ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《152.帰 宅3》

 ←ずっと心に決めていた《151.帰 宅2》 →ファンタジー大賞、応援有り難うございました。
結局、抵抗するも虚しく、その後全身をくまなくヨハンナさんに洗われて、大切な部分だけは何とか死守したが……、今こうして湯に浸かっている訳なのけれど……。

「はぁ――っ……」

湯船のお湯を意味も無く何となくかき混ぜながら思うのは、やはりアレクの事だった。
べっ、別に何かを期待しているとか、そう言う訳では無くて……、直ぐに戻ると言っていたから、もし湯から出て既に戻って来ていたら、こう言う時に如何言う顔をしていいか分らないのだ。
私はこう言う事に慣れてないから……。
軽食の事も聞かれたが、勿論緊張しすぎて何も喉に通る気がしない。

「本当に、如何しよう……」

アレクが戻るまでどれ位の時間が残されているのか?
私は自分で自分の想いを持て余していた。



湯からあがると香油やら何やらをヨハンナさんから塗りたくられ、用意された真新しい真っ白なシルクの夜着に袖を通すと、湯冷めしないようにと上からローブを羽織った。

「あの……、アレクシスは……まだ?」

「せっかくお戻りになられたのに、お寂しいですわよね」

「そっ、そう言う事では無くて……」

どうしても告げられた言葉の端々に反応してしまい、思わず頬が染まる。

「おそらく、ハンデルに捕まっているのでしょうね」

「あの……ハンデルって、執事さんですか?」

「はい、明日は10時より領地で行われる式典に出席されなければなりませんので、おそらくはその件に関連した何かで捕まっているのではないかと……。今までご公務でお忙しかったですから、きっと離して貰えなかったんでしょうね。お可哀想に……」

「では、今夜はこちらには?」

「さあ、如何でしょう? でも、お嬢様がいらっしゃいますから式典が始まる前には一度は顔を出されるのではないかと……」

(なんだ……)

一人で緊張し、心落ち着かなく過ごしていたのだけれど、その話を聞いて少し脱力してしまった。

「そうなのですか……」

城での仕事だけでなく、領主としても広大な領地を守って行かなくてはならないアレクシスにとって、おそらく本当は私と共にマス二エラなどに行く余裕も無いのだろう……。

「ハンデルも、やっと戻って来られたのですから、そこはお嬢様の御心を少しはお察して、時間を割いてあげても良いと思うのですけれどねぇ」

「いえ、それは全然大丈夫です!」

「えっ?」

(しまった!)

思いっ切り力を込めて否定してしまったので、心なしかヨハンナさんの反応が訝し気ぎみに見える。

「いえ、大丈夫って言うか……。私はアレクシスの全てを理解出来たらと思っていると言うか……」

別にアレクシスに来て欲しくないとかそういうことは全然思っていない。
勿論側に居て欲しいと思うし、離れたくないとも思うのだけれど、あのようにあからさまに誘われたような形となり、いかにも……と言う状態で待ち続けなければならないと言う状況に、私が全く慣れていなくて、何と言うか……恥ずかしすぎて身の置き場が無いのだ。その事を素直に口に出来れば良いのだけれど、幾らヨハンナさん相手でも流石にまだその様な羞恥の言葉を口には出来ないと思っている。
先程のヨハンナさんからの状況説明で、心なしか胸の動悸は収まってきた感はあるけれど、来ないかもしれないと思うと、それはそれで何だか複雑な心境になるのは如何してなのだろうか?
でも、この気持ちを素直に話せないのであれば、何か他の理由を告げなければここは不味い気がして、無い頭で必死に考えついたのは、結局ありきたりの答えだった……。

「うちの父と違い、アレクシスはお城でのお務めだけでも多忙を極めている状況ですし、それに領主としての務めも熟されているから本当に大変そうで……。身体が心配なので、私の事で無理をして欲しくは無いと思っていて……」

「まあ! なんて可愛らしい事をッ。大丈夫ですよ、お嬢様。ご主人様はタフな事だけが取り柄ですから」

「でも、城でのお勤めはお休みでも、領主としてのお仕事もあるのに、私の事でまで煩わせてしまって……」

「それ位大丈夫ですよ。お嬢様の存在自体が旦那様にとっての活力の源なのですから1日位徹夜してもお嬢様のお姿を見られたら、式典の一つや二つなんて軽く熟せますよ」

この時、ヨハンナさんはまだきっとマス二エラに行く本当の事情を知らないのだろうと理解した。

「違うんですヨハンナさん。本当に色々あって、実は……」

このまま黙っておくのも心苦しくて、結局私はそこで初めてヨハンナさんにマス二エラに行く本当の経緯について話しはじめた。

また一つ心配事を増やしてしまうようで、申し訳ないと思いながら、ここはやはり正直に話しておくべきだと、思い切って告げてみれば話し終えた途端、ヨハンナさんは何故か目をキラキラと輝かせていた。

「まあ! そう言う事でしたの?! でしたら旦那様はきっと這ってでもこちらに参りますわね。そうなのですか。婚前旅行では無く、そう言う……」

婚前旅行に行くのだと思われていたのも恥ずかしいが、それとは別にヨハンナさんが何だかとっても嬉しそうで、はしゃいでいる様にも見受けられてまたまた驚い……、えっ?

「這ってでも……って?」

「ふっふっふっ、それはきっと殿方の事情と言うものでしょうが、そうですかぁ」

終始このにこやか振りは何なのだろう??

「その……。殿方の……事情っていうのは?」

「あら、お分かりになりません?」

「?? はい……、全く……」

「そういう所もマリエッタ様を旦那様が可愛いと思われる理由の一つなのでしょうねぇ」

「えっと、ヨハンナさん?」

微笑を浮かべられ、にやにやと見つめられても、その意味が私には全く理解出来なかった。

「さあ、そうと決まればやはり少しはお召し上がりになった方が良いですわね」

「えっ? いえ、私お食事は……」

「ええ、分かっておりますけれど、少しは口にされてお休みされた方が、疲れた体を回復させるのには良いですよ」

「はあ……」

結局、ヨハンナさんが何をもってほぼ強制的に食事を勧めるのかの詳しい意味も解らぬまま……、少しだけ口にして、食後はアレクシスが子供の頃に描いたと言う絵などを少し見せて貰ったりしながら、正に深夜と言う時間を過ぎた頃、床に就いた。

勿論アレクシスはまだ戻っていない。

戻ると言ったからには、きっと式典が行われる前には一度は顔を出すとは思うのだけれど、きっと顔を見せに来る程度でバタバタ式典に出かけることになるに違いない。
それに状況によっては、休む間もなくマス二エラに出発とかなるのかもしれない……。

「ホントにアレクの身体が心配だわ……」

そんな事を色々と考えながら結局その夜、私は眠りについていた。

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~ Comment ~

NoTitle 

旦那の帰りを心配しながら待つ!!
それも淑女の嗜みさ!!・・・多分。
ま、上流階級の場合は、他にも色々しないといけないですが。
家の切り盛りもしないといけない立場になってくるんですかね。
秀吉とねねのねねみたいな。

LandM様 

今日は。返コメ遅くなりました。

そうそう、アレクは何かと多忙な人なので、それを理解しなければいけませんね。
正式に結婚したらマリーのしなければならない事も増えると思うので、そこは色々と教えて頂きながらキリモリして行って欲しいですね。

いつもコメント有り難うございます。
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