パウリンに導かれて

パウリンに導かれて《第6章3》

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ローレライ達は食後の紅茶を飲みながら話をしていた。

「サビエルってフリードルの元部下だったんだろう?」

「ええ、そう言っていたわね」

「って事は、あいつも一応騎士だったんだよな? 他にも似たような風貌の奴らが居るけど、皆騎士仲間だったのかな? 聞いてみようか」

ルシオンは何度も周囲を見渡して落ち着きが無い。気になって仕方がないようだ。
他の者達も気になってはいるだろうが、敢て口にはしていない。 
そこにルシオンの天真爛漫な人がらが伺える。

「不躾な事を仰らないで下さい」

「何処が不躾だよぉ」

ランドンはここ数日のフリードルの行動から、信頼に足る人物だと認識していた。
故にそのフリードルが、ここへ連れて来たと言うだけでもこの場所が安全であると言う事を認識しており、それ以上の余計な詮索を今はするべきでは無いと理解していた。
よって幾ら周囲に目が行こうとも特に気にするような素振りは敢て見せないように心掛けていた。だが、己が主の視点はどうやらそこには無いらしく、呆れたように深いため息を漏らした。

「貴方と言うお方は……、全く……。仲間ですよ。フリードル様にも先程も挨拶しておいでだったじゃないですか」

「してたか? 睨んでなかったか!?」

「睨んでいません!」

「そうか?」

「…………」

23歳にもなった、それも伯爵位を継ぐべき成人貴族の者の裏表の無い天真爛漫な性格は、普通ありえないのではないかと思ってしまう。
通常の成人貴族と言えば、もう少し落ち着きがあり、そこはかとない威厳を保たれていており、余裕ある優雅な身のこなしは必要不可欠だろう。それに文武両道となればいう事はない。
想像し、頭の中に過ったのは先程まで側にいらしたシュタイン候が長子フリードルの姿。彼がその最たるお人で非の打ち所がない者であると言うのは間違いないであろう。
あれで21歳と言うから驚きなのだが、我が主のこれで23歳と言うのも別の意味で人目を引くのではないかと思われる。
これで成人したばかりと言うのならまだ初々しいで済まされるが、目の前の主はと言えば、人並み外れた好奇心と優しい以外、何の取り得も無く……。

目の前の主の姿を見て、ランドンは大きく首を横に振った。

(いや、あのお方と比べるのは止めよう。あの若さでああいう方はおそらく特別なのだから……)

「何してるの? お前……。頭、どうかしたのか? 大丈夫か?」

「いえ、何でもございません」

「なら、そんな難しそうな顔するなよ。眉間にシワ寄ってるぞ」

「元々こう言う顔ですよ。ですが、ご心配頂き有難うございます」

「別に心配なんかしてないし~。それよりもさぁ、あれってッ」

全く害は無さそうなのだが、それが返って問題でもある気がするとランドンは思っていた。


今も興味津々で店の中を点在する黒衣の者達を目で追っているルシオン。
これから少なからず自分たちと関わって行くことになるであろう者達の事が気になるのは分かるが、成人男子たる者。そこは貴族だろうが庶民だろうが関係なく、突拍子の無い行動だけは控えた方が良いと思われる。
見ていてやりたいとは思っわないが……、いや、例えやりたいと思っても、そこを堪えるのが大人なのだ。しかし、如何言う訳かそのような少年じみた主が時折羨ましくも思えて来るのは何故なのだろうか?
人は自分に無いものに憧れると言うが……。

「……まさかな……」

自身もそんな気持ちでルシオン様に接しているのだろうかと思われるまさかの己の感情に、ランドンが自称気味に呟いた。



暫く従者に諫められ、大人しくしていたルシオンだが、目の前で起こった状況に、ついにその好奇心が上回ってしまったようだ。
フリードルと同じ黒い外套を身に纏った男が入ってきのだ。
その男は黒衣の男2人に声をかけるとなにやら険しい顔をして直ぐに一緒に出て行ってしまた。

「もう無理ッ。今の何!? あれって何が如何なってるんだ?」

「さぁ、何かしら?」

「確かに気になる状況は否めませんが、しかし……」

確かに自身も少し気になってしまったせいで、主に対する反応が遅れてしまった事は否めない。
失念だと思い気を引き締めていると、顔を見合わせた途端、何やら嫌な予感がした。
彼の者の瞳の奥に輝きが増していのだ。

「聞いてみるか!? おい、サビエル!!」
「ルシオン様、いけませんッ」

呼び止める間もなく、ルシオンはサビエルを呼んでいた。



結局、呼び止める事が叶わなかったランドンは、とても気まずくて仕方ない。
側に近付いて来るサビエルに対し申し訳無さ気に深々と頭を下げていた。

「お呼びでしょうか?」

「お前、今の分かる? 黒衣にエルと同じ外套着た奴が現れてお前と同じ黒衣の男引き連れて出て行っただろ?」

ルシオンは身を乗り出し、目を輝かせている。
本当に知りたくて仕方がないようだ。

「はい。分りますが……」

「何かあったのか!?」

「私からはお答えできません。後程エル様にお聞きください」

「あいつに聞いたってどうせ勿体ぶって喋る筈ないじゃん」

「では、尚更私からはお教え出来ません」

「あいつに義理立てしてる?」

「そう言う問題ではございません。私はエル様の配下ですから」

「お前忠実だね。エルに何か恩義でもあるの?」

「恩義もございますが、何より尊敬致しておりますので」

「あっ、そう。何だかおまえみたいな奴だね」

ルシオンはサビエルを見て相槌を打つと、今度は自らの従者を振り返り、そう言った。

「いえ、全然似ておりません。私はルシオン様に恩義は感じておりますが、尊敬は致しておりません。信頼はしておりますが……」

「……そ、アリガト」

「いえ……」

知らぬ者には理解しがたいかもしれないが、これはこれで2人の従士関係は上手く行っているから不思議だ。
ルシオンは多少不服そうだが、何時もの事だ。

「サビエル、帰る! 護衛宜しく!」

「……大人げない……」

「何か!?」

「何でもございません」

ランドンは深々と主に頭を下げた。


ローレライは少し不機嫌そうな兄と従者の微笑ましい姿に、自然と笑みを零した。


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※この作品は「パウリンの娘」の改稿作品です。

現在「小説家になろう」サイトで先行改稿中
●『パウリンに導かれて』を読む(掲載中の「小説家になろうサイト」内に移動します)
こちらでは只今第7章5(34話分)まで改稿中です。

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