パウリンに導かれて

パウリンに導かれて《2章2》

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王都から遠く離れたイシュラルは広大な牧草地帯を有する豊かな自然に恵まれている。
交易とは無関係の地で、増税に苦しみつつも民は何とか食に飢える事もなく比較的平穏な生活を営んでいる。
贅沢な暮らしは勿論できないがイシュラルでは不景気の煽りを食らって高騰し留まる所を知らない作物類を出来得る限り自給自足で賄っているのだ。
そのきっかけとなったのはアシュド邸の料理長が不景気の煽りを食らって高騰しすぎた食材に容易とは手が出せなくなったと執事に訴えた事から始まった。
執事が庭師に相談すると、空いている庭の一角に菜園作ってみては?と提案され、それを領主も認め、自らも時間を見つけては一緒に鍬を持つようになって行ったのだ。
その行動が民の共感を呼び手伝う民も増えて来て、最初は領主の邸の片隅で細々と始めていたものだったが、種が取れるようになり手伝ってくれた領民に無償で分け与えるようになると、その規模は一気に広大して行った。
今では各々が収穫したものを領主邸に持ち寄る者も多く、屋敷の食生活はかなり潤っている。既に菜園を作らなくても食は賄える状況なのだが、自給出来ない民の為にと今でも庭先の畑に領主自らが手を入れている。
金銭が絡まなければ今の所余分な税を取り立てられる事も無いので、イシュラルは国内ではかなり平穏に過ごしている地だと言えるだろう。

「ここには照り注ぐ太陽と自然の恵み、自分たちで作った新鮮な作物に栄養たっぷりのミルクもあるわ。それだけで生きていくには十分だと思いませんか?」

明日までの滞在を決めたザビーネは、晩餐の席で満面の笑みでそう告げるローレライを、目を細めて嬉しそうに眺めた。
貴族としての裕福な生活に囚われることなく、自然を愛し、太陽と恵みに感謝する新しいパウリンを所有した娘。
そう言う聡明な娘に育ててくれたアシュド伯夫妻にザビーネは感謝を覚えずにはいられなかった。
パウリンの未知なる力について、まだ全ては話せないにしても、ローレライにはその神秘なる力についてはそろそろ話しておくべきだろうと考えていた。

「後で私のお部屋へ来て。ゆっくり二人でお話ししましょう」

晩餐の席でザビーネからそう告げられたローレライは、自室に戻ると絹袋に大切にしまってあった自らのパウリンを手に取り出し、そっと眺めた。

『このパウリンにどんな秘密が隠されているのかしら?』

ずっと知りたいと思っていた。
自分がこのパウリンを持って生まれた事の意味を……。


ローレライは左手にギュッとパウリンを握りしめ、胸に手を当て大きく深呼吸すると客室の扉を叩いた。

「ローレライです。お言葉に甘えてお話を伺いに参りました。お時間は宜しかったでしょうか?」

「ぞうぞ。お入りになって」

ザビーネの声に再び大きく深呼吸すると、ローレライは静かにその扉を開いた。

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※この作品は「パウリンの娘」の改稿作品です。

現在「小説家になろう」サイトで先行改稿中
●『パウリンに導かれて』を読む(掲載中の「小説家になろうサイト」内に移動します)
こちらでは只今第7章1(30話分)まで改稿中です。

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