パウリンに導かれて

パウリンに導かれて《第5章4》

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木陰で休息を取る中、少し脱水気味だったローレライは、ランドンが汲んで来てくれた小川の水を最初に受け取ると喉を潤した。
少し横になった方が良いとフリードルにも促され、自身としてはそこまで酷い自覚症状は無かった事から最初は大丈夫と腰を下ろしたままの態勢だったのだが、兄であるルシオンもうるさく言うので仕方なくここはとりあえず言う事を聞いておく事にした。
横になってみると、これが思った以上に楽な体制で、更に頭に乗せられた濡らしたタオルも身体に染み入るように心地よく、横になってみて、これはやはり正解だったと感じざるを得ない。
気が張っていたから自分では気付けなかったが、思った以上に身体は酷く疲れていたらしい。
ただ一人だけこのように特別扱いを受けている事がローレライには何処か居心地が悪く、早々に身体を起こそうとして再びそれを制止された。

「いいからレライは休んでろって!」

兄にそう告げられ、しぶしぶ身体を再び沈めた。


屋敷の者が持たせてくれたパンとベーコンの燻製を昼食用にとフリードルが馴れた手つきで切り分けている。

「フリードルってこう言う事も出来るのね」

「騎士なんて演習や戦場に行けば下っ端の頃なんて料理番も兼任だからね。何だってできるよ。今だってランドンと交代したって良い位だ」

ランドンは石を積み上げ火を起こし、汲んで来た水を沸かしてお茶の用意をしてくれている。

「本当は私もお手伝いしないといけない事なのに……」

「こう言う事は体力があって出来る者がすればいい。ルシオンにも手伝わせても良いんだけど、どちらも彼には無理そうだから……」

「そうね。お兄様にさせたら怪我でもしそうね」

「ローレライには慣れて来たら手伝ってもらうつもりだから、その時は頼むよ」

「任せて」

何気ない会話が心を落ち着かせてくれる。

如何逆立ちしても鍛え抜かれたフリードルのような体力も望めないし、ランドンのように器用に何でもできる訳では無い。
けれど走っても、せめて自分が出来る日常の事だけても手伝えるようになれる体力が欲しいとローレライは思っていた。


どれ位の時間が過ぎたのだろうか?
いつの間にか眠ってしまっていた事に気付いたローレライは、慌てて飛び起きると辺りを見渡した。
馬達はまだ野に放たれたままで、自由に草を食んでいた。

「良かった……」

その姿に胸を撫ぜ下ろし視線を落せば、直ぐ側に食事が置かれてある事に気付いた。
他の者は如何やら既に昼食を食べ終えているようだ。

「起きたのか? 良く眠っていたから声はかけなかった。温めなおすか?」

フリードルが火から降ろしてあったケトルに目を向け、手を伸ばしている。

「いいえ。大丈夫。それよりも御免なさい。私、すっかり寝入ってしまって……」

自分のせいで、もしかしたらまた皆に迷惑をかけ、出発を遅らせてしまったのではないかと思うと、自分の体力の無さが情けなくて仕方なく思えてしまう。

「気にしなくていいよ。馬を休ませるのも大切な事だからね。時間はまだ少しある。今は私達もしばし休息中だ。こう言う時は休める時に休んでおかないとね。先はまだまだ長いんだから。それにほら、ルシオンもあっちで熟睡中だ」

そう言われてフリードルが振り向く方へ目を向けると、対側の木陰に兄ルシオンも横になって眠っていた。

「ローレライは本当に良く頑張っていると思うよ。ルシオンも今回お気楽ないつも気ままな旅とは違うからね。どうやらかなり体力を削がれるようで、昼食中はボヤキモード全開だったよ。でも、ルシオンは口だけだから」

ルシオンのその姿が目に浮かぶようでローレライは小さく笑った。

「何だかお兄様らしいわね」

「さてと。私はそろそろ馬たちを集めて準備を始めるよ。今後の予定を考えると、あまりゆっくりも出来ないのが現状だから、申し訳ないけど、あと30分程したら出発させて貰うよ。それまでに食事は終わらせられる?」

「勿論だわ」

優しい笑みをむけられて頷くと、ローレライはパンを千切り口へ運び始めた。


食事を終えたローレライは、かなり体調も回復した様にも伺える。
このまま強行しても大丈夫のようにも感じるが、やはりそこは女の身だ。
彼女の頑張りは認めるが、これ以上の無理をさせるのも、やはり酷なのではないかとフリードルは思いはじめていた。

「お気になるのですか? ローレライ様の事が」

一緒に仕度を手伝っているランドンが声をかける。

「愚問だな。流石に我等とはかなり体力的にも差がある事を今回痛感した。変更した計画が正直強行過ぎた事は否めない。更なる予定変更も視野に入れるべきかと考えている所だ」

「それでも女性の割には体力はある方だと思いますよ。根性だけならルシオン様以上です。あちらをご覧ください」

そう言われて言われた方角を眺めてみれば、既に昼食を終わらせて、ランドン任せでのんびりとまだ休んでいるルシオンとは対照的に、ローレライは自ら自分の愛馬を引き連れこちらに向かって歩いて来ている。

「大丈夫……なのか?」

「正直、無理はしているとは思いますよ。ですが、あの気力は大したものです。弱い所もありますが一旦目的を決めれば揺るぎのない方です。ああいう姿を見ておりますと、私と致しましてはローレライ様よりも、むしろルシオン様の根性を叩き直したい気分です。それにローレライ様に関しまして付け加えさせて頂きますと、大丈夫か如何かと言う心配は最早無用かと。とにかく少しでも先に進みたいと思われているのは確かです。もし如何するかと尋ねられれば迷わず先へ進むと仰るでしょう。先程も少し感じましたが、何処かご自分を責めているような様子もございます。きっと何もお出来にならないご自分がもどかしくて仕方がないのでしょうね」

「そうか……」

今波風を立てるのは、ローレライの自尊心を傷つける結果にもなるかもしれない。
本当にローレライの気持ちを考えてやるのならば、ここはやはり少しでも先に進むべきなのかもしれないとフリードルは思い直した。

ローレライの今の頭の中の考えと言えば、どれだけ早くトランゼの街まで行くとか出来るのかと言うその一点だけだった。

「ローレライ。予定より少し先まで行く事になるけれど、きついようなら遠慮なく言ってくれていいから。最初から無理すると後が続かないからね」

「有難う、フリードル」

そう言いながらも、ローレライの性格を思えばおそらく直ぐに『休もう』とは口にしないだろう。
故に、その事は口を酸っぱくして言い続けなければならないと思っている。
「明らかに具合が悪いのに無理をする様なら直ぐにイシュラルに引き返す事も視野に入れておくから、きちんと自己申告するように。良いね」

「そんなッ」

「ローレライッ、良いね?!」

「……分かったわ……」

そこまで言われればローレライも頷くしかない様で、しぶしぶだったがフリードルの提案を飲む事を了承した。

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※この作品は「パウリンの娘」の改稿作品です。

現在「小説家になろう」サイトで先行改稿中
●『パウリンに導かれて』を読む(掲載中の「小説家になろうサイト」内に移動します)
こちらでは只今第7章4(33話分)まで改稿中です。

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