ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《130.友 人》(アレク視点)

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今でこそ誰もが認める剣の腕と術者としての名声を欲しいままにしている警務騎士団統帥長パウウェルだが、出会ってばかりの頃の彼はまだ父君の下で次官的事務仕事に就いていた。
だが幼少期よりその能力は既に認められており、7歳の時には特殊能力保有者として政務騎士団統帥本部付優待生として出入りを許され、剣や特殊能力を高める為の訓練をしていたと言う。
基本的内務を身に付けた後、本来の持ち場である政務騎士団へ転属した。
自らの能力を生かせる職務に就いたその後の活躍ぶりは目覚ましいもので、何と着任2か月足らずで4階級飛び越えていきなり政務騎士団統帥本部付護衛補佐官に任じられ、翌年にはその傍らで王太子殿下付の護衛騎士を兼任する事となった。
彼ほどの出世は異例中の異例で、正に飛ぶ鳥をも打ち落とす勢だと賛美する者も多かった。
だが、それと同時に冷ややかな目で見つめ、面白く思っていない輩がいた事も事実で、当然彼の出世を誰もが快く捉えていた訳では無い。
本部付の護衛補佐官に任じられた折には、公爵家の長子と言う事で優遇され過ぎているのではないか等と口を挟む者もいたらしい。
実はこれについては公にはする事は躊躇われたが、それなりの武勲をあげての出世だったようだ。

政務騎士団に席を置いて直ぐ、友好関係にある国で内戦が勃発。
協力要請を受け、パウウェルを含む4名の者に遠征指示が下りたそうだ。
遠征先での仕事は、首謀者を見つけ出し本部を押さえる事。上層部としては彼が上官の指示道理何処まで動けるのか、その実力を見極める意味もあっての遠征だったそうなのだが、なんと彼は単独で首謀者の拠点となった邸を探し出し、その日のうちに中枢部へ潜入すると、見事一夜にしてその首謀者とその側近等を捕らえ内戦を終結に導いたのだと言う。
予想だにしていなかったまさかの報告に、当時上層部でもかなりの混乱をきたした程だったそうだ。
結果が意味するものは、彼の持つ術者としての実力に加えて剣術の正確さは既に政務騎士団の黒騎士、青騎士隊両隊長クラスまで究められている事を示すもので、現段階でそれを公にすれば少なかれ隊に混乱を招く事も考えられた事から、当初一旦は秘密裏に処理をされる事になっていた筈だったのだが、その名声が諸外国より噂となり、結果入団2か月にして異例の4階級出世と言う形で偉業を称える事になったのだと言う。
政務騎士団は能力と実力の世界。その実力を目にしていた当時の黒騎士隊隊長がその実力を認めた事から、誰一人として異議を唱える者は隊から出なかったそうなのだが、外部からの風当たりは当時かなり強かったようだった。
心配する私にいつもパウウェルはこう言っていた。

『他人事にこのような戯言を叩く暇人は、所詮その程度の人間だ。気にする必要を私は全く感じない』

既に何処か悟りきっていて、私は当時感嘆を禁じ得なかった。
自分と3歳しか変わらぬ友人の言葉に、私も自らの身をもっと引き締めて行動しようと当時思ったものだ。

だが次第に、最初野次を飛ばしていた輩も、国内で未解決とされていた難事件を幾つも彼が解決していく中で、その実力を認めざるを得なくなり、結果それから1年も経たずに誰一人として彼を愚弄する声は聞こえなくなって行った。
次々と目の前で武勲を重ねて出世街道を突き進んで行く彼に、誰もがいつしか次の統帥本部総長は彼だと囁くようになっていた。
私も彼の影響を受け、負けじと内務的なものではあるが結果を残そうと必死に政務に励んだ。
自らを奮起させることに成功した私はその後、己の進むべき道を最短と言う形で歩んで行ける事となった。
彼の4階級に特進を始め、現在における最短での政務騎士団統帥本部長就任、そしてその後の数々の実績に比べればかなり劣るが、私も彼の後を追う様に、今年主席補佐官に就任した。
共に若い獅子として、陛下をより支える事になれる人材になって行こうと、今ではかつての夢物語としてでは無く、現実のものとして話をし、時には酒を酌み交わしている。



パウウェルとの話も終わり残された東屋の一角で、私は暫く混乱していた。
まさか、あの閣下からこのような仕打ちをうけるとは思ってもみなかったからだ。
最初は呆然と佇み、己の不甲斐なさに落ち込みもしたが、時間の経過と共に段々と……、今度は己の甘さに苛立ちを覚えられずにはいられなくなって来た。

「くそぅッ!」

「旦那様……」

推進改革委員の一人としての内なる活動をしていく中でも、何事においても先入観を持ち、事を探る事は大切だが、時としてそれは大きな落とし穴にもなり得るから気をつけるようにと教えられ、自らも注意して行動していたにもかかわらず、私はそれ以前の事ゆえに見過ごし、大きな罠に嵌められかけていたのだ。
マリエッタとの事が無ければ、ともすれば本当に罠に嵌っていたかもしれない……。

実は夜会終了後、これから一旦国務室へ戻るらなければならない。
隣国ステガルドの王太子殿下との昼食会に赴く旨を昼間閣下に報告した所、夜会終了後自室で待つから話を聞かせてほしいと言われたのだ。
パウウェルからの話を聞くまでは明日が休日の為、早くに事を把握しておきたいと思われているのだろうと漠然と考えていたが、実情はきっと異なる。
何か事がバレていないかを探りに来ているのた。
あの狸……、ここまで騙してくれて如何してくれようか!
今まで私の為と思って吐き出されていた言動の数々が、何処まで偽りのものであったのか?!
考えれば考える程悶々と溢れて来る苛立ちの中で、私はこれから如何やってあの古狸の鼻を明かしてやろうかと、真剣に考えていた。

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NoTitle 

黒幕登場ですね!

……あんな優しい顔でマリエッタとアレクのことを心配して世話を焼いてくれたアリシラ様が実は真の黒幕か、などといらん深読みをして勝手にどきどきしていたので、外れてくれてよかったです(^^;)

NoTitle 

確かに立場を維持するのも大切ですよね。
・・・というか大変なのか。

仕事に没頭するのはいいが、マリーに愛情を注ぐのが良いような。。。

ポール・ブリッツ様 

今日は。

はい、黒幕明かされましたね。
黒幕と言うからには流石にある程度主人公等と何らかの関わりがあり「まさか、この方が?」と思わせる設定にしていたつもりだったので、あながちその読みは全く外れてはいませんね。
流石にアリシラ様だったらなんでそんなまどろっこしい事しなきゃならないの?状態になるのでそれは考えられませんでしたが^^;(アリシラ様にしてしまったら収拾つけられる自信もありませんし(笑))

いつもコメント有り難うございます。

LandM様 

今日は。

覚悟を何かしら持って維持しようとするのは大変だと思うし、立場を維持するのもっと大変だと思います。

マリーへの愛情はですねぇ、これからちょっと微妙に関わりは出て来ます。
詳しい事はまだ言えませんが、次話からガンガンとりあえずマリーも登場するので^^(笑)

いつもコメント有り難うございます。
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