ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《135.強 請》(アレク視点)

 ←ずっと心に決めていた《134.決 断2》(アレク視点) →ずっと心に決めていた《136.対 面1》(アレク視点)
閣下が何を考えているのか、同行の者の名前を聞いて瞬時に理解出来た。
そちらがそう言うつもりでいるのならば、こちらが手をこまねていやる必要は微塵もない。
こちらの予定が覆る事は既にあり得ないと、決意を新たにした。

「アレクっ……」

「大丈夫だ。閣下も報告も聞かずに話を進めようとはしないだろう。とりあえずマリーは私が呼ぶまではここで待っていて。私は閣下を出迎えるから」

「でもッ」

「大丈夫だから。全て私に任せて」

何処か不安に満ちた眼差しを向けながらも、必死で耐えている様子が可愛くて、思わず抱き寄せ口づけた。
途端何やら茶器が大きな音を立てて割れる音がした。

「わわッ。もっ、申し訳ございませんッ」

サンデスの前でこう言う事は如何やらまだ不味いらしい。

「ではサンデス、マリーを頼むよ」

「はっ、はい。旦那様、お気をつけてッ」

私は苦笑いを浮かべつつ自室の扉を開いた。



国務室の一角には、いくつかの小部屋が設けられている。
廊下側から一番手前が応接室でその奥が他の補佐官3名と続いて主席補佐官である私の自室、一番奥が尚書閣下の自室となっているが、閣下と私の自室の間には直接行き来できる内扉が設けられている。
また応接室は廊下側からも直接入室出来るつくりになっており、国務室に足を踏み入れずとも外部からの手身近な面談が可能となっている。

閣下が直ぐ傍まで到着した様で、廊下側から何やら人を招くような話し声が聞こえてくる。
おそらく応接室に待機させておくつもりなのだろう。
だが、話が丸聞こえだ。どうやら今は連れの者の同行は内緒にしておきたいようだ。

「私がまだ到着していないとでも思っているのか? 間抜けだな」

思わず鼻で笑いたくなった。

閣下はと言えば、国務室の扉を開くなり、ランプ片手に額づく私の姿を見てかなり慌てた様子だった。

「ぅわッ! いゃ、ああ。もう来ていたのかね。本灯位つけておれば良かったのに……」

「いえ、予定外の御報告だけですのでこちらで十分かと。経費削減にもなりますし、これがあれば閣下のお部屋の灯りも十分供給出来ますので」

「そっ、そうか。そうだな、うん。では話を伺おうか」

「はい、ではこちらへ。暗いですのでお足もとにご注意ください」

「ああ」

私はランプで閣下の足元を照らしながら部屋へと導くと、閣下の部屋の入り口に置いてある光源に火を灯した。



何の事は無い。話の内容は閣下が聞いたからと言って今更如何なるものでもない。
それに率直に報告するべき内容を告げるのも戸惑われて、結局差し障りのない部分だけを掻い摘んで口にした。
そんな私の言葉に『そうか、そうかご苦労だった』と労いの言葉を述べると閣下は、もはや心ここに非ずと言った様子だった。
そして本来の目的であるだろう言葉を口にしたのだ。

「まだこんな時間か。今宵は祝いの日だ。一杯ぐらい付き合え」

「一杯、ですか?」

「あー、まあ話があるのだ」

「どの様なお話でしょうか?」

「まあ、良いじゃないか。直ぐに分かると言うものだ」

そう告げ微笑むと、机に置いてある呼び鈴を手にし二度ほど鳴らした。如何やらそれが合図になっているようだ。
もう私に逃げ場はないと分かっているので、やはりここに抱え込む作戦らしい。
まあ、こうなる事は分かっていたが、閣下の何処か落ち着かない様子に、思わず苦笑いが漏れそうになるのを必死で我慢した。
しかし、その内本当に痺れを切らせたのか待っていられなくなった様子で、自身も扉の傍まで近づくと身を乗り出し始めた。

(まるで馬鹿丸出しだな……)

状況が分かってしまえばこちらとしては余裕だ。

「ご報告だけと思っておりましたので、私も家の者に一言連絡して参ります」

「ああ、そうだな」

立ち上がり、後ろを振り向き無言のまま隣にある自室へ続く扉の取っ手に手を掛け開け放ち急いで閉じた所で、ついに笑いを押さえ切れなくなり思わず噴き出した。

「だっ、旦那様?」

「アレク?」

「フッ、ああ悪い。少し閣下が滑稽でね。思わず笑いを堪えるのが大変な状況だったんだ」

「はあ……」

「??」

納得できたのか出来なかったのか、そんな事はどうでも良い。
とにかく不思議そうに首を傾げてこちらを見上げるマリーの表情が可愛すぎて、思わず抱き寄せた。

「あっ、アレクッ」

「お待たせ。どうやら君の出番のようだ」

こちらを向かせ額に軽く口づけると、私はマリーの手を取り、再び閣下の自室へ続く扉の取っ手を握った。

押して頂けると励みになります^^

にほんブログ村
にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村


総もくじ  3kaku_s_L.png パウリンの娘
総もくじ  3kaku_s_L.png 記憶の彼方とその果てに
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ&感謝
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【ずっと心に決めていた《134.決 断2》(アレク視点)】へ
  • 【ずっと心に決めていた《136.対 面1》(アレク視点)】へ

~ Comment ~

NoTitle 

そういえば、西洋でお酒を飲むとなると舞踏会みたいなのを想像しますね。何事も盛大にパーティー形式でしよう。。。みたいな感覚がありますけどね。その辺は日本とまた違いますよね。
酒に誘う意味合いも違うのかな?

LandM様 

今晩は。

こちらイメージは中世のヨーロッパに近いのでそんな感じですね。
日本式とはまた違いますね。

この場合酒に誘った意味合いとしては、この後もアレクシスをこの場に留めておくための手段の一つとして要いてます。
話があるから1杯飲もう的な誘いですが、バレてますね(笑)

いつもコメント有り難うございます。
結局バレバレですが^^;
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【ずっと心に決めていた《134.決 断2》(アレク視点)】へ
  • 【ずっと心に決めていた《136.対 面1》(アレク視点)】へ