ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《142.対 面7》(アレク視点)

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一旦口にした考えを改めるような私の発言に、閣下は何処かもどかしげに言葉を吐き出した。

「何だ? 話しかけたものは最後まで話せ。気になるではないか」

「いえ、ですが成功すると言う保証は何処にもありませんし、そのような状況で他言するのはやはり浅はかだと……。正式な結果が出てからきちんとご報告致しますよ」

「そのような事は気にせずとも良い。私とそなたの仲ではないか。いいから申してみろ」

閣下とは、ここ数年政務以外での付き合いは殆ど無かったと思うが……。例の見合いまがいの茶会の席を除いては……。
だが、ここでその様な無粋な話を持ちだす気は毛頭ない。
閣下の本当の興味が何処にあるのかを探る為には、より探究心を駆り立てる必要があった。

「……ですが、ここでは些か……」

ボフテンヌ伯を連れて来た真の目的が他にあるのか否かを探る為、敢て退出を促す言葉を投げかけると共に伯へ視線を向けると、そっと目を伏せた。

「おお、そうだな。ボフテンヌ伯、そう言う事だ。言わずとも、お主なら分かってくれるな?」

目配せして、あちらはあちらで何やら秘密めいた意思の疎通を測っている様だが、この場で退出を促せる状況にあると言う事は、少なくとも我等との件に直接的な関わりは無いと言う事か。

「……はい、閣下。ですが、あのけッ」

「ああ、分かっておるから!」

何処か煙たそうに、ボフテンヌ伯の言葉を途中で遮るように手で軽く払いのけようとする仕草。
ああ、やはり本来の目的は、パウウェルが示唆した事に関わる可能性が大と言う所か。
しかし先程まで私との仲を取り持とうと、あんなに真剣な様子で利用しようとしていたはずなのに、閣下も閣下だ。何て身勝手な行動なのだと思わず呆れてしまう。
二人の関係性を見ていると伯に関しては早急に私が関わる重要性は感じない。
直ぐ近くの何処かには、身を隠した黒騎士も側に居る筈だ。何かあれば随時仲間と連絡を取り、伯のこれからの足取りも追う事だろう。

「では、また後程……。スザンヌ、失礼しよう」

「待ってってば、駄目よ! 侯爵様が私のソリュードの王子様なのにッ」

「はぁ?……今度は何を……」

またもや訳の分らぬ事を言い出したかと思い、顔を顰めていると、如何やら今度はマリエッタが何か知っている様子だった。

「あっ、もしかして……」

「マリー? 何か知っているのかい?」

「『伝説の国』のソリュード王子……。私も以前愛読していたから……」

「……愛読?……」

話しによれば神の国の王子ソリュードが主人公となる話で、彼は清き令嬢の夢の中に現れ、その後気に入った令嬢を見つけると、近くにある誰かに姿を変えて地上に現れ永遠となり得る伴侶を見い出すと、知られぬ様にと最初は冷たくあしらいながらも段々と意中の女性の注目を引き、最終的には射止めるのだと言う。
と言う事は何か? 私とマリーのこの関係を、よもや自分の気を引く為の手段の一つだと深読みし今もそう思っていると?

(それこそ有り得ないッ!)

心の中で大きく叫んだ。
私は生まれも育ちも間違いなくこの国で、誰からも体を乗っ取られた記憶も無ければ、そもそも物語が現実となり得ると言う思考も理解出来ない!
雑力し、全身の力が抜けると共に急に身体が重くなって行く。
またもやあまりにも現実離れした発言に、大きな溜息が零れると共に開いた口が塞がらない……。

「お前、またその様な夢物語を……」

「夢物語では無いわ! だって建国以来の名家の当主と貧乏男爵家の令嬢よ。こんな話本でしか絶対に有り得ないわよ!!」

何があってもこの令嬢は我等の仲を偽りだと信じたいようだ。
だが、分りたいとも思わなかったが、令嬢の我等に耳を貸そうとしない本当の理由がやっと分かった気がした。

「……全てにおいて、幼いと言う事か……」

目の前で父より取られた手を振り払い、頬を膨らませている姿は、まるで駄々を捏ねる子供そのものだ。

如何やら精神年齢と淑女教育過程の進行は比例するものらしい。
この状況を思えば今迄の発言の数々も、ある程度は仕方が無いかと感じて来るから不思議だった。
マリエッタと顔を見合わせると、思わず苦笑いを零れる。

