ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《136.対 面1》(アレク視点)

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「失礼致します」

一言声を掛け開け放った扉の奥には、数か月前閣下から頼まれ、しぶしぶ茶会に出向いた先のボフテンヌ伯爵とその令嬢の姿があった。
私の姿を見るなり満面な笑顔を向ける伯爵と令嬢。

「これは、これはグラッセ侯爵、ご無沙汰致しております。先日は我が娘の為にわざわざ足をお運び頂き、有難うございました」

「お久し振りです、アレクシス様! 私、次は何時お会い出来るかと、本当に楽しみにしていましたのよ。今日この機会はきっと神様の思し召しですわ。それに今日も何て凛々しくて素敵でいらっしゃるのかしら」

「……別に……」

(何なのだ?! こいつ等はッ)

ここで社交辞令的に真摯な対応をする必要は既に感じられない。
この場では最初が肝心だと判断した私は、あからさまに不機嫌そうに振る舞ってみたのだが如何やらそれは通じなかったらしい……。

「『別に』ですって。何て謙虚なお方なのかしら。ねぇ、お父様」

「そうだな。侯爵と言う高位に有りながら最近の若者に有りがちなおごりすら微塵も感じられない。これも侯爵殿のお人柄の成せる業と言う事か。実にすばらしい」

「ふふっ、そうよね」

「…………」

既に開いた口が塞がらない。何故こう言う展開になるのか全く理解に苦しむッ。
嫌悪感を抱き、思いの限り冷めた表情をつくり、ほぼ棒読みに近い口調で言葉を返してもこの反応。全く呆れるばかりだ。
おまけに飛び出した言葉は何処か人に媚びるような物言いで、それも私が最も嫌悪感を抱く部類に属するものだった。
鬱陶しいのも甚だしい!
閣下はと言えば、私の不機嫌極まりない状況に気付いたのか、こちらの表情を見るなり慌てた様に間に入り言葉を繕おうとしていた。

「いやぁ、実はこれはだな、先程これからそなたに会うと言う話しをしたら、先日の茶会の礼を是非言いたいと申してだな……」

茶会の席には閣下の顔を立てる意味で1度だけは顔を出すと約束したが、それ以降は再三に渡る依頼を頂いても『どの令嬢とも会うつもりはない』と先日も閣下を介し返答したばかりだった。

「礼は無用です。単に社交辞令的にお会いしただけの事」

「そんなっ……。でっ、ですが社交辞令もまた出会いの一つですわ」

伯爵の方は知っていたのか至って冷静だったが、令嬢の方は少し驚いた様子を覗かせていたが、中々如何して直ぐにはへこたれないタイプの様だ。

「いやぁ、そうだったかもしれんが……、だが、出会いと言うものは如何言うものも大切にした方が良いぞ。それにその年になって婚約者もまだ定まっていないと言うのはやはり社交的にも問題だ。そなたは既に爵位を賜って何年になる? 先に男爵家を継いだマキュベリ男爵などは拝爵後直ぐに縁談も纏まり21歳の誕生に挙式の運びと聞くぞ。一般的にはそう言うものなのだ。まあ、そなたのような名のある侯爵家ともなればそう気安く花嫁も決められぬのかもしれぬが、悪い事は言わぬ。そろそろ己が身の丈に合った者に目を向けてみては如何か? 色々な噂も、最近は耳にするが……、私はそなたが心配なのだ」

如何やらマリーとの事は既に噂として耳に入っている様だ。いや、ロナルドから聞き、既にずっと以前から知っていたのかもしれない。

「それはいけませんなぁ、侯爵」

「そうですわ侯爵様。私でお役に立てることがございましたら何なりと仰って下さいませ。私、誠心誠意想いを込めて尽くさせて頂きますわ」

だが、それこそいい迷惑だ!

「黙れ!」

「「「えっ!?」」」

私からそのような声が発せられると思っていなかったのか?
三人とも少々呆気に取られている様だった。

「再三に渡りその様な気遣いは必要ないと、閣下には既に申し上げている! それにボフテンヌ伯爵、貴方にもこの事を聞いていないとは言わせないッ。これは私自身が決める事だ。噂話結構。その通りです!」

後ろに手にしていたマリーの手を強く握り締め力と思いを込める。本当の戦いはこれからだ。
ゆっくりと手を離し、立ち位置を少しずらすと私はマリエッタの全身を皆の前に初めて曝した。

「閣下には今まで色々とご心配をおかけ致しましたがこれからは心配無用です。ご紹介いたします。私の唯一無二の最愛の人、マリエッタ・マニエールです」


「!!……何、だと……」

「そんなッ、お父様っ」

「スザンヌ、落ちつきなさい」

「お初にお目にかかります。マリエッタ・マニエールと申します」

「何を考えておるのだ! 分かっているのか?! この者は既に他の者との婚約が決まっているのだぞ!」

「おや、既にそこまで御存知でしたか? 噂ではそこまで話は漏れていなかったと思うのですが?」

「いや、それは……」

次に閣下がどの様な苦し紛れな言葉を吐き出すのか、私は微笑を浮かべて冷ややかな眼差しで閣下を見据えた。

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~ Comment ~

NoTitle 

社交辞令と茶番と建て前は大切だと思いますけどね。
う~~ん、アレクの悪い癖なのか。
あるいは、若気の至りなのか。。。
社交界で損をしている性格ですなあ。
(゜_゜>)

NoTitle 

更新、お疲れ様です。


アレク、面倒そうですし最早取り繕う必要もないせいか、対応がすごいいい加減(笑)
こういうのは社交界では不利ですが、今はわかっててやってるようですね。

しかし相手の方もまさかマリーと仲直りしているとは思ってなかった模様、あの売国奴と父とこの男は裏で結託してたって態度でしめしてますようねえ。

一回信頼してた分、それが最初から利用されていたとわかってからのアレクはもう閣下を敬う気持ちすらないんでしょうね。
信頼ってよほどのことがなければこんな簡単に消えてしまうものですから、マリーとアレクの仲直りは幸運だったということで大切にしてほしいですね。

LandM様 

今晩は。

実はアレク、普段はかなりきちんと社交辞令をこなしている人です。煙たいと思っていても罪があからさまになっていない人には一応礼儀は弁えて行動してます。
閣下に対しても今まではそうだったんですが、今回、人を騙そうとするような状況を示唆し、今は容赦しないと言った感じです。なのでかなり正義感は強いです。
特に今回は敢てやっている色が強いですし。かまかけてるし(笑)

いつもコメント有り難うございます。

yama様 

今晩は。

>こういうのは社交界では不利ですが、今はわかっててやってるようですね。
はい、今回全て分かってやってますので、かなりいい加減です(笑)

>しかし相手の方もまさかマリーと仲直りしているとは思ってなかった模様、あの売国奴と父とこの男は裏で結託してたって態度でしめしてますようねえ。
裏で結託している人もいれば、知らずに踊らされている人もいたり、こういうのはどのみち悲惨ですね^^;

やはりアレクからしてみれば裏切られた感が強いので、白状させようとすればかなり強気です。

>マリーとアレクの仲直りは幸運だったということで大切にしてほしいですね。
そうですね。もうかなりお互い固まってるのでこうなったら是非後は愛の力で乗り切って貰いたいですね^^

いつもコメント有り難うございます。
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