ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《162.干 渉2》(アレク視点)

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マリーを母の部屋へと続く居間のソファーへ降ろすと、既に用意されていたのかヨハンナがティーセットを持って入って来た。

「さっ、お嬢様はこちらで、もう少しごゆっくりとなさっていて下さいね」

時刻は丁度ティータイムに良い時間だ。
流石にヨハンナだ。
こう言う所は『気が利いているなぁ』等と思っていれば、徐にマリーの前にだけカップが用意され、茶が注がれた。

「……私のは……、無いのか?」

「ございません!」

「ヨハンナッ」

「こちらのクッキーを是非召し上がってみてください。疲労回復や痛みに良いと言う薬草を練り込んでおりますので、気休めかもしれませんが、少しはお楽になるかもしれませんわ」

「ヨハンナ!」

「旦那様、ゆっくりしていらして宜しいのですか? 早々にマス二エラまで御出立なさるのでしょう? 早くお仕度をなさいませんと出立出来ませんよ」

「仕度、していないのか?」

「私が? 私は今マリエッタ様の侍女ですが?」

「リレントと私は出かけていたんだ。それ位、お前がしてくれても良かったんじゃないのか?」

元来乳母として、リレントと共に私の身の回り世話をしてくれていたヨハンナだ。それ位してくれても罰はあたらないだろうに……。

「はあ?! 満足に歩けもしないお嬢様をお一人にして、この私が本邸まで仕度に出向けるとでもと?」

「いや……そう言う訳では……」

「そう言ってらっしゃるのと同じです!」

「…………」

確かに、それは無理だ……。
私でも、このようなマリーを一人にして等絶対に出かけられはしない。

「だいたい後先も考えずに、……旦那様の不心得な行いに、目が眩む思いですッ」

「いや、私は何も考えていない訳では……。私なりに、これでも色々と考えてだなぁ……」

「考えていたとしても結果がコレでは先が思いやられます! はぁ……、本当に節操のない……」

最後の辺りは小声だったが、ボソリとヨハンナの口から漏れ出た言葉は、私の心にグサリと突き刺さった。
これでも私は私なりにマリーを思い、色々とそれなりの注意をはらい事に及んだつもりだったのだ。
確かに、ヨハンナの指摘とは方向性が違う結果になってしまったが為に、予想外の状況に陥ってしまったかもしれないが……。

「……お前、何もそんな身も蓋も無い言い方をしなくても……」

マリーの視線が気になり、少し遠慮がちに応えれば、再び深いため息をつかれた。

「はぁーっ……。敢て申し上げているんです! ホントにもうッ」

「……済まない……」

「っとに…………」

「…………」

ヨハンナの言う事は最もだ。
私も決して悪気があった訳ではないのだが、こうやって痛々しい姿のマリーを見ていれば、心なしか胸が痛んで来るのは確かだ。
決してマリーを傷つけたい訳では無いのに、これは男の性としか言いようがない。
愛しいと言う思いが、マリーに対する執着心を、より一層強くさせている事は自負していた。
だから確かにマリーが痛みを感じなくなってからは、そんなに長い時間では無かったと思うが、マリーの色香に惑わされ、抑えが利かない行動を取った記憶はある。
最早返す言葉が見つからなかった……。

「……あの、ヨハンナさん。私は大丈夫ですから、アレクシスの荷づくりを手伝ってあげて下さい」

沈黙が気まずい中で、不意に告げられたマリーの言葉。
ああ、私のマリーは如何してこんなに優しいのだろうかッ。

思わず抱きしめたくなり伸ばしかけた腕を、今は流石に不味いかと、必死におさめた。

「お嬢様ッ、ですが……」

「私の方はもう済んでいるのだし……。ねっ?」

「しかし、お嬢様をお一人にさせる訳には……」

うん、確かにそれは不味いだろう。
誰かがマリーの側へはついていてやらなければな。

「そうだな。ならば、私がマリーの側についていよう」

「それこそ有り得ません!」

言うや否や、思いっ切りヨハンナに否定された。

「お前何を言って……。大体マリーは私のッ」

「この様な状況のお嬢様とお二人きりになど、誰がさせられますか!」

「酷い言い草だな。ヨハンナ、お前は私の事を一体何だと思っているんだ?」

「今のお嬢様にとって、一番危険極まりない人物だと思いますが、何か?」

平然とそう言い切るヨハンナの言葉に、一瞬めまいを覚えた。

「……お前……、それは幾らなんでも言い過ぎだろう?!」

「あら、リレントが戻ったみたいですわ」

「また無視か!?」

全く……ッ。

結局、逃げるようにそう言い切ると、いそいそと扉の外へと出て行きかけて、何かを思い出したのかピタリと止まった。
そして振り向きざまにこう告げたのだ。

「ああ、そうでした。今回、マス二エラには私も同行させて頂きますのでそのおつもりでいらしてください」

何だって?!

「おい、ヨハンナ!!」

(バタンッ!!)

名を口にした途端、大きな音を立てて、扉が閉まる音がした。

クソッ……。冗談じゃない!
せっかく馬車の中では、マリーと二人きりで仲睦まじく過ごせると思っていたのに、最悪だ!!

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※12/12 19:33 200文字程加筆しました。内容大きな違いはありせん。

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NoTitle 

アレクは病にかかっているのさ。
恋の病に!!!
(*´ω`)


・・・という前回のコメントと同じくのことを言ってみる。

まずは恋の病を直してからやってきな!!
・・・と私でも言いますね。

LandM様 

今晩は。

ははっ、もうこれはせめて結婚確定するまでは突っ走るでしょうね。ってか、止まれないでしょうね。
でも、結婚決まっても……無理かなぁ。

>まずは恋の病を直してからやってきな!!
・・・と私でも言いますね。

あー…それも如何でしょう?
アレクは一生マリー溺愛でしょうし、まあ表面的なあからさまな態度は流石に何れ落ち着いて行くでしょうが、アレクって自分の子供にもやきもち焼くんじゃないかって気がしてならないのは私だけでしょうか?(笑)

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