ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《141.対 面6》(アレク視点)

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一瞬たじろぎの様子を見せた後、令嬢は縋るべき相手に助けを求めた。

「おっ、お父様ッ、黙ってないで何とか言ってよ!」

意を決し少し強気な態度をとって娘の言葉を一旦は否定してみたものの、結局は娘が言葉を発する度にオロオロしながら心配そうに見つめていたボフテンヌ伯爵は途中で何度か口を挟みかけ、それを何とか押さえ留まっていると言うような仕草を見せていた。
私の話を聞き、そこは娘と違い社交界に長く身を置いている身、流石にもう口を出すのもこれが限界だと悟っている様だった。
そしてついに意を決したように話しはじめた。

「出来る事ならば私とて何とかしてやりたい。だが……、やはりこれでは無理だよスザンヌ。まだ正式のものですらないのに、このような強いお心を持ち考えられているのだ。誰が口を挟んだ所で覆るものでは最早ないよ。陛下のお言葉でも無い限りグラッセ侯爵の御心がお前に向くとはとても思えない。やはり、諦めるべきだよ」

「ならばお父様が陛下に嘆願書をお書きしてよ! 私の為にッ」

「……無茶を言うな……」

「可愛い娘の為に、手紙も書いて下さらないなんて酷いわッ!」

「……すまない、だがそう言うものでは無いのだ……」

「嫌よ! 同じ貴族で、しかもこちらの方が爵位は上なのに、如何してこの女に負けなきゃならないのよ。有り得ないわ!!」

自業自得だとは思いつつも心配そう娘を見つめ、出来るものならば何とかしてやりたいが最早どうにもならないと諦め、何処か辛そうに少し俯きながらも娘から視線を逸らすボフテンヌ伯爵が、ほんの少しだが哀れに思えた。

再び大きく溜息をつくと、私は続く言葉を補足した。

「本音はそこですか……。良いですか、爵位をお持ちなのは貴女では無い、お父上だ。加えて言わせて貰えば、私は彼女との婚姻が正式なものとして認められないからといって、良く耳にする体裁を繕う為の形だけの仮面夫婦を持つつもりもない。よって陛下への嘆願は無用です!」

この言葉に、マリエッタは息を飲み、食い入るようにこちらを見つめていた。

「…………」

「何そんなに驚いている? やっとマリーを手元に置くことが出来た私が、そんなマリーの心を煩わせる事になるであろう行いをするとでも思っていたのか? 私はそんな不誠実な事を考える男ではないよ。傷つくなぁ」

「ちがうわッ、でも……」

マリーの唇にそっと人差し指を添え、続く言葉を遮った。

「貴族としての体裁なんてクソくらえだ! マリー以外は有り得ない。何があろうともね」

見つめ合い、吸いよせられるように二人の世界へ溶け込みそうになっていた正にその時、またしても無粋な声が間を割った。

「何を言っているの? 訳が分からないわ! 名のある侯爵家を潰すおつもりなの?」

「貴女にはきっと分らない。本気で人を好きになると言うのはそう言う事です。私は彼女を生涯ただ一人の人と思っている。故に法的に婚姻が認められずとも手放す気は無いし、家を潰す気も無い!」

(何があってもマリエッタとは離れない! いや、離れられないッ)

心に強く言葉を刻んで、私は手の内にあったマリエッタの手を、再び強く握りしめた。

「アレクっ……」

マリエッタの瞳は少し潤んでいるように見えた。

「……如何言う事?」

「あえて貴女に分かって頂く必要は無い!」

正式に婚姻が認められぬ夫婦の関係を彼女に解いてやる必要性は感じられない。

「……何を言っても最早無駄の様だな」

きっぱりと断言すると、溜息交じりに閣下が私に呟きの声を残した。

平民との間の正式に認められぬ夫婦間の子でも、非嫡出子とはなるが正式に届を出し庶子として爵位を継いでいる者は多くいる。高家ではあまり聞かないが過去に側妃の子が跡取りとなった例はある。正式婚でなくとも我らの間に子が産まれれば跡継ぎとして認められぬ訳がない。
勿論マリエッタを側妃にするつもりは無い。何としても正妃として認めさせるが。

