パウリンに導かれて

パウリンに導かれて《第7章4》

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どうやら話がこちらに振られていたらしい事に気付き、ローレライは少し慌てた。
ゼロの事が気がかりで、気が散漫になっていたとはいえ、自分に振られた話すら全く耳に入っていなかったとは……。
自身の不甲斐なさに、少なからず落ち込んだ。一体何の話だったのか?

「えっと……」

顔をあげローレライが兄を見つめた瞬間、シドが話しかけてきたので慌ててそちらに目を向けた。

「だから、その恰好。もう止めた方が良いぞ」

『だから……』と言われても、聞いていなかったのだからその理由すらローレライにはわからない。
突然不意をつかれた状況となり、ローレライは何と答えれば良いのか戸惑ってしまった……。

「あの……、この服装はエルに勧められたもので……」

とりあえず男の身なりをしている経緯を伝えなければと思い立ち、ローレライは話をはじめたのだが、あっさりそれは切り捨てられた。

「それは聞いた。今の話、ホントに聞いてなかったんだな」

「すみません……」

交流と言う話しの席で、振られた話しすら聞いていなかった自身の状況に、気が咎められ自然と目線が下がり顔も俯き加減になってしまう。
穴があったら入りたい……。今のローレライの心境はそう言う状況だったに違いない。

「恰好だけ変えてもレライの場合、全然男っぽくならないから無駄だって話。返って危ない事になりそうだから、いっそ女としてその恰好のまま短剣でも腰に差して歩いてた方が牽制になるだろうって……」

兄が今まで進んで来た話の経緯を簡単に説明してくれた。

「そうなのですか? 私は何も分からないので、そう言う事はお任せします」

「いいのか? では、こちらで勝手に決めさせてもらうぞ」

「はい、宜しくお願い致します」

ローレライはあまり深く事を考えずに頭を下げた。
分らない事に余計な口を挟んでも、事が潤滑に進むとは思えないし、こう言う事は詳しい者に判断して貰う方が良いと、漠然的にそう思えたからだったのだが……。

「とりあえず形だけでも剣は使えた方が良いな。やった事は?」

「実際には全く……」

「だろうなぁ」

そう告げながら、一瞬何か考える素振りをみせると、シドは隣にいたゼロの肩をポンと叩いた。

「じゃ、後は頼んだから」

(えっ?)

いきなりシドの口から漏れ出た言葉に、ローレライは驚きを隠せない。

「何だ? 唐突に」

急に話しを振られても、相変わらずゼロは憮然とした表情を崩さない。
少しだけシドに視線を移しただけだった。

「俺たちは色々と忙しいんだ。今はお前が一番暇そうだからな。お前に頼む」

「何、勝手な事を言っている」

(ええっ?!)

今起ころうとしている状況を理解したローレライは、慌てふためいた。

「だってお前、本来の仕事の半分を投げうってこっちに来てるんだぞ。全然暇だろ」

「暇では無い。仔馬の捜索には率先して加わる」

「お前はその気でも、実際問題お前が陣頭に立ち捜査に加わるのは不味いに決まってるだろう? あくまで素性がバレない程度にだ。そうでないと認められない。何の為に今までやって来たんだ。表に出るならそれなりに考えて行動しろよ。でなければ仔馬の捜査は認めないッ」

「お前に認めて貰う必要はない。決定権は私にある」

「ならもっと考えろよ! お前の勝手な行動一つが我等にどんな結果を齎すのか、分らないお前じゃないだろう? 良いか、これはある意味好機だ。お前が女と居るだけで良い隠れ蓑になるんだからッ。それに剣の指導も、お前の得意分野だろ!?」

「……女は直ぐに目移りするに。覚える前に投げ出す。教えるだけ無駄だ」

「お前、その偏見は止めろよ。男だって駄目な奴は駄目だ。いいか、とにかく見せかけの形だけで良いから覚えさせろ。構えた瞬間の立ち振る舞いが真面になれば、お前の側に居れば下手な手出しをする奴も現れないだろう?」

「何だ。お前は私に護衛もさせる気なのか?」

「当たり前だ。こっちは無い人手を削がれた上に仔馬探しだ。エルにはお前の代わりに色々動いて貰うつもりだからな。お前も他の奴に間に入られるより愛弟子に動いて貰う方が気が楽だろう?」

「当然だ」

「なら、教えてやれよッ。愛弟子の為だ。何かあって抜いた瞬間に構えもままならなければ、手に持った時点で使えないってバレてバッサリだ。お前の側でそんなの、笑い話にもなりゃしない」

言い回しは温和だが、内容が殺伐としていて、想像すると少し怖い……。

「どうしても、私に護衛もさせる気なんだな……」

「当然だ!」

ゼロとシドの間に漂う空気が、側に居ても張りつめているのが感じられる。
何処か殺伐とした空気の中で、ローレライは身を小さくしていた。


ゼロは面白くなく思っていた。
何故自分がこんな女に形だけとは言え剣を持たせ指導し、護衛までしなければならないのかと……。
だいたいこんな瘦せ細った女に剣など持てる筈はないと決めつけていた。
女に剣を教える等、考えただけでも時間の無駄だとも思っていた。
のだが……。

「頭の良い馬ほど、主人に忠実だよな。主人に何かあったら馬も凄~く悲しむんだろうなぁ」

「…………」

「息子を奪われ落ち込んでる所に、主人にまで何かあっては何だっけ? あのジュリアスとか言う馬も体調を崩したりするのかもなぁ。優しそうな馬だったし……」

「お前ッ……」

今のゼロの弱点は、唯一ジュリアスとその仔馬の捜索に関わる事だ。
シドはその事を熟知しており、それをあえて突いてくる。
本当に食えない奴だと思いつつも、それ故今まで一番信頼出来、一緒にやって来れた経緯もあるのだと、ゼロは自身に言い聞かせた。
だが、面白くないのだ。
ただ無言でシドを睨みつけ、憮然とした態度を崩さないまま、何分が経過しただろうか?
そして……。

「……もう良い。分かった」

ゼロはため息交じりに、ついにローレライの護衛と短剣指導を受け入れたのだった。

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※この作品は「パウリンの娘」の改稿作品です。


現在「小説家になろう」サイトで先行改稿中
●『パウリンに導かれて』を読む(掲載中の「小説家になろうサイト」内に移動します)
こちらでは只今第7章7(36話分)まで改稿中です。

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