ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《160.領 主》(アレク視点)

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晴天に恵まれたこの日、無事グラリルの堤防着工工事の式典も大詰めで、後に残すは最後の杭打ちのみとなった。
観衆として集っている領民の視線が、私の手元一点に注がれている。
私は大きく小槌をもって振りかぶり、杭目掛けて押し叩いた。

「よいしょ――ッ!!! おお――っ!!!」

大歓声が沸き起こり、私は領民を宥めるように、大きく右手を差し上げた。

よし。これで今日の式典は終了だ。

「リレント。さあ邸に戻るぞ」

「いえ、旦那様……、それは流石に……」

杭入れが終わって直ぐに、逃げるようにこの場を立ち去るのは得策では無いと抑えられた。


目をやれば、周囲に沢山の領民が集まって来ていた。

「本日は、本当に有難うございます。御領主様」

「名代様より、御領主様の命だと、家の代わりにと領主小屋まで貸して頂き……」

「我が村も、改修工事の終わるまでと別邸をお貸し頂き、物資の補給を頂いております。全て御領主様の意向だと伺っております。本当に有難うございます」

王城に居る間も、ハンデルからは領地の被害状況や諸々の話を聞き、それなりの対処は促して来た。

「いや、皆が少しでも安心して過ごせることが一番だからな。どうせ空いているのだ。必要な時に使ってくれて構わない。暫くはまだ皆に不自由な生活をさせるかもしれないが、もう暫く勘弁してくれ」

「そんなッ」

「勿体無いお言葉です。御領主様ッ」

杭入れが終わって直ぐに、逃げるようにこの場を立ち去るつもりだったが、領民の端々から聞こえてくる感謝の声に、私にはマリーとの事だけでなく、まだやる事が沢山残されていた事を痛感した。

「心も落ち着かずに逸る所でしょうが、この後はとりあえず現場の指導者と今後の話をして頂きます」

「そうだな。領主としては当然しなければならない事の一つだな。さもなくばハンデルも五月蠅いだろうしな……」

「ハンデル殿も悪気はないのでしょうが、あの方はこう言う所は細かい方ですから、きちんと押さえる所は押さえておきませんと『何はしたか?』『これは如何した?』『また行ってこいッ』等と、色々と何を言われますか分りません。そうなれば本日のマス二エラ行にも支障が出て参ります。旦那様は絶対にマス二エラには本日中に出向かれるおつもりなのでしょう?」

「当然だッ!」

マリーとの完璧な幸せの為に、それだけは絶対に外せないッ!

「ならば、ハンデル殿に口の挿む権利を与えない程の材料を持って帰りましょう。気持ちよく出立できるように」

「煩わしい老人だが、本当に良くやってくれているからな。致し方ないか……。だが、そろそろ後進に譲る道も考えてくれてもいいのになぁ」

「旦那さまッ!」

「冗談だ」

「旦那様が仰ると、冗談に聞こえませんね」

「そうか?」

すら惚けたが、実の所半分本気で半分冗談だった。
ハンデルは本当に我が領地や領民のことを思い、良くやってくれているとは思うが、最近色々と口を挟まれ、煙たく感じているのも事実だった。
何より許せないのは、奴を気に掛けていなければ、マリーと会う事もままならない。
この現状が本当に迷惑極まりない状況だった。

「ああ、早くマリーに会いたい……」

目を瞑れば……、いや瞑らなくても、マリーの甘美な姿が今も思い出され、私を捉えて離さない。

「旦那様ッ」

「ああ、分かってる」

苦笑いを浮かべそう告げると、私は領主としての役割の為に足を向け、頭を切り替えた。


リレントの指示の許、その他にも災害救護者やその者等を受け入れてくれている支援施設や教会を回り、本邸に報告に訪れたハンデルを頷かせ、別邸に着いたのは正午を大きく回った時刻だった。

昼食はマリーと共に取りたいと思っていたが、支援先で軽く昼食を頂く事になり既にティータイムの時刻だ。
だが、時間的にゆっくり茶を楽しんでいる余裕はない。
早くマス二エラに向けて出立しなければ、本当に到着は深夜になってしまいそうだった。

馬車を降りるとリレントに後を任せ、急いで邸の中へと足を踏み入れた。

「ただいま、マリー今帰ったよ」

満面の笑みを浮かべ、扉を開け放った途端。

(バチ――ンッ!!)

目の前を風が切り、頬を何かが霞めた……。

「っッ……」

頬を、何者かに打たれたのか?
口の中に、微かに血の味が広がっている。

「キャーッ、よっ、ヨハンナさんッ!!」

マリーの叫び声の先に見えるのは、目の前にいきり立つヨハンナの姿。

マリーは柱に手を添えて立っていたが、ヨハンナを止めようとしたのか、手を離した拍子に、如何したのか? 足をふらつかせ、よろよろとその場に座り込んでしまった。

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~ Comment ~

NoTitle 

色ボケ過ぎずに働け、アレク。
(;一_一)

ちょっとアレクの頭がお花畑すぎて、それ以外に言えることがないじぇ。。。
(*´ω`)

LandM様 

今晩は。

本当に色ボケしてますね。うん。
側に優秀な従者と執事がいて本当に良かったです(笑)

そしてお花畑すぎる彼を正す?為にも、ヨハンナさんのような乳母がいて良かったですね^^

もっと叩いてやれ!ヨハンナ♪(笑)

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