃないか。共に新しい時代を築いていけると思って期待していたのに残念だったよ』

『……如何言う意味だ?』

唐突に突き付けられた言葉の意味が、その時の私には瞬時に理解出来なかった。

『国務尚書閣下の膝下で、通り一遍のことばかりやっていては己を成長させることは無理だと思わないか? 生ぬるい!……君には期待していたのに、実に残念だよ』

『ッ!!』

今と変わらず、パウウェルは最初から言いたい事をズケズケと容赦なく話す相手だった。 
その印象は最悪で……。けれどそれでいて決して間違った事を言っている訳では無い。
告げられて自分の甘さに気付いた私は戸惑い、言葉をなくしてしまった。
奴により気付かされた事実が衝撃すぎて――。

パウウェルは誰に対しても率直で、物事を湾曲して話をしたり、何かに包んで告げると言う事を先ずしない。だから奴にしてみれば、この時もそう悪意は無かったのだと思う。
だが、その言葉に私は思いの外考えさせられてしまったのだ。
奴の言う通り、私は当初尚書閣下の膝の下、懸命に政務に取り組んでいたつもりだった。
だが奴から告げられた事実はその時の私にとって、それまで培ってきた現実を覆すほどの衝撃を持っていた。
その頃の私はと言えば、与えられた事をそのまま通り一遍のやりかたでしか行っていなかったように思われる。

『決められた事を懸命に熟す事を悪いとは言わない。私も最初は何も分からず、父の膝下でそう言うものかと思いやって来た。けれど、それだけでは駄目なのだ。言われれば出来るさ。貴殿ではなく誰にでもな。だがその様な人材は掃いて捨てる程いるものだ。そのような者が本当の意味で陛下の覇業の助けにはならないと思わないか?』

投げかけられた言葉の数々は、冷静に考えてみればどれも最もな意見で、政務にもやっと馴れて来て、何とかやっていけそうだと思い始めていた私の自信にも似た感情を、見事に打ち砕いてくれた。
突き付けられた事実に、私は己の甘さを見透かされている様な感覚に陥り羞恥を覚えた。

(城に上がるのならば、何れは陛下の覇業のお手伝いの出来る人材になりたいと予てより思っていたのは自分ではなかったのか!?)

彼が言う様に今のままでは駄目なのだと言う事を今更ながらに気付かされ、己を心の中で叱咤した。

奴を見ていて、非の打ち所のない者だと感じた。
如何すれば彼の様になれるのか?
私も彼の様に厳格な父の下で共に政務に打ち込んで行けていれば或は……。何れ自らの手で気付く事も出来、導き出されていた答えだったのかもしれない。
けれど今の私に、その父は既に無く……、ならば自分を慕ってくれと言って下さった尚書閣下に向けても良いのではないかと言う漠然と考えてしまった事事態が、そもそもの間違いだったのだ。
親がいないと言う事は理由にはならない。誰かに頼ると言う浅はかな考えを捨て、最初から己が手で、自ら道を切り開く位の心構えが無ければならなかったのだ。
母の死を悼み、父の本当の想いに気付けぬまま、私は父に対しても酷い態度をとってきた。
父の内に秘められた想いを知ったのは、その死から暫く経ってからの事だった。
父の想いを知ってからは、自分も父の様に陛下に頼りにされる人材になりたいと思っていた。その筈だったのに……。何処で履き違えてしまったのか……。

出仕して間もなくは、頼りに出来る者と言えば閣下をおいて他にはなく、気は張っていたものの優しい言葉を投げかけられれば、如何するべきかと言う事さえあまり深く考えもせず、言われるがままに私は差し伸べられた閣下の手を言うがままに取ってしまったのだ。
別にだからと言って閣下を責める気にはなれない。閣下はきっと若くして相次いで両親を亡くした私を不憫に思い、手を差し伸べてくれたに違いないのだから……。
あの時私は少なくともそう思っていたに違いない。だが現実は、全ては自分の考えの甘さが齎した結果だったのだ。
閣下より与えられた内容について振り返っている時に、私は己の甘さが原因である事に気付いた。
ならば自分はこれから如何あるべきなのか?
自身の甘い殻を破る為には一体如何すれば良いのかを真剣に考えた。
与えられた事を忠実に熟すのではなく、自主的に何かが出来れば……。
自らが率先して動く事で何か見いだせないかと、国務省に名を置く全ての諸先輩等からの声を聞くつもりで、先ずは自主的に方々を走り回ってみた。
閣下からは『そんな事をして一体何になるのか?』と尋ねられもしたが、その時の私には何の返答も出来なかった。
ただ、今までと違った自分。通り一遍の事では無く、自分にしか出来ない何かを探りたくて……、成し遂げたいと言う思いが私をその様な行動に駆り立てていた。
とにかく動ける限り動き回った。
すると周囲の私へ対する反応が、目に見えて変わり始めたのだ。

『この案件について君ならば如何いう考えをもって対処をする?』

初めて閣下以外の者から意見を求められ、私はこれが自分の求めるべき……、あるべき姿なのだと思ったあの日の事を、今でも鮮明に覚えている。

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~ Comment ~

NoTitle 

成し遂げるためには言われたことをするだけではない。。。
しかし、言われたことだけやっている方が楽。
それでは滅んでしまう。。。
大変ですよね。為政者というのは。
人を導く人と言うのは。
重みがあります。

NoTitle 

更新、お疲れ様です。


仕事にしろまずは言われたことをすることは大事。
しかしそれだけでなく、自分で考えて行動することも必要。
かといって、余計なことをしてもいけない、
この調整を仲間とどう合わせるかが大事なんですよね。
アレクのような城に仕える者ならなおさらですね。

パウウェル氏も多分気付いたなと見直したんでしょうね。
盲信と信頼の違いを見つけた時、アレクが広い目で物事を見ることがもっとできればいいな。

LandM様 

今日は。

本当な何かを成し遂げようとするのは大変ですよね^^;
ともすれば人は楽な方にばかり導かれて行ってしまうものです。
最初は基本道理を頑張ってするのも良いと思います。
ですが、やはりある程度慣れて来ると+αが求められるものです。
特にこういう城で働いている者はより多くそれが求められていくものだと思います。
書く省庁によっても違いますが国務省などは特にこういう事が大切になってくる要の場所でもあると思うので、ホントに頑張って貰わないと国も傾きかけない。。。
大変ですが、アレクやパウウェルにはこれからも頑張って貰いたいですね^^

いつもコメント有り難うございます。

yama様 

今日は。

仰る通り、言われた事だけでなく自分で考えて行動で来てこそ先ず評価と言うものがついてくると私も思っています。
それに加えて余計な事をしちゃうとマイナスになっちゃうし・・・・。
特に城などでは「余計な事を!!」なんて言う輩は結構いるだろうし、自分がお伺いを立てたかったとか言うのもありそうなので、難しいですね。
でも、それを有無を言わせない状況に持ち込めれば見上げたもの。
「あの方がされるのなら仕方がない」
位の目で周囲から見られるようになるのが一番理想ですよね。
陛下はもとよりアレクは世代的には王太子殿下と年齢的にも近しいので、双方ともから頼りにされるように頑張って貰いたいですね^^

いつもコメント有り難うございます。
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