ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《127.回 想3》(アレク視点)

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同じ事をするにしても、与えられて動きながら問題が出れば対応し補うやり方と、最初から意識的にそれ以上の何かを自ら探りながら行動するのでは、能率が全く異なっていた。
結果が伴って来ると俄然政務へ対する意気込みも更に変わって行き、自然と……何処か今まで距離を置いていた諸先輩方との関係も違うものへと変化して行った。
本当の意味で政務にやりがいを率直に感じるようになったのは、きっとこの頃からだと思う。正に毎日が充実している。そんな感じだった。
すると自然と閣下との関わり方も、今までとは違う方向へと変わって行ったのだ。
次第に閣下とは必要最低限の接触しか気に掛けて取らなくなったのもこの頃からだ。
自らの意識を他に持って行く事で、甘えが出ないようにとあえて閣下との距離を置こうとしていたのかもしれない。
今にして思えば、この時もっと自らに強い気持ちがあれば冷静な目で閣下を見据え、もっと早くに閣下の不可解な行いに気付き、くい止める手段を見つけ出せたかもしれないのに、浅はかな行動だったと思う。

他国との大きな取引は基本陛下との内々的話し合いによって決められる事が通例だと聞いていた。にも拘らず、陛下へのお伺いを立てるでもなく、単独で諸外国との取引を進めて来られ、後に揉め事になる事もこの頃多岐にしてあったにもかかわらず、国務省内でそれを誰も先んじて閣下へ進言しようとしなかったのは、尚書へと就任した折に閣下が掲げられた訓示によるものが大きいと思われる。

『――この国の国務が潤滑に回るように、これからは私なりに国内外問わず精力的に力を注いで行こうと思っている』

閣下は自らの体制下ではそう有りたいと述べられたのだ。
それ故誰もが譲歩した。異を感じても、それが新しい尚書のやり方なのだと……。
結果、時折揉めながらも最終的には何時も陛下が了承の意を表して下さる事もあり、不穏な空気を漂わせながらも誰も閣下に逆らってまで事を追求しようとする者も居なかったのだ。
その結果、閣下の成す事に対し誰も口を挟むなと言う事が暗黙の了解の様になっており、最終的には諸外国との大きな取引においても我等が介入する事無く、殆どを閣下の独断に委ねてしまう結果となってしまったのだ。
振り返ってみれば、やはりそれこそが大きな落とし穴だったに違いない。
『今ならば……』と思わず考えてしまうが、これもやはりその時の私には、まだそこまで介入できる程の力量が備わっていなかったと言う事なのかもしれない。

国務省の誰もがきっと今回の話を聞けば後悔の念を抱かずにはいられないかもしれないが、それでも国家の安政を切に願う意思を前面に打ち出しながら熱弁されていたあの優しき閣下に対して『まさか……』と言う思いを抱く事だろう。
現実を直視した私でさえ、最初話を聞いた折には信じがたい思いでいたのだから、その先に秘められていた閣下の思惑を誰が知り得る事が出来ただろうか。
国務省の何人であれ、おそらく見つけ出す事等到底出来なかったと思う。
誰もが信頼していたのだから。あのフルデンベール国務尚書閣下を……。


閣下に対し多少の懸念を抱きながらも、それが閣下の求められた新体制下による国務省のあり方なのだと思えばこそ、自らを納得させながら新たに見出したやり方で各々が日々政務を熟すしかないのだと思っていたある日の事だった。
退所後に最近再開した剣の鍛錬の稽古中、偶然にもパウウェルと鉢合わせたのだ。

『へぇ、国務省の者が剣の鍛錬とは珍しいな』

『陛下の御側に仕えるのならば多少の腕は必用だろう? まあ、今の私では何時お傍に仕えられる事が出来るようになるのかは分らないが、腕があってマイナスになる事は無い。まあ元々筋が良い方ではないからこの身を挺しても守れるようになれるとは思っていないが、鍛錬さえすればそれでも時間稼ぎ位にはなれる実力を身に付けられるかもしれない』

『ほう……。本気なんだ』

『勿論。私はずっと今のままでいる気はないからね』

『その心がけ、気に入った!』

『えっ?』

何故だかこの時好印象を持たれたらしく、その後腕に覚えがあると言うパウウェルから時間が合う時は剣の鍛錬に付き合ってやると言われ、その事がきっかけとなり次第に我等の交流は深まって行く事となった。

そんなある日の事、いつもの鍛錬場に珍しく二人だけで居る時だった。突然叔母上の夫で内務尚書であるベアレーゼ侯爵が現れ声を掛けられたのだ。

『若いのに感心だね。職務の後に良く二人して剣の鍛錬に勤しんでいるそうではないか。最近の若い者でそこまでする者は中々居ないし、各々の評判も最近は良く耳にする。二人とも父上等に違わぬ忠誠心の熱い若者のようだね感心させられるよ』

『……叔父上?』

『……有難うございます……』

訳が分からぬまま、とりあうず二人してまじまじと叔父上を見つめた後、深々と頭を下げた。

『実は先日、王太子殿下が抜き打ちで城内の夜間視察に訪れてね』

『えっ?』

『たまに居るのだよ。夜間良からぬことをしている輩がね』

『ああ、成る程……』

パウウェルと二人して何となく納得して頷いた。

『そこで鍛錬場に身を置く君等を目にしたそうだ。鍛錬をしながら中々に熱い話を聞いたと言う事で感心されていたよ』

パウウェルと二人して互いに顔を見合わせ、恐縮しまくった。

『そう固くなるな。私は殿下ではないのだから。そんな事では覇業の手伝いなどままならぬぞ』

薄笑みを浮かべながらそう告げられて、我等は一瞬呆然としてしまった。

『『はあ??』』

訳が分らない……。

『実は、これは内々に進められている話だから他言無用で願いたいのだが……、王太子殿下と次代の為にと招集された内務尚書兼任の推進改革委員と言うものがあってね。君等のような者に加わって貰いたいと殿下より直々に推薦を賜った。勿論最年少が君等と言う事になるのだが、我等と共に君等も推進改革委員の一人として新しい道を開く気はないかい?』

驚きすぎて息が詰まりそうになった……。
発起人は王太子殿下で、既に内々だが王陛下の宣下もあり正式に認められているものだと言う。
王陛下の……、そして時期陛下となられるお方のお役に内々でも直にお役に立てるのだ。こんなに嬉しい話は無い!

『やらせて下さい、叔父上!』

『勿論です、閣下!!』

我等は一も二も無く賛同し、叔父であるベアレーゼ侯爵の手を取った。

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NoTitle 

覇業か。。。結構難しですよね。
サポートするのもいりますし、時代がそれを求めるか・・・という時流もありますからね。後は何よりも人材でしょうね。最近は、使いませんが、企業が発達していくのも覇業ですからね。大切ですね。

LandM様 

今日は。

覇業を成すのは本当に大変そうですものね。
お手伝いするにしても、そこに信頼関係が無いと成り立たないですしね。人材選びは慎重に、慎重に。。。
こちらの場合失敗は許されないですからね。
きっと彼等ならば頑張ってくれると思いますが。

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