パウリンに導かれて

パウリンに導かれて《第4章1》

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ザビーネが屋敷を訪れた日からひと月が過ぎようとしていた。
あの日生まれた仔馬はドレアスと名付けられ、順調に成長している。
ローレライは仔馬の離乳が始まる生後半年を待って、ドレアスを連れて自の運命を受け入れ、その使命を全うすべく旅に出ようと考えていた。
このまま何もせずに国の行く末を見守り続けるだけでなどとてもいられない思いだった。
方々の町や村でも増税がらみの諍い事が日々後を絶たないと聞く。
自らに大それたことが出来るとは今でも思っていなかったが、こんな片田舎に住む領主の娘にでも何か出来る事があるならば、協力させて貰いたいと言う思いは何時も持っていた。
本当に告げられた事が真実へと導いてくれるものなのかはまだ分らない。
けれど、この苦境を必死で乗り切ろうと頑張っているイシュラルの領民の姿を毎日目にしながら、何もせずに手を拱いたままではいられないと思っていた。
知ってしまった真実と、国の現状を考えれば何もせずに訪れるであろう時をただじっと待つだけなのは苦渋でしか無く、ローレライにはとても耐えられない事だった。
だが幾ら寛容な両親でも、詳しい理由も話さぬまま一人で旅に出る事を到底許してくれるとは思えなかった。
流石に一人でと言うのは誰が考えても無謀な事だ。
ならばと思い、一番最初に頭を過ったのは兄のルシオンの存在だったのだが、運の悪い事に彼は今傍にはいなかった。
傍にいれば何をおいても妹の頼みを聞き入れてくれる筈の優しい兄なのだが実は今、領主である父の代理として書状を託され留守にしているのだ。

今巷では幾人の集団かは計り知れないが、我王を組み敷こうとする勢力が存在していた。
民からは絶大な信頼を受けており、陰で協力をしている領主も僅かだがいると聞く。
そこでイシュラルでも表立った協力は出来ないが想いは一緒だと……。陰ながら協力させて貰う準備があると言う事を伝えて貰おうとしていた。

我王の反対勢力となる中心人物の名はまだ誰も知らない。手掛かりは騎士の出で立ちで黒髪に黒ずくめの衣装。ただそれだけだった。

イシュラルでは僅かだが、生活難民を受け入れる準備がされていた。



己の運命を受け入れてから、ローレライは眠りが浅くなったと自負していた。
いつも夜半過ぎに一度必ず目が覚めると、首から吊るされたパウリンの入った絹袋をギュッと握りしめ確認し再びの目を閉じる。
ザビーネの話を聞いてからパウリンを肌身から離しておくことが不安になったローレライは侍女に頼んで首から下げられるようにして貰っていた。

(パウリンを失い、もし自分が婚約者を探せなくなってしまったら、この国に未来は……)

いつもその不安がローレライを捉えて離さなかった。



宵闇の中で再びうつらうつらしていると、厩舎から狂ったように嘶く馬のけたたましい鳴き声と、山羊や鶏の悲鳴にも似たけたたましい甲高い声に瞬時に目が覚め飛び起きた。

『ギヒィヒーン!! ヒヒヒーン!!』

嘶く馬の鳴き声に、夜着のまま急いで上に外套を引っ掛けたままの姿でローレライは部屋を飛び出した。

「お嬢様、いけません!!」

気付いた待女のメイテルに制止されるのも聞かずに階段を駆け降りると、今度は執事のレムキンスにも止められた。

「お嬢様、お止め下さい!!」

「離して!! あの子達があんなに騒ぐなんてありえない事だわ。きっと何かあったのよ!! 急いで行ってあげないと!!」

「お気持ちはお察し致しますが、賊かもしれません! 先程自室から厩舎を伺いましたら微かに人影が見受けられました。今出ていくのは危険です!」

きっぱりそう言い切るとレムキンスは玄関に仁王立ちして両手を広げ梃子でも動かない。

そうこうしている内に他の使用人達や両親もやってくる。
皆に制止され、ローレライは出る機会を失った。

(お願いだから皆無事でいて……)

ローレライは両手の指を交差に組んで、唯々神に祈るしかなかった。
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※この作品は「パウリンの娘」の改稿作品です。

現在「小説家になろう」サイトで先行改稿中
●『パウリンに導かれて』を読む(掲載中の「小説家になろうサイト」内に移動します)
こちらでは只今第7章2(31話分)まで改稿中です。

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