「それに我等にとっては幸いな事に、まだ彼の者とマリエッタの婚約は正式には認められていない。ですから、ここは……。いや、これはやはり今ここで話すべきものではないな」

敢てもったいぶって話を切ってみた。閣下の反応を見て様子を探る為に……。

さあ、これに閣下が食いついて来るのか否か。
私は平然を装い、じっと閣下の次なる言葉を待った。

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~ Comment ~

NoTitle 

こんばんわ(^ω^)

もう、なりふりかまってられない、相手の気持ちよりもわたしの気持ちよ! というところだけは、テロネーゼさんと同じパターンをゆくスザンヌさんですね>< でも、スザンヌさんの場合は、アレクさんのことは好きなのは確かだけど、どこか、人として好きというよりは、憧れのお人形さん、みたいな見方をしているなという印象を受けますね~。

>爵位をお持ちなのは貴女では無い、お父上だ。

いや~本当にww アレクさんのこの一言ごもっともw
ここまできっぱりはっきりしっかりマリーさんへの愛を見せつけたんだから、閣下も下るしかないような(・ω・)
次回の閣下のお言葉を楽しみにしています☆

NoTitle 

更新、お疲れ様です。

いやあ、スザンヌさん、甘やかされすぎて往生際が悪すぎますねえ。
伯爵もどうしようもないことで可哀想ですがもとはといえば甘やかしすぎて育てたのが原因ですからね。
落ち着くところまでいったら自分自身も含めて再教育しなきゃいけませんね。

アレクも見せつける為にのろけているんでしょうが、マリーのためなら家がどうなってもいいとか言わずにマリーも家も全部守るつもりなら何もいうことはありませんね。マリーもマリーでこういう欲張りするための意思や努力を持ってほしいな。

さて、そろそろ閣下を誘導するための尋問ですか、二人以外も動いているでしょうからどうなるのかな。

ユズキ様 

今日は。

こういう我儘タイプの令嬢はどうしても自分本位になってしまいますね^^;

>憧れのお人形さん、みたいな見方をしているなという印象を受けますね~。
正解!(笑)
 テロネーゼとの根本的な違いは、内面では無く外見に一目ぼれして自分の妄想で理想像作って嵌めちゃってるから、人形と言っても着せ替え人形的な……好きなように着せ替え可能って言うか、思い道理になって当たり前と思っているので、思い道理に行かないのがオカシイと本気で思っています。救いようがありませんね^^;ギャーギャー騒いでますが、他に目移りしたらもういらないとか言いそう(笑)

今回は諦めざるを得ない状況を作りたかったので、そう感じて貰えたようで良かったです。

>次回の閣下のお言葉を楽しみにしています☆
がっ、がんばりますっ☆

いつもコメント有り難うございます。

yama様 

今日は。

>いやあ、スザンヌさん、甘やかされすぎて往生際が悪すぎますねえ。
もう救いが無いです。彼女は(苦笑)
 
>落ち着くところまでいったら自分自身も含めて再教育しなきゃいけませんね。
結局彼女後妻としても中々嫁ぎ先が見つからず、父も悔いて再教育をするんですが色々難しいみたいです^^;

>マリーもマリーでこういう欲張りするための意思や努力を持ってほしいな。
欲張りって、彼女には難しいかも~。

 閣下の誘導も、楽しんで頂けるように頑張ります♪

 いつもコメント有り難うございます。

NoTitle 

そういえば、読んでいて思い出したのですが。

織田信長の息子の織田信忠は
武田信玄の娘のまつと婚姻関係にあったのですが。
日本史よろしく、織田信長と武田信玄が戦争になったため婚約が破棄になったのですが。

織田信忠はまつを正室に迎えたかったので、
生涯正室を取らなかったと言われています。
(側室は設けていたのですが。)

戦争や政治で引き裂かれても、
残る愛はあるものですね。
がんばれ!!アレク!!

LandM様 

今日は。

あの時代で生涯正室を持たなかったって凄いですね。
私の書く小説としては側室も有り得ないので、何が何でもアレクには頑張って貰わないといけませんね(笑)

いつもコメント有り難うございます。
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