ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《164.干 渉4》(アレク視点)

 ←突然、超SS劇場 ~その5~ 不毛な王太子(後編) /『記憶の彼方とその果てに-番外編-』後日談より →パウリンに導かれて《第8章6》
予定より2時間程遅くなったが、計画通り何とかマス二エラに向けて馬車を走らせる事が出来た事は嬉しく思う。嬉しくは思うが……。

「はぁーっ、……何故私がこちら側にッ……」

「いつまでもブツブツと鬱陶しいですよ。全く」

「誰のせいだとッ」

「はあ?!」

愚痴る私にヨハンナがマリーの横で睨みを効かせれば、それを見ていたマリーが少しため息交じりに二人の間を両手で遮ると、口を割って入って来た。

「もう、二人とも止めて! せっかくの馬車の旅が台無しじゃない」

「でも、マリーッ」

「申し訳ありません、お嬢様」

「予定では夜半過ぎまで馬車の中なのでしょう? 途中休憩もするでしょうし、その時に変われば良いじゃない。交代で場所を移りましょう。ね?」

「……マリーがそれで良いのなら、私は構わないが……」

まだまだ言いたい事が私にはあったのだが、マリエッタに諫められ、ヨハンナが謝りの言葉を口にした以上、私がここでこれ以上口を挟むのは無配慮にも思えて来て、しぶしぶ口をつぐんだ。

だが、私の気持ちも分かって欲しかった。
別邸より愛しいマリーを抱き上げて馬車の座席に降ろし、隣に座ろうとした途端。

『邪魔です!』

と、後ろよりいきなり乗り込まれたヨハンナに勢いよく払い除けられ、体制が悪かった事も相まって、少しよろめいた隙にヨハンナにマリーの横に座られてしまったのだ。
勿論私は席を譲る様に進言したのだが『こう言うものは早い者勝ちです!』等と訳のわからぬ事を言い切られ席を譲って貰えず、そのまま諍いを続けていれば今度は『車内の様子が気になって、おちおち馬車を走らせらません!』とリレントに諫められ、結局その場は私が折れる事になったのだ。
だから、少しぐらいぼやきの言葉を口にする位は許されると思うのだが、ヨハンナは依然として私を煙たがっている様子だった。
今の態度等は、とても私の乳母をしていた者とも思えない。
信頼のおける者だから、事が落ち着くまでと言う期間限定でマリーの侍女を急遽お願いしたのだが、今では見事な侍女っぷりだ。
その選択肢が間違っていたとは思わないが、私の事を良く知っているが上の煩わしさは拭い切れない。
そんな我等の渦中に居ると言うのにマリーはと言えば、我等に巻き込まれていると言う事に全く動じる様子を見せない。
既に自身が現在置かれている立場を見極め、私とヨハンナの間に入ると、どちらを立てるでもなく優しい言葉をかけてくれている。

マリーを私の伴侶として望んだのは、家の為でも何の為でも無く、単に私の心が強く求める者だったからに過ぎない。
だが、ここにきて思うのだが、マリーのこう言う所はかつて屋敷を切り盛りしていた頃の母の姿と重なる事がある。
母は諍い事を柔軟な対応で収めるのが得意と思える人だった。
マリーの言葉には、ヨハンナも何か思う所があったのか、その対応に微笑を浮かべていた。

嬉しいと思える程ではないが、先だってハンデルが言っていた私と父の絶好は、やはり意外と似ているのかもしれないと、この時心の何処かで認め始めていた。
以前の私ならば、その事に気付いた時点で煩わしく思えていたのだろうが、最近ではそれもそう悪くは無いと思いはじめていた。
あの頃理解出来なかった父の……、母の死後の無謀とも思える行いや、私への配慮の無い全ての行動も、今ならば少なからず理解出来る気持ちでいる。
これも全てマリーのお蔭だ。

「本当にマリーは凄いよ……」

「えっ? 何が??」

「いや、何でもない」

小首を傾げながら私を見つめるマリーの姿に笑みを零していると、横に座っていたヨハンナも既に心得ているとばかりに、優しい眼差しでゆっくりと頷いた。

休憩にと立ち寄った中継地点となる街では、使いに走らせていたと言う者がリレントを待ち受けていた。
リレントはその者より何やら書状らしき物を受け取ると、何処か誇らしげな様子だった。

「これでこちらの駒が増えました」

疲れの見える様子ながら、とても嬉しそうな表情をみせてた。

軽く夕食を済ませ急ぎ馬車へと乗り込むと、我等は再びマス二エラを目指して出発した。
この頃にはヨハンナの見立て通り、マリーも軽く手を添える程度で馬車の乗り降りも問題無く自身で行えるようになっていた。
今度は座席の配置も快く譲ってくれ、マリーの隣へ座る事が出来た。

