ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《146.指 輪1》

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無事事件は解決したものの、私にはどうしても気になる事が一つだけあった。
それは今回の騒動の原因となった指輪の今後の行方。
あの後指輪は証拠品として警務騎士団に持って行かれる事になってしまったのだ。

「アレク、聞いても良いかしら?」

「何だい」

「私の指輪はいつ戻って来るのかしら?」

あの時は戸惑いの中で事件が解決したばかりで脱力の中にあり、聞く余裕も何も無かった。

「パウウェルの話では事が解決すればと言う事だったから、近日中にと言うのは難しいだろうな。あの女が素直に全ての事を自白するとはとても思えないしな……」

「はぁーっ……。そう、なの……」

肩を落し、思わずため息交じりに言葉を吐き出してしまった。

「何? そんなに心配なの? あの指輪の事が」

「勿論だわ!」

アレクの言葉が、あの指輪を軽んじているかのように感じられて、思わず声を荒げてしまった。

「指輪に秘められた本当の力を知ったのに、マリーは全く動じていないよね。怖いとは、思わないの?」

「怖くなんてないわ。だって、あの指輪はアレクが私の為に授けてくれたものだもの。何より大切な指輪だわ!」

これだけは自信を持って言えるとばかりに、身を乗り出し少し強い口調で言葉を発した。


「一見弱そうに見えるけれどそう言う所、強いよね。マリーは」

「えっ?」

「色々迷いはあっても、一旦こうと決めてしまえば結構後は動じないって言うか……」

自らも気付いていない己の一面を初めて意識した。

「普通は呪術のかけられたものと聞いただけで、先ず身がすくんで傍へ近づこうとはしないものだよ。それ所か距離を取ろうとする者も少なくないだろう。けれどマリーはそうじゃない」

「だって、あの指輪の正当な持ち主が本当に私ならば、私にとって怖いものでは無いでしょう?」

「ああ、呪術は主に従順だからそれは有り得ない」

「だったら、心配する必要はないでしょう? 私はアレクを信じているもの。アレクが大丈夫と言うのだから呪術だろうと何だろうと大丈夫。それ以上に疑う余地など無いわ」

「ああ、君はそう如何してッ……」

回されている腕の力が再び強くなり、何処か感極まった様に愛しげに私を見つめる眼差しは、とても深いものだった。
それは私にとって、とても心地よいもの。
狭い空間の中だけれど、アレクに愛されているのだと実感でき、安心して寄り添える今のこの状況をとても幸せに思う。

「何?」

「いや、何でも無い」

優しい笑みが近づいて来て、そっと唇に重なった。



「そうか。ならば最初から懸念する必要は何も無かったんだ。私は何て間抜けなんだ」

「間抜けって……」

当初、指輪の事を詳しく伝えられなかった理由を、私はこの時初めて知らされた。

呪術と言う言葉だけで恐怖して、その力の大きさを知った私から指輪を嵌めるのが嫌だと言われることを懸念したのだからだそうだ。

「無いわ。それだけは絶対に有り得ない! 例え何か危害が及ぶ事になっていたとしても、全然平気。それがアレクと一緒にいる為の試練ならば、私には敢てそれを受け入れる位の覚悟はあるもの!」

「ほら、そう言う所。やっぱり強いよ、マリーは」

愉快気に満面の笑みを浮かべているアレクを目にすると、自分が本当に強い人間なのだと言う錯覚に陥りそうになる。
本当はまだ全然駄目なのに……。
けれど、アレクのこの笑顔が側にあるのなら、私はもっと強くなれる気もする。
 
「これならば指輪の申請の件も、一時的なものにして取り消す事も視野に入れられるか……」

テロネーゼさんに指輪が奪われた事によって、指輪の行方がグラッセ家の今後を左右する大きな枷になる事が無いようにと、アレクはあの指輪の持つ本来の役割を終わらせようと当初決意したのだと言う。
何があっても私の立場を揺るぎのないものとする為に。

「その様な事が出来るの? だったらっ」

嬉しい!
声を弾ませ、素直にそう思えていたのに……。

「でも、それだと間に合うのかなぁ?」

「えっ?」

溜息交じりの言葉に、私は再びアレクの瞳を覗きこんだ。

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~ Comment ~

NoTitle 

「怖くなんてないわ。だって、~~何より大切な指輪だわ!」
というのはごもっともだが、やはり呪術関連のものはつけるべきじゃないと思うじぇ。。。マリー。
現代科学が信じられている今でもそういう忌みを嫌うのですから。

ここは。
「アレクとの愛があれば、それで十分だわ!!」
・・・というのが淑女の嗜みかと。

LandM様 

今日は。

そうですよね^^
マリーの気持ちは分かりますが、やはりここはずっとつけておくのも今となっては考えものかもしれませんね^^;
そうそう、説得されて
>「アレクとの愛があれば、それで十分だわ!!」
ってマリーが素直にそう言える事を私も祈ってます(笑)

いつもコメント有り難うございます^^
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