パウリンに導かれて

パウリンに導かれて《第7章5》

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ローレライの頭の中は混乱していた。
まだお礼も言えてないのに、失礼な事ばかりしている状況で、この上護衛に剣の指導までして貰うなどありえないと思っていた。

「お兄様……どうしよう……」

ローレライは兄にだけ聞こえるような小さな声で呟いた。

「別に気にすることないよ」

「でも……、先程も……」

「何?」

うつむき、何かぼそぼそと言っているようだったが、ルシオンにも上手く話しが聞き取れなかった。
それでも流石に何かあったのだと言う事には気付いたようで、慰めの言葉をかけていた。

そんなローレライの心情を知る由も無いゼロは、正面に映る兄妹の様子を無言のまま見守っていた。
だが、これから女と行動を共にしなければならないと言うだけでも不本意なのに、何やら時折こちらに視線移しながら話のネタにされるのは心外だった。

「何が言いたい? 言いたい事があるならば、私自身にはっきりと言えッ」

ゼロは淡々と言葉を吐き出した。
不承不承で何とか承諾した相手に、何やら向かいでこそこそと話されれば、誰だっていい気はしない。

そのゼロの行動に一番驚いたのはシドだった。
普段のゼロならば思いっきり無視して終わる。それ以上も以下もないのだ。
それが今、あからさまに言葉を発した時点で、それが例え苛立ちに似た感情を持っていたにしても、確実にゼロの反応が今までの女に対するものと違うと言う事に、心の中で微笑していた。

ローレライはゼロの荒声に更に身を小さくしていた。
如何して良いのか分らず、殆どパニックに近い状況だったに違いない。
必死に絶えてはいるが、瞳は潤んでいて、今にも涙が零れそうな状況だ。
心なしか顔色も悪くなり、俯き不安な表情でいっぱいのローレライを見ていれば黙ってはいられないのが兄である。
ついにルシオンは妹の為に奮起した。

「レライは、ずっと気にしてるんだッ」

「おっ、お兄様ッ!」

今にも涙が零れ落ちそうな瞳で、慌てた様に顔を上げ、ローレライは兄を静止しようと試みる。
けれど、結局は恥ずかしさがそれを上回り、それ以上の言葉を告げる事もままならず、ローレライは言葉を口に出来ないまま真っ赤になるだけだった。

「さっき馬屋でレライがあんたに抱きついたんだろ? こいつ、その事をずっと気にしてたんだ。レライは昔っから嬉しい事があると相手に感謝して抱きつく癖があるんだ。それを今迄気にした事なんて無かったんだけど、あんたから……何だ……、言われた一言で17にもなってそれは不味かったと流石に気付いたらしい。あんたに失礼な事をした、申し訳ないって気持ちと、ジュリアスの治療をして貰ったのにお礼も言わずに飛び出して来た事をずっと気にしてたんだ……。だよな、レライ」

ローレライを覗き込み、これで間違ってなかったかとルシオンが確認すると、ローレライはこくりと大きく頷いた。

「何だよ、それ……」

今時奇特な奴だと呆れたようにシドが言葉を放った。

兄が一番言い難かった事を話してくれたお蔭で、随分気が楽になったローレライは、思い切ったようにゆっくりとだが言葉を口にしはじめた。

「……それに、……先程も兄と逸れる所を支えて下さったのに、お礼も言いそびれてしまって……。その上、またご迷惑をおかけする事になって、ただ申し訳なくて……」

「レライ……」

「あの……、色々と……有難うございましたッ」

深々とローレライは頭を下げた。


ゼロは普段は涼し気な瞳を珍しい事に見開いていた。

(何だ!? この女、訳が分らんぞ?)

今まで見た事もない女の反応に、ゼロは少し困惑していた。

「あの……先程のお話し、私にとってはとても有難いお話ですが、ゼロがお気をを悪くされるのでしたら、私は別に今のままでも……」

ローレライの突然の提案にシドが慌てて口を挿んだ。

「いや。それは困るッ。こっちも忙し中を状況を打破するために導き出した提案なんだ。急に話が変わってはまた計画を立て直さなくてはならなくなる。これ以上の面倒は御免こうむりたいんだ。出来れば聞き入れて欲しい」

「……そうなの……、ですか?」

何も分からないので、ローレライは唯一その立場が分かっているであろうフリードルに視線を移す。
すると、フリードルも頷いてくれたので、素直にそんなものなのかと思う事にした。

ゼロはシドの慌て振りに何やら腑に落ちない所を多少感じつつも、シドや他の者達が自分の我儘のせいで余計な仕事を背負わなくてはならなくなったと言う事実は拭えない為、その事は口にせずに飲み込んだ。

「シドがそう言うのならば、私は別に構わん」 

「すみません」

「何故謝る? お前は何も悪くは無いだろ」

「いえ……、でも……」

「クドイ!」

悪いと思っているから謝っているのに、何故またゼロを怒らせてしまったのか、ローレライには全く分らなかった。
焦ってオロオロするばかりで、結局また何も言えなくなってしまって黙り込んでしまう。
すると、ゼロの愛弟子らしいフリードルが助け船を出してくれた。

「こういう時は感謝の言葉で良いんだ。ゼロは消極的な態度を必用としないから……」

告げられたまさかの言葉に、そう言う人がいるのだろうか?と一瞬戸惑いを覚えたローレライだったが、見上げたゼロの様子はフリードルの言葉に否定するようにも見受けられず、今までと変わらぬ態度のままだった。
少し考えて……、ローレライ言葉を口にする。

「有難うございした。これから、宜しくお願いします」

そう言い頭を深々と下げると、憮然とした態度は変わらなかったが、ゼロはゆっくりと頷いた。

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※この作品は「パウリンの娘」の改稿作品です。


現在「小説家になろう」サイトで先行改稿中
●『パウリンに導かれて』を読む(掲載中の「小説家になろうサイト」内に移動します)
こちらでは只今第7章7(36話分)まで改稿中です。

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