ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《158.清 拭》(アレク視点)

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湯の用意をし、濡らした布でマリーの身体を上体から順に少しずつ押し当てるように拭いていく。
余程疲れているのか。マリーは私が触れている事に全く気付く様子も無く、すやすやと可愛い寝息を立てて眠っている。
拭いている途中でマリーの全身の至る所に自らがつけた薔薇色の印に、思わず笑みが零れた。
これでも一応これから出かけることを考慮し、肌の露出が多く考えられる周辺につける事だけは気を付けていたつもりだったのだが、普段のマリーの服装を思えば、鎖骨の辺りの印は微妙なラインだったかもしれない。
それは更に胸の辺りから大腿部、下肢に向うにつれて多くなって行き、思わず今朝の情事を思い出し、苦笑いを浮かべながら言葉が漏れ出た。

「仕方ないよな。余裕なんて無かったんだから……」

布の温度が冷めて来ると、また湯に浸しては絞り温め直しながら何度も優しく押し当てるようにその上をなぞって行く。
その間途中何度か己と葛藤する場面にも出くわしたが、流石に今はそれを回避せねばならぬ状況なので、目を反らし、大きく首を振りながら己が抱いた邪念を必死で振り払った。
先程湯の用意をしようと部屋から出た途端、ヨハンナと鉢合わせた時に念を押された言葉を思い出しながら……。


『あと5分待って出て来られなければ、乗り込もうかと思っておりましたわ』

『もう、そんな時間か?』

『もう、ではありませんッ。既に9時を回る所です。いらしてから4時間も、一体何をしていらしたのですか等と不粋な事はお聞き致しませんが、早くお仕度をなさって下さい。このままでは朝食もままなりませんよ』

『いや、食事は良い。これからマリーの身体を……、清めてやりたいから……』

流石にこの言葉は何処か恥ずかしく、少し顔を反らしながら付け加えた。
だがヨハンナは何も思っていないのか、さも当然の事のように言葉を畳みかけて来る。
『そんな事は、この私が致します。さっ、早くお仕度をなさってください。既にリレントもお待ちしてますよ』

『駄目なんだ。これだけは絶対に譲れないッ』

前回もそう思ったが、自らを受け入れ満足そうに眠るマリーの愛くるしい姿を、ヨハンナと言えども他の者に見せる事だけは絶対に嫌だった。
だから、今後もこの役割だけは他の者に譲る気は毛頭い。

『……全く……、旦那様の為を思っていっておりますのに……』

『すまない……』

『分りました。では、朝食用のパンとスープだけはお詰めしてリレントに預けますので、馬車の中で召し上がってください。ですが、お時間があまりありませんので、先にシャワーを浴びられて身を整えて下さい。それまでにこちらに湯は私がご用意しておきますから、お清めはそれがお済になりましたら……と言う事で』

『分かった。急ぐッ』

5分でシャワーを浴びて、リレントにも手伝ってもらい急ぎ身を整える。
その仕度の早さにヨハンナはかなり驚いていたが、今は眠っているとは言え、何時目が覚めてマリーが不快な思いをするかもしれないと思うと、式典うんぬんよりもマリーの事が気がかりでならなかった。

『本当にマリエッタ様は、アレクシス様に愛されておいでなんですねぇ』

微笑を浮かべながらも、何処か呆れたような眼差しを向けながらヨハンナから言われた。

『愚問だな』

迷いなくそう告げれば、ヨハンナから湯と拭き布を受け取る時に釘をさされた。

『……それは喜ばしい事ですが、くれぐれもお清めのでの邪念はお捨て下さいね。ゆっくりしていると、間に合わなくなりますので』

『っ、当然だ』

極力、きちんと拭く事だけに専念しようとは思っているが、実際は全くそれだけに徹すると言う自信も無いのは事実だ。
事後の色香漂う美しいマリーの肢体を前にして、自分が何処まで平常心を保てるかの勝負だと思っていたのだが……。

『『式典に間に合わなくばマス二エラ行は中止します!』とハンデルから、きつく言い使っておりますので』

『……あのじじぃ……』

屋敷で務めるヨハンナにとって、勤め人の長たる執事のいいつけは絶対だろう。
本当に食えない奴だと、心の底からそう思った。


それにしても、今回も全身を拭かれても全く気付く様子も無い程、マリーを疲れさせてしまっていたとは……。
原因が己にある事も自負しているが、如何にも止められなかったのだから、それは仕方ない。 
だから再び湧き上がってくる雑念も、身体を拭きながら必死で振り払った。
今後の二人の為に、今必要なのは私がマリーを清める作業に邪念を振り払い、徹する事にこそが必要なのだから……。

何とか滞りなく拭き終わったが……、実はかなり途中もヤバかった。
己のものに再び熱が籠って来ているのを何度も感じては打ち掃った。

「はぁ……」

溜息をつきながら、身を清め夜着の袖を通してやった美しいマリーの姿を今一度顧みる。
欲望が失われる事は無いが、マリーの可愛い寝顔を見ているだけでも今は心が十分満たされていた。

「これ以上は、流石に無理はさせられないからな……」

あれだけ煽っておいてと思われるかもしれないが、自嘲気味に口から漏れ出た言葉も本心だ。
時間の事もあるが、昼過ぎにはマス二エラに向けて出立するのだ。
マリーには自分が戻ってくるまでのわずかな時間だが、少しでもゆっくりして貰いたい言う思いがあった。

「では、行って来るよ」

心を落ち着かせる為に、あえて唇にでは無く軽く瞼の上に口づけた。
すると……。

「んっ……」

かすかにマリーが身じろいだ。
鼻にかかるその声が妙に艶っぽく、再び熱を帯びそうになる己を感じながら、既に時間があまり残されていない事に気付き、首を大きく横に振ると雑念を必死で振り払った。
マリーはそのまま少し体制を変えただけで、何事も無かったかのように再びすやすやと寝息を立て始めた。

「人の気も知らずに、いい気なもんだな……」

目を細めて愛らしいその寝顔に後ろ髪引かれながら、私はマリーの安らかに眠るその部屋を後にした。

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~ Comment ~

NoTitle 

へ・・・変態がいる。。。
(*´ω`)

そこはあえて、侍女に任せるのが紳士の嗜みだじぇ!!
アレク君。

LandM様 

今晩は。

アレク、どんだけマリーの事が好きなんだか^^;
書きながら、最初ヨハンナに湯場に連れて行って貰おうかと思ってましたが、頭の中のアレクから拒否されちゃいました。ダメなんですって^^;
何かアレクってホント相愛じゃなきゃ、怖い程の溺愛ぶりだと私も思う(笑)

いつもコメント有り難うございます。
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