ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《140.対 面5》(アレク視点)

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年長者で社交性の何たるかを示す立場にありながら、諭す事も出来ずに自身等の利己的主義を貫いている奴らの行いは、我儘娘と同等にも値するのではないかと、半ば冷めた目で見つめていれば、それを心配したのか隣から、何処か不安そうな声が発せられた。

「アレクシス……、このままでは不味いのでは……」

私等をそっちのけで騒ぎたてている姿に、このまま放置にも出来ないかと深いため息を一つつくと、大きく息を吸い込み言葉を吐き出した。

「一・言・だ・け、申し上げておきます!!」

突如間を割って入って来た声に、三人は何事かと驚いたように一瞬ピタリと静まると、揃ってこちらを見上げた。

「「「…………?!」」」

如何にも不機嫌そうな令嬢を他所に、二人の紳士はとても気まずそうな表情だ。

「今ここで話すべき目的の趣旨をお忘れではないですか? 貴女方が騒ぎ立てた所で問題は何も解決いたしません。スザンヌ嬢、先程から黙って伺っていると、爵位が如何のと言うお話が飛び交っておいでてしたが、私は爵位をもって優劣を決める事を良しと致しません」

「そんなの可笑しいわ。通常グラッセ家程の名家であれば最低でも伯爵家以上の家柄との縁でなければつり合いが取れないと思うわ」

「つり合い? 何の為のものです? 誰に対しての基準ですか!?」

「それは、世間一般的に対してのッ」

「世間一般的? まさか社交界の何たるかもおぼつかない貴女から、それを諭されるとは思いませんでした」

「まあ! 諭されるですって。聞いた? お父様。私が侯爵様にお教えしたのよ。私って結構凄いのね!」
「…………」

(軽い嫌味の一つも通じないのか……。これはもう如何しようもないな……)

何も分かっていない令嬢を傷つけるのは不本意だった為、遠回しな物言いを心していたのだが、最早それも時間の無駄だと見切りをつけた。

「どうやら貴女とは、やはり真面な話が出来ない様だ」

「えっ?」

「世間的にと仰るのならば、せめて貴女自身が淑女教育を終えられていてしかるべきだ! 本来貴族の令嬢として終了している年齢である最低限の教育過程を、終えるべき努力もしていない貴女につり合い云々を問われるいわれは無い!」

「出来ないのは私のせいではないわ。努力はしているもの!」

「努力をしている? そうですか。ですが、通常結果が伴わないものは社交界では認められません。私の……、いえ、私に限らず社交界に身を置く者との婚姻を今後も望むおつもりならば、せめて口になさるのは淑女教育過程が終わられてからになさった方が良い。通常通じる話も真面に伝わらないのでは話にならない。声をかける全ての者に呆れられますよ」

「……侯爵様は何を仰っているの? そんなことはないのに……。ねぇ、お父様。だって私には声を掛けて下さる殿方は沢山いらっしゃるのに」

「そっ、そうだなスザンヌ。そうなのだが……」

言葉を詰まらせそう告げる、ボフテンヌ伯爵の目線が何処となく泳いでいる……。
ああ、これは令嬢を喜ばせる為にボフテンヌ伯が金である種の殿方を雇っているに違いないと言う事は、直ぐに察しがついた。
だが、ボフテンヌ伯爵家の財政はかなり厳しいものではなかったのか?
こう言う金で動く輩を雇うには、個々にそれなりの謝礼を手渡さなければならないと聞いた事がある。確か謝礼は婚儀における祝儀的金額が相場と記憶しているから一人二人では有り得ないだろうし、それなりの人数を雇うとなればかなり高額な金が動く事になる事が推測される。
マリエッタの実家であるマニエール家同様、あの手のあまり金にならない鉱山を領地に持つ貴族の家の財政は、何処も似たり寄ったりの状況でかなり苦しいものだとあの時パウウェルより聞いている。
大規模な夜会ともなれば雇う人数も半端なく多くなる筈だ。少なく見積もっても10人雇えばかなりの金額となる。と言う事はやはり、これは何らかの金絡みである事が容易に推察できた。

しかし娘の人気を高める為にと、自らも金に困っていると言うのに娘の周囲に侍らせる子息をこれ程までに雇いたいものなのか?
幾ら金をかけ注目を集めた所で、淑女教育過程すら終えていないこのような無作法な令嬢を、本気で誰かが……、それも高位の爵位を持つ家の子息が相手にするとでも思っているのだろうか? それこそ通常有り得ないッ!
馬鹿だな……。それさえ本気で気付いていないのだとすれば、親もかなり救い様が無い。
まあ、私がこの者を貰い受ける訳では無いのだし知ったからと言って何も変わる訳では無いのだが、そろそろこの茶番に付き合うのは御免こうむりたいと本気で思った。
流石にもう付き合いきれない。

「まあ良い。貴女には貴女の言い分があるだろうが、私にも私の言い分はある。私が自らの周囲に置く者や伴侶になる者に求めるものは、貴女が言う社会的地位でも優劣でも爵位云々でも無い。その者の人格によるものが大きい。同じ価値観を持ち、互いの事を思いやれる心を持った者、そう言う者でなくては私の横には並べない。私は彼女が……、このマリエッタが例え貴族の娘でなくとも、きっと伴侶にと望んだと思う」

「……そんなのおかしいわよ!」

「私の価値観を貴女に納得して頂く必要は無い! 私と、そしてそれは彼女が決める事だ!」

私はそう宣言すると、令嬢を強かな目で見つめた。

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~ Comment ~

NoTitle 

こんばんわ(^ω^)

スザンヌさんのオバカさんっぷりは、間違いなくパパ上の勘違い教育の賜物ですね(くすっ
そんなパパ上の背後もごにょごにょしたものがありそうだけど、溺愛主義もほどほどにしないと、こんな娘に育っちゃうのです☆というお手本に(笑)

家柄や財産じゃなく、その人自身を選ぶ、とキッパリ言ってもらえると、これほど嬉しいものはないですよね(^ω^)マリーさんの幸せ者☆
スザンヌさんにも、そう言ってくれる相手が出てきて、パパ上から自立出来るようにw

ユズキ様 

>スザンヌさんのオバカさんっぷりは、間違いなくパパ上の勘違い教育の賜物ですね(くすっ
はい。もう溺愛しすぎで何でも与えまくるとこういう娘に育ちます。ハッキリ言って異常ですね。過保護すぎッ(笑)

>マリーさんの幸せ者☆
本当に♪ まだ周囲に認めて貰えていない関係なので、公にここまで言って貰えると、女冥利につきますね♪

そもそもスザンヌは結婚できるのか? できても絶対晩婚になりそう(笑)この我儘娘を受け入れられるのは相手はかなり年上じゃないかと踏んでいます。

いつもコメント有り難うございます。

NoTitle 

釣り合いか。。。
確かに今のご時世でもあることですからね。
金持ちとか家柄とか。年齢や役職とか。
特に日本はそういうこと重きに置きますけど、他の国はどうなんでしょうね。
まあ、こういうことは世界共通か。
( 一一)

LandM様 

こういう事って気にする方は気にしますよね^^;
アレクの家も、これがお父様存命中だったら男爵家は気にしなくても婚姻出来ないかもしれない娘と言う点で凄い騒ぎになっていたかもしれませんが、勝手が出来るのもアレクが現当主であるが強いですね。
お父様亡くなってくれていて良かったです(笑)

いつもコメント有り難うございます。
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