ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《144.同 行》(国務尚書視点)

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『この場から離れなければ!』
自分の中の何かがそう叫んでいた。

あの者は一体何を考えているのか?
何かを知っているのか?
それとも鎌をかけようとしているだけなのか?

普段の公務に関しては逆らうような事も一切無く、状況を捉え私の指示する案をより潤滑に効率よく進められるように補足し協力を惜しまず誰よりも積極的に働いてくれている。
彼を抱え込めればこの先己の地位も安泰だと思っていたのに、何処を履き違えてしまったのか……。

今まで父親に容姿が似ている事を左程気に留める事も無かったが、今日のあの人を問いただすような態度は、在りし日の……今は亡き閣下の姿を彷彿とさせ、責め立てられる様な口調で問われれば、閣下より告げられている言葉のような錯覚に一瞬陥ってしまい、何処かペースをかき乱されてしまった。
こちらが嵌めようと思い立ち引き入れるつもりで計画を立てていた筈なのに、あの者の今だかつてない自信に満ち溢れたあの態度は想定外の出来事だった。

想定外と言えばのあマニエール男爵家の令嬢もだ。
先日の、あのドワイヤルの子せがれの話では、準備万端整い後は式の日程を決め当日を待つばかりだと言う報告だったのに、一体如何なっているのか?
以前あの二人の噂を耳にし問いただせば

『全ての手札はこちらにある。まあ、見ていてください。それにもう如何にもなりませんよ。どうせ悪あがきでしょう』

等と余裕たっぷりにそう告げていたから安心していたのだが、如何言う経緯で今なおあの者の隣に現れたのか?
報告からは有り得ない状況が、不思議でならなかった。

あの者は本来馬鹿がつく程生真面目な性格だ。夜会毎に多くの若い女性に囲まれながらも浮名話は一切耳にした事が無かった。
その者から突如湧いて出て来た女性関係の話。
本当か如何かも疑わしい所だと思いつつも、これが本当の話ならば少々厄介だと思っていたのだが、まさか本当だったとは……。
それもかなり本気な様だ。
あの者は一旦こうと思えば何事も手を緩めることなくやり遂げるタイプだ。
加えてあの子せがれとは比べものにならぬほどの才覚と人脈も合わせ持っており、その者があの娘にそれ程の執着を覚えているのであれば、もはやあのドワイヤルの子せがれの勝機は先ず望めないだろう……。
あの様子ではどの様な手を使ってでもあの娘を抱え込もうとするに違いない。
婚姻の有無は関係ないとまで言ってのけているのだ。
そこまで本気と言う事は始末が悪い。

(……あの閣下と、同じ目をしていた……)

おそらく今後何があっても覆る事等有り得ないのだろう。

如何したものか……。
ドワイヤルの子せがれには事情を問いただし、もう一度状況を確認せねばと思っていたら、屋外へ出た途端宰相次官のオッシャー殿に呼び止められた。

「国務尚書、先程の失態を如何弁明なさるおつもりか!?」

「……失態の……弁明??」

問われた事の意味する事が分からず、言葉を繰り返せば鼻で笑いながら馬鹿にされた。

「あれ程の騒ぎを……まさか、お主はまだ耳にしていないのか? 呆れ返るな。全く……」

「私は、今まで国務室におりまして……」

「陛下の退出以前にか?」

「いえ、そのような無作法な真似は決して……」

「その辺りで今も噂話でもちきりだと言うのに、少しは耳を傾けてみろ!」

言い訳は聞かぬとばかりの口調と鋭い目つきで睨まれた。

噂話と言うものはあまり好きでは無いのだが、耳を傾けてみると城内にまだ残るおしゃべり好きのご夫人等の口から、あのドワイヤルの子せがれが警務騎士団に連れられて行ったことを初めて知った。

ああ、全てはこう言う事だったのだ!
あの者も言っていたではないか『近しい知人がとても気に掛けている』と……。
額に手を当て、これからの事を如何したものかと考えていると青衣に身を包む見知った衣装の者から声を掛けられた。

「閣下、二三お話をお聞きしたいのですが、ご協力頂けますか?」

「なッ!!」

思わず声を荒げかけ、踏みとどまった。
ここでこの者に逆らうことは得策では無い。周囲の目もある。ここは真摯に振る舞うべきだ。

しかし、ああ……。私はこれから如何なってしまうのか?
いや、そう容易く終わらせてなるものか!

「……良いだろう。私で協力できるものならば何でもしようではないか。君等もご苦労だな」

「恐れ入ります。閣下。では、こちらへ」

冷静に、冷静にだッ。
何を聞かれても平然としていれば良いだけの事だ。証拠などは無い筈なのだから!

私は平素を装いその後に続いた。

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NoTitle 

私も噂話は嫌いな方なのですが。
・・・というか、スペシャリズムは噂を気にせず仕事をするでござる。
・・・なんてわけにもいかないのか。
政治の世界だと噂もネックになるときもあるから面倒だ。。。
スキャンダルとか、特集とか。
(;一_一)

LandM様 

今日は。

私も噂話苦手です^^;
でも、こういう方たちはそういう事にも耳を向ける事こそが重要なので。警務騎士団の面々は言うに及ばず、アレクなどはアンテナはそれなりに張り巡らせて、重要と思えるものはこっそり聞いたり介入できる類のものは聞き流す程度で聞いてます。決して余計な口は挟まずに。
そう言う方々はここには他にも多いかな。
勿論うわさ好きな方たちは多いですし、その輪に加わって敵をつくらぬようにあしらっていくのは奥方などの務め。
マリーにはまだ難しそうですね~。これからは頑張って貰わないと(笑)

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