パウリンに導かれて

パウリンに導かれて《1 章》

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南の国サザーランドは温暖な気候と豊かな自然、連なる山脈から湧き出る水源に恵まれた美しい国と他国より謳われている。
民は自国を愛し、永きにわたり他国に頼ることなく国産物で生活を賄える事を誇りに思ってきた。
近年になり他国との交易も始まり生活にも変化が見られるようにはなったが、自国の誇りを忘れることなく、より便利になった事による憂いに民は日々感謝しつつ、平穏な生活を営んでいた。
建国から180年、治世を治めるザランドル国王も民を敬い、“幸せな国”の象徴として他国から名を呼ばれることを誇らしく思っており、その治世は永久に途絶える事が無いと思われていた。

だが、それに陰りが現れたのは今から17年前。現王ザラドールが王座に就いた頃からだった。
前王が急な病に倒れ、当時11歳だった皇太子がその若さで王座にいた。
前王の遺言と本来の役割から宰相であるオードラル公が成人まで補佐していくものと誰もが信じて疑わなかったのだが、それに母である皇太后が異議を唱えたのだ。

『王様は私が補佐に就く事を望まれています。本来ならばまだ王帝教育半ばの身。数々の試練がこれからも若い王様の身に降り注ぐ事でしょう。その時にお側にいて支えになって差し上げたいのです。王様が心配なのですッ。何があっても私がお助けし、お守り致しますから……お願い……』

喪服姿に身を包み、我が子を自らが助けてやりたいと……、涙ながらに訴えられ、そう進言されれば無下にする事も出来ず重臣等との会議の結果、それは承認されるものとなった。
確かに王はまだお若い。精神的な負担軽減にはなるかもしれないとの意味合いで事は了承されたのだったが、正式なものとしての通達を行った途端、皇太后の態度は手の平を返すかのように変貌を遂げてしまったのだ。

「貴方は……そうね。役に立ちそうだから首にはしないであげるわ。とりあえず宰相の地位はそのままにしておいてあげてもいいけれど、当座は私の内務処理でもして貰おうかしら。ふふふっ」

嬉々として妖艶な笑みを浮かべたその表情に、宰相は当時畏怖を感じずにはいられなかったと言う。

"王の急死は本当に病であったのか?"

そんな噂が立ち始めたのは、王の喪が明けぬ内から黒衣を脱ぎ捨て、意気揚々にふるまう皇太后の姿からだった。
宰相を始めとする重臣たちは疑念を抱かずにはいられなかったが、一度議会で決定したものをおいそれとは否定もできない。
何より王を牛耳っている皇太后の指図か、議会を開く事すら許されない始末。

結局ザラドールが王と立って始まった政権は、蓋を開けると実情は皇太后による女王政権となっていった。
国交が成立し、皇太后の趣味であった他国からの新しい品々が次々と国土を賑わすようになり、交易の盛んな国へと変貌を遂げて行く。
主だった建物の外観も落ち着いた色から奇抜な色へと風変りして行き、今では王都に昔の面影も少ない。
贅沢を好まなかった過去の体制はすっかり影を潜め、城にも真新しい調度品がずらりと並び、内装も奇抜な金をあしらい贅沢の限りを尽くしたものへと変わって行く。
王としての真価を問われる最初こそ、黄金をあしらった生糸を使った織り物を成功させ周囲から称えられ、新改革も一時的には莫大な収益をあげ順調な滑り出しの様にも思え民からも喜びの声が聞こえてはいたものの、1年後には売り上げは徐々に落ちて行き、結局売れたのは最初の物珍しい内だけで、年ごとにその内在庫を多く抱えて行く事となってしまった。
そのような状況にもかかわらず、皇太后の浪費癖は日々酷くなって行くばかり。
国に潤いを与える所か重臣達は金策を講じなければならない状況へと次第に追い込まれて行った。
重臣等の忠告も無視し続け欲望のままに好きなものを買い漁り、ついにはサラドール王が成人した年に国庫が破たんした。
皮肉にも国庫の安定をどうやって取り戻すかが本当の意味で、サラドールが王としての力を試される場となった。
しかし、掲げた政策は民に頼った増税尽くし。
最初は国庫を安定させる為の一時的なものと公言し多少の理解は得られていたものの、皇太后と同じ浪費癖のあるサラドール王がそれを回避出来る筈もなく、翌年も国庫は潤うことなく、その責任を重臣と民に擦り付けると更なる増税を民に強要した。
その歯止めの効かない暴君ぶりに民だけでは無く異議を唱える重臣達も少なくは無く、だがそれを聞き入れる器の無い王はその者等は悉く排除する事となった。
次第に王は、民から“国を私物化する我王”とまで呼ばれるようになって行った。

「ザビーネ……、もう私は耐えられないッ」

先王の時代から宰相として勤めている平和で豊かなサザーランド国を共に築いて来たオードラル公にとって、今の暴君ザラドール王に仕えること自体、耐え難い屈辱だった。
増税に苦しむ民を虐げ、宰相の地位に就きながら皇太后と暴君を治める事もままならない。
自らの進退について考える事もしばしあるが、ある理由があってそれも許されない。
真意を話す事も出来ずに我王に組している事で、ついに息子にまで見放され罵られ王宮を去られた。
それなのに自らは宰相の地位をまだ保持し続けなければならないのか!?

「もう少しです。パウリンの娘は順調に育っています。道は必ず開かれ、その時こそ貴方の宰相としての力が必要になるのですから。お願いですからそれまではどうか……」

宰相オードラル公は、歯噛みしながら拳を握りしめると、自身を諫めるように深く瞳を閉じた。

「ザビーネ、パウリンの娘に会いに行ってくれないか。それだけが望みなのだ。そして早く我王をッ……」

声を震わせながら、次の言葉を苦しげに飲み込む夫の真意を見抜いたザビーネは、そっと瞼を閉じて頷いた。

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※この作品は「パウリンの娘」の改稿作品です。

現在「小説家になろう」サイトで先行改稿中
●『パウリンに導かれて』を読む(掲載中の「小説家になろうサイト」内に移動します)
こちらでは只今第6章7(29話分)まで改稿中です。

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