パウリンに導かれて

パウリンに導かれて《第7章2》

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ローレライは今までの自分の行いを後悔していた。
小さい頃ならばまだしも成人と呼ばれる年齢に達した女性なのだ。自らもそれ位の配慮をして行動しなければならなかったと言う事を……。
ささやかだとは言っても、それ成りに出る所は出ているし、抱き付けば少なからず女性であることを主張する結果となり得てしまう。
それなのに今までどんな相手に対しても、自分はそう言う気遣いを全く相手にすると言う意識も持たずにいた。
特に今日などは普段はそれなりの下着も身に付けているが、先程暑さにかまけて胸の当て布も外してしまい、うかつにもその事を忘れたまま相手に抱きついてしまったのだ。
抱きついた時に自分でもいつもと違う感触があった。
きっとゼロに、とても不快な思いをさせてしまったに違いない。

(申し訳ないわ……)

ジュリアスをあんなにも親身になって世話して貰ったと言うのに、自分はお礼すら一言も言わずに立ち去ってしまったのだ。

(どうしたら……)

ローレライの不安は考えれば考える程、ますます増長して行った。



ゼロは呆気にとられていた。

(今のは何だ?)

抱きついたかと思えば『ごめんなさい』で、(普通の女は違うだろう?!)と初めて見る女と言う生き物の反応に自らに問いかけ、些か戸惑いを覚えていた。

今までゼロの知っている女と言う生き物の反応は、色気で迫ってきたり、無理やり胸を強調し押し付けてきたり、分厚い化粧に鼻に突くドギツイ香水。そう言う者ばかりだった。
一見しおらしく思える者も中にはいたが、それは表向きで、こちらが取り合う事無く無下にしていれば、その内必ず化けの皮が剥がれて来るのが当たり前の生き物なのだ。
今の状況等は女の武器たるものと言われている胸を強調するのに格好の状況だったと言うのに、頬を真っ赤に染めて、それをまるで恥ずべき行為であったかのように慌てて逃げて行ってしまったのだ。
それは如何言う事なのか?
自身の身近な者の中でも、醜態を見せるものはいると言うのに……。

特に上の姉などは亭主の前ではかなり猫を被りしたたかさを見せている。日々媚を売り、自分の前と子供達の前ですら全然態度が違う。
下の姉も亭主の前では可愛いと言う話しだが、口の五月蠅い事この上なく、家に戻った時等はいつも喚き散らすばかりで手が付けられない。
だが今の女は、自分の知る女と言う生き物とは全く異なる生き物のように感じた。

「……変わった奴……だな」

ゼロはポツリと呟いた。



「お兄様ぁ……私どうしたら……」

ローレライは瞳をうるうるさせながら、兄の部屋を訪れて訴えていた。

「なっ、ななな何があったんだ? どうしたんだ!?」

いきなり話があると言われ、扉を開けると涙を溜めた目で妹に見つめられ、ルシオンは戸惑うばかりだった。

ローレライは小さい頃から理由無く泣く方ではなかった。
いつも泣く時にはそれなりの状況が存在し、誰かが可哀相だとか、自分の事では無く周囲に対しての事が多かったように思う。

「とっ、とにかくおちつけ。深呼吸しよう、深呼吸ッ」

とりあえず椅子に座らせ、カップに水を注いでそれを持たせた。
ローレライはそれを受け取ると、一口コクリと飲み込み大きく長い溜息を吐いた。

「何があった?」

兄に優しく聞かれ、ローレライは涙を服の袖口で拭うと、馬屋で起こった事をゆっくりと話し始めた。


「えっ?……」

話しの内容に、ルシオンは呆気にとられた。
続く言葉が出て来ない……。
自分の目線で考えれば状況的には特に問題は感じられない話で、けれどその事に純粋に妹は如何やら悩んでいるらしく、何と言ってやればいいのか全く分らない。

(ローレライは一体、何についてこんなに悩んでいるんだ?)

話しを聞いても、妹が悩んでいる明確な理由が分らないとは……。
しかし状況的に分らないと言える訳もなく、するとしばらくしてある事に気付いた。

「そうだよな。お前みたいに可愛い娘に対して『女だったんだ』は酷いよな。そりゃ、傷つくよなぁ」

ローレライは同調する兄をぼんやりと眺めながら、首を大きく横に振った。

「……違うわ、お兄様……。そんな事で私、傷つかないわ。服だってこんな男物なのだし……」

「そっか。じゃ、何で?」

「……胸……、失礼じゃないッ。私、今までそんな事、気にしたことなかったけど、とっても失礼な話だわ。ゼロにあんなにジュリアスの事を良くしてもらったのに、その上お礼も言わずに去って来てしまったのよ! でも、恥ずかしすぎて今はとても顔を合わせる事なんて……。一体どうすればいいの?……」

「……別に気にする事、ないと思うけど……」

自分のした事に対して手を叩いて喜んでくれて抱きつかれれば、お礼の言葉が無くとも喜んで貰えてる事は十分に通じるだろう。
ローレライが気にしている胸にしても、普通は男ならば返って嬉しいだろと思ったけれど、あまりにも無粋すぎて、それは流石に口には出来なかった。

「どうして?」

「……男……、だから?」

「……分らないわ……」

「……とにかく、その事は忘れて。気にするだけ無駄だからッ」

「分らないけれど、お兄様がそう言うのなら……」

兄の珍しくキッパリとした態度に、言われた訳は良く分らなかったものの、何となく女性の見方と男性の捉え方は違うのかもしれない。
それに性別的に男性と言う立場の兄が『男だから』と言うのだ。とりあえずあまり気にしないように心掛けるしか無い様にも思われる。
けれど……。
それでも、はやり色々とお世話になったのだ。良識ある態度は示さなければならない。
ローレライは次に会ったら、せめてお礼だけはきちんと言っておこうと心に決めた。

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※この作品は「パウリンの娘」の改稿作品です。


現在「小説家になろう」サイトで先行改稿中
●『パウリンに導かれて』を読む(掲載中の「小説家になろうサイト」内に移動します)
こちらでは只今第7章7(36話分)まで改稿中です。

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