「申し訳ございません。スザンヌッ、さあ!」

「イタッ、何するのよお父様! 酷いわ。お父様の嘘つきぃーッ。夢はきっと現実になると言って下さったのはお父様なのにッ。嫌いよ! お父様なんて、もう大っ嫌いッ!!」

目の前には身を低くして頭を下げながらもを、抵抗する娘の腕をしっかりと掴み固定するボフテンヌ伯爵の姿。
最後の悪あがきとばかりに令嬢も、腕や顔を引っかきながら応戦を試みた様だったが、ひ弱そうに見えても男の大人の力は侮れない。結局は力に任せて引き摺る様に扉の外へと連れられて行ってしまった。

無償の愛情を注ぎ、子を育てる事は大切だし、ある程度夢見がちな女の子も時としては可愛いかもしれないが、どちらもそれには限度があると思う。自分本位の愛情は時として娘を不幸にする原因に成り得るのだと言う事を、この時初めて教訓として学んだ。


3人だけになった部屋では、先程までの騒がしかった空気が一変し、かなり落ち着いたものとなっていた。

「あの令嬢がまさかあれ程だとはな……。奴へは、これが最後だな……」

どうやら閣下も毒気を抜かれたのか、ため息混じりに呟くような小さな声ではあったが、漏らした言葉が、何か重要とも思える言葉のようにも感じられる。
私がそう感じるのだ。きっと何処かで聞いているであろう黒騎士にもそう感じられた筈だ。

私はこの時、場を引っ掻き回した揚句、空気を一掃してくれたボフテンヌ伯爵令嬢に、ほんの少しだけだが礼を言いたい気分になった。

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~ Comment ~

NoTitle 

こんばんわ(^ω^)

人形どころか、絵本の中の王子様と重ね合わせるとか、もう憎めない愛すべきオバカさんですね(笑)

>誰からも体を乗っ取られた記憶も無ければ

アレクさんをここまで動揺させるとは、スザンヌ嬢侮れません!w 間に受けたわけではないでしょうけど、ついそう思ってしまうアレクさん、シュギョーが足りませぬぞw

ほんとにこういう幼い嫉妬を向けられると、さすがに怒る気にもなれないですねマリーさんも。アレクさんは自分の中の常識との戦いでぐるぐるしちゃってましたけど(笑)

スザンヌさんたちが退場して、いよいよ本題ですね(´∀`)

ユズキ様 

今日は^^/

>人形どころか、絵本の中の王子様と重ね合わせるとか、もう憎めない愛すべきオバカさんですね(笑)
良かったぁ~。スザンヌは思い込みの激しい所は一緒でも、テロネーゼより周囲に可愛いと言って貰える娘にしたかったので^^

アレクは、元々女の子の好きそうな恋愛小説とか夢物語は一切読まないし、信じている方ではないので、非現実的な事への対応は苦手です。(真面目すぎ~)

>ほんとにこういう幼い嫉妬を向けられると、さすがに怒る気にもなれないですねマリーさんも。
マリーも最初はモヤモヤしたものを抱えてましたが、「伝説の国」の話を聞いて、可愛いって思ってしまってます(笑)

いよいよ、やっと本題に入れます♪
まだ全然進んでないんですが、色々あるけど頑張って書きます!

いつもコメント有り難うございます。

NoTitle 

まあ、あれだ。願いは叶うというのはあると思いますが。
妥協も大切です。
結婚したい・・・と○○と結婚したいは違うように。
特定の誰かと結婚できることは絶対ではないですからね。
その辺も淑女の嗜みですぞ。。。
(・´з`・)

LandM様 

今日は。

>妥協も大切です。
御尤も。スザンヌはある意味純粋なのかもしれませんが、何もかも世の中自分の思い道理になるものではありません。
>結婚したい・・・と○○と結婚したいは違うように。
そうですね。結婚したいと言う事にしても広い視野で目を向ければ、きっとスザンヌさんでも何時かは可能となるかもしれませんが、特定の人限定となると中々事は上手く運ばないものです。
彼女はもう少し世間と言う物を知った方が良いように思います。

いつもコメント有り難うございます。
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