パウリンに導かれて

パウリンに導かれて《第4章4》

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ルシオンの到着から遅れる事3日、ドーリアの領主シュタイン候の息子フリードルがやってきた。

「ご無沙汰しております。この度の件、謹んでお見舞い申し上げます。聞き及んでおりましたのにお見舞いが遅くなり申し訳ございませんでした。色々と調べておりましたもので……」

「……調べられていたのか?」

「えっ?」

「いや、何でも無い。良く来てくれた。シュタイン候もお変わりはないか?」

「はい。日課の遠乗りも変わりなく続けているようで息災にしているようです。父からも伯爵に宜しくとの事でしたが……」

形式的な挨拶を済ませてはみたものの、フリードルは伯爵の切れの悪い反応に、いつもとは異なる違和感を覚えていた。

「……あの……、もしかして、私が来ることは聞いておられませんでしたか?」

そう告げるとフリードルはアシュド伯をまじまじと見つめるながら視界の隅である者に視線を移すと、部屋からこっそりと出て行こうとするその者の姿を捉えた。

「何処に行く気だ?!」

するとその者は少し呆けた様な表情をし、フリードルと伯爵をまじまじと交互に見つめた。

「ぁー、ちょっと用足し……に? え~とぉ、……来ること、話して無かったっけ?」

「……ルシ……オン……」

フリ―ドルが呆れたようにそう告げると、伯爵は息子を見据えて眉を顰めた。

「ははっ、ゴメン。忘れてた?……かも」

ルシオンは頭を掻きながら慌てて謝罪の言葉を告げたが、その言いようがとても彼らしく、フリードルはため息を漏らすと苦笑いを浮かべていた。


調査をして来たと言うフリードルの話では、王都近郊のトランゼと言う街に家畜や家禽を売買する巨大な市場が存在していると言う事だった。 
生活雑貨や加工食品だけでは無く、数少ない食肉用の取引場として通常は知られている場所だが、月に1度、家畜として飼う為の生きた動物たちの競売も行われると言う。その中に盗品と隠され紛れ込まれている事もあるようだが、それは大きな声では言えない。

「ここは大きな取引所なので賊の組織が大きければ大きいほど出品する可能性は低いと思われます。しかし、今回は手口も変えて来ている様ですし、裏をかいてあえて出品すると言う可能性も否定できません。それに賊がもし小物ならば尚更競売に出品するとすればその様な場を利用する以外売りさばく事は難しいでしょう。さすれば一つの可能性ですが、それは高いと思われます。それ以外の手段となれば方々に点在する小物を糸の目をかい潜る様に追うと言う地道な捜索となりますが、個人的にそのような捜査を行うのは不可能です。探している間に家畜が成長すれば更に判別も難しくなるでしょう。何と言っても現段階では情報も少なすぎます。捜索するのが動物の子の場合早急な対応が必須条件です。時間の経過は捜査をより困難にさせますので素早い対応が勝負なのです。私個人の見解と致しましては、かなり多く人の出入りもあるようですし、例え見つからなくとも競売に来た者から何らかの情報を得る事が可能だと思います。直ぐに見つからないにしても市で情報収集をする意義はあるかと思いますが如何でしょうか?」

「凄い! フリードル」

ルシオンがそう言い大げさに拍手をしている。伯爵も今の言葉に称賛の眼差しだ。

「いや、流石だ。この短時間に良くここまで調べてくれた。早速捜索に誰か向かわせよう」

伯爵は既に誰を行かせようかと考え始めているようだった。


こっそり応接室の扉の向こうから話の様子を伺っていたローレライは、我慢するのももどかしく、伯爵の指示がかけられた途端、咄嗟に扉を開け放っていた。

「私が行きます! お父様ッ」

「ローレライ! お前、聞いていたのか!?」

「御免なさいお父様。でも、私はどうしてもあの仔を探さなくてはならないの。それが私に課せられた運命なのよ、きっと。私の言いたい事、お父様なら分かって下さるでしょ!?」

娘から運命と言われれば、恐らくはパウリンに何か関係しているのであろうと伯爵は即座に解釈した。
しかし、可愛い娘に到底そんな危険な事をさせられる訳がない。
如何したものかと、考えあぐねていた。

「レライは言い出したら聞かないからなぁ。それに奪われたのはレライの愛馬の仔馬なんだろ? 心配だよなぁ、そりゃ。探しに行きたいよなぁ。何なら俺が一緒に付いて行ってやろうか?」

「ホント!? お兄さまッ」

身を乗り出し、目を輝かせるローレライを父である伯爵が制止する。

「お前は黙っていなさい! お前が一緒に行って、二人だけで一体何が出来ると言うんだ? それに元々お前には頼んだ事があったはずだが? それはきちんと先方に渡してくれたのだろうね?!」

「……それは……、まだ見つけられなくてさぁ……」

「人の心配をする以前に、先ず自分に課せられた使命を全うしなさい!」

その言葉を吐きながら、伯爵は深いため息を零した。

「ああ、本当に情けない……。お前はどうしてこんな風に育ってしまったのだろうなぁ……。思った事を直ぐ行動に移すのではなく、少しはフリードルの様に考えてから動いてくれれば……」

「酷いなぁ。俺だってきちんと考えているのに……」

少し雲行きが怪しくなってきたと感じたその時、間を挟む様に誰かが扉を叩く音がした。

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※この作品は「パウリンの娘」の改稿作品です。


現在「小説家になろう」サイトで先行改稿中
●『パウリンに導かれて』を読む(掲載中の「小説家になろうサイト」内に移動します)
こちらでは只今第7章2(31話分)まで改稿中です。

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