パウリンに導かれて

パウリンに導かれて《第8章1》

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翌日、朝食を終えるとフリードルから部屋へと呼ばれた。

「1階の階段脇にある休憩室の奥に倉庫がある。扉の左側の壁を少し押して横に滑らせると、壁が開く仕組みになっている。人目に付き難い場所だがくれぐれも入る時は気をつけてくれ」

昨日話していた『例の部屋』への入り方の説明を受けた。

「集団で入る訳にはいかない。人目もあるから様子を伺いながら個別に入室してくれ。サビエル、後は頼んだぞ」

「はい。お任せください」

サビエルの肩を軽く叩きながら、そう告げるとフリードルは先に用があるからと、その横をすり抜けるように出て行った。

ローレライの護衛には、今日はサビエルが付いてくれていて、これから順に皆が階段下の奥へと入るタイミング等を判断し、見届けてもらう事になっている。
休憩室にも別の仲間が配置され、他の客の動向を見守りながら、その者はサビエルとも連携して職務に当たってくれるそうだ。中々の厳重態勢を敷いている様子に、これから成し遂げなくてはならないだろう事の重大さを、ローレライはひしひしと感じていた。

入る順番は最初にローレライ、その後ルシオン、ランドンと続いて入って行く事になった。
30分後、ローレライはフリードルからの指示通りに、サビエルに見守られながら階段奥へと進んでいく。
言われた通り奥の倉庫の直ぐ側に扉を見つけると、落ち着かない気持ちを押さえ込もうと大きく深呼吸した。
息を詰め、少し押さえながら横に動かしてみるが、ローレライにはそれが上手く出来なかった。

(駄目たわ……)

力加減が悪いのかと、今度は再び両手で真横に引くが、やはり扉はびくともしなかった。
少しため息を漏らし、もう一度試みようと扉に手を添えたその時、内側から急に扉が開けられた。

(えっ?!)

目の前に突如飛び込んで来たのは見知らぬ黒衣の男の姿。
男はローレライに向って口元に人差し指を立てると、腕を掴み中へと引き入れ、直ぐに扉を閉じた。

「ローレライ様ですね。エル様よりお話は伺っております。ようこそ我が支部へ。この階段を下へそのままお進みください」

フリードルが上手く扉を開けられない事を想定していたのか?
他の仲間を配置してくれていたらしい事に感謝した。

ローレライは告げられた通りに石の階段を下へ下へと降りて行った。
すると目の前には全面石畳の広い空間があり、どうやらそこは地下室になっているらしい。
まさか、このようにごく普通の宿屋の下に、この様な空間が広がっているとは……。

「やあ、ローレライ。大丈夫だったようだね」

ローレライが到着した事に気付いたフリードルが、自分の場所を示すように片手をあげて合図する。
その姿に何処か安心したローレライは小さく息を吐き出すと、胸を撫ぜ下ろした。
フリードルの側にはシドやゼロ以外に黒衣の男が数人いた。
ローレライの後ろからは続いてルシオンやランドンが下りて来て、最後にサビエルと扉の側に居た黒衣の男が降りて来た。

「ここが昨日言っていた『例の部屋』だ。ここは、我々“ブラックナイト”の地下支部の一つでもある」

フリードルが重々しく言い放つ。

「ブラック……ナイト?!」

「簡単に言えば、ブラックナイトは元王宮騎士の集まりで、現王に対し異議を唱え、反旗を翻す、言わば反逆集団だ」

鋭い目つきをしたゼロが、無表情に淡々とそう語る。

「反逆集団だなんて……」

「怖いか?」

「……いいえ」

ローレライは、大きく首を横に振った。

「当初は私だけでも片付けられると思っていたから手助けを名乗り出たつもりだったんだけど、如何やらローレライを取り巻く状況は結構複雑らしい事が分かって来て、私の判断だけでこちらに迎え入れるべきかは正直迷う所があったのは事実だ。けれど今ではそれで良かったと思っている。あの仔馬の存在は、それだけこの国にとって重要なものだから……」

「そんなに?!」

「ああ。でも探し出す事で更に、ローレライの身を危険にさらす恐れも出て来たのは事実だ。だからこう言う状況になってしまったんだが……、身の安全は約束する。我等は王に逆らっている集団だが、そこにローレライたちを巻き込む気は一切ない。何かあれば我等に捕らえられた捕虜として、対応させて貰うから安心してくれ」

フリードルにとって、ローレライたちを巻き込むのはとても不本意な事だった。

「そんな事、……それこそ余計なお世話だわ!」

「ローレライ?……」

「多くの領民を苦しめているのは、王とその周囲の身勝手な者達のせいだとお父様が言っていたわ。私、お父様がなさろうとしていた事を知っていの。その事を誇りに思うわ! だから私達は大丈夫。それはきっとお兄様も同じだわ。だからフリード……、いえエル、そして皆さん、私達の心配は無用です!」

側で見ていたルシオンは、妹の様子に少したじろいでいたが、側に居たランドンは頼もし気な様子だった。

ローレライが宣言した言葉に、多くの者は感嘆していた。

「へぇー、思ったよりも、結構しっかりしているんだな……」

シドも、よりローレライへの関心は高まっているように感じられる。

「我等の本来の目的は、王に反旗を翻す事ではない。結果としてそうなり得る可能性があるだけだ。我等が内に秘めたる真意については、今明かす事は出来ないが、今回仔馬窃盗の件でだけはこちらの支部が全面協力する事を約束する。既に数名の者を調査にも向かわせている。当初私が示唆した市の競売の件も多くはこちらで事前調査するが、何分人手が足りない。競売は9日後に行われる事が決定している。危険の少ない聞き取り調査の協力はお願いする事になると思うが、先ずローレライはゼロから短剣の使い方の指導を受けてくれ。他の者はこちらに」

そう告げるとルシオンとランドンを引き連れて、フリードルは他の者達と暖炉の傍に置かれた座卓の前に集合した。

一方のローレライは、ゼロの前で固くなりながらも言われた後を付いて行き、反対側の一角に移動した。

「私が教える以上半端は無しだ。やる気が無ければ即刻切り捨てる。良いな!」

「はいッ。 宜しくお願い致します!」

ローレライは深々と頭を下げ、身を引き締める。

壁には大小さまざまな剣が置かれていた。
ゼロはその内の一つに迷わず手を伸ばすと、ローレライへ差し出した。

「この剣がこの中で一番軽い。持ってみろ」

そう言われて手に握りしめ普通に軽く振ってみたのだが……。

「……全然違う。まるでなってない……」

軽く溜息をつかれ、ローレライは慌てて頭を下げた。

「ごめんなさいッ」

「簡単に謝るな!」

そうだった!
ローレライは昨夜フリードル等から言われた事を思い出しながら、最後まで本当に教えて貰えるのだろうか?と少し不安になっていた。

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※この作品は「パウリンの娘」の改稿作品です。

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