「約束は約束です。それにお嬢様もだいぶ回復されましたしね」

マリエッタの事に対しては煙たく思う事もあるヨハンナとの関係だが、それが相手の為であると分かっているから最終的にはいつも納得させられる。

そしてマス二エラの宿に到着したのは予定道理夜半過ぎ。
宿の主人には前金で2倍の宿泊代を既に支払っていると言う事だったが、それが効いたのか主人の対応も終始にこやかだったのだが……。

「では、私達はこちらのお部屋で」

「おいッ、そこは私とマリーが一緒だろう?!」

予約で取れたのは二人部屋二部屋だと聞いていた。てっきりここは私とマリーが一緒の部屋で過ごすとばかり思っていたのだが……。

「何を仰っているのか理解出来ません。ここはお邸では無いのですよ! そう言うデリカシーの無い行いはお控え下さい! さっ、お嬢様」

「えっ、ええ……。では、オヤス……キャッ!」

「まっ、マリー!!」

ガチャリ!!

「……クソぅッ!!」

続くマリーの言葉も躊躇することなく遮ると、ヨハンナは止める間も無い程の素早さでマリーの手を引き部屋の中へと導くと内鍵を素早く掛け、私を締め出した。

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~ Comment ~

NoTitle 

アレクくんへ。

人生は長い。何が起こるかわからないものだ。

スエズ運河を掘る事業を成功させた、フランスの偉人、レセップスは、妻を愛する男であった。

結婚して、子供を五人も作った。

だが、天は非情で、レセップスから愛妻と息子たちを次々と奪った。

妻と死別して十数年後、レセップスはある娘と再婚した。

そしてそれから十五年の間に、

再婚したその妻との間に十二人の子供をもうけたのだ。

世の中にはそういう人もいるのだ。

アレクくん、若いきみにいっておくがほんとうに世の中先は長い。

(笑)。

https://en.wikipedia.org/wiki/Ferdinand_de_Lesseps#Second_marriage_and_issue

NoTitle 

更新、お疲れ様です。
そして改めまして明けましておめでとうございます。
今年も、素敵なお話をどんどんお書きくださいね。


それにしてもアレク、最近マリー欠乏症にもかかっているのか(笑)ってほど、
すぐマリーの近くにいないと気がすまないんですねえ。
ヨハンナさんも最近のアレクのマリーに対する態度を見て、
これ以上アレクに好き勝手されるとマリーの体が持たないと思ってるからこその態度でしょうしね。

それこそ宿でマリーと一緒の部屋にしたら明日の朝はマリー立てなくなってるでしょうし、アレクは狙っているんでしょうけど、結婚式の時にマリーのお腹が大きくなっているのもヨハンナはどうかなと思ってるんでしょうしね。

まあ、アレク、あとでいっぱいマリーを味わえる時は必ず来るからそれまでは落ち着いてってことで。

ポール・ブリッツ様 

今晩は。
アレクへのご教授有り難うございます^^

レセップスって凄いですね。
アレクに聞いて見た所
「私にはマリー以外絶対に有りえない!」
と豪語してました(爆)
どうやら彼には今何を言っても無駄なようです^^;
でも、人生何があるか分かりませんものね~。

いつもコメント有り難うございます。

yama様 

今晩は。
明けましておめでとうございます。
はい、今年も出来る範囲で頑張って行きますのでよろしくお願い致します^^/

アレク、ホントに今はマリー欠乏症なので傍に居たくて仕方がないって感じです。正に溺愛状態。
ヨハンナさんはアレクの様子に危惧してマリーを必死に守ってるって感じですが、実は宿ではアレクは無体な事をする気は更々なかったんですよね。流石に明日は大切な日だし、そこは彼なりに考えてました。ただ、マリーの傍を離れたくないってだけで。でも、そうは思っていても実際一緒に居たらどうなるかは分からない訳で……。ヨハンナさんも結局一番安全策を取ったって感じです(笑)

アレクは狙ってるでしょうね(笑)
デキてたらデキたでヨハンナさんは色々言いそうですけどね。どうなるんでしょうかね?(爆)
まあ、でもアレクは内と外は弁えている人なので、きっとマリーのおじい様の前では頑張ってくれる事と思います。(頑張ってくれないと話が進みません^^;)
って事で、私もアレクを応援してます♪

いつもコメント有り難うございます。

NoTitle 

最大の敵は、恋敵でもなければ、政治でもなくて。
お家の騒動が一番大変なのさ!!
Σ(゚Д゚)

嫁姑問題。
お家騒動。
遺産相続。
戦いとは家の中でも起こるものなのだ!!
(´▽`*)

LandM様 

今日は。

そうそうそう。恋愛における最大の敵は恋敵なんて序の口。
内にあるのさ。内に。

さて、おじい様はどんな人なんでしょうね~。
でも、まあ本人も間を取り持ってもらった口だから、突破口は見つかるかなぁ。それともそう易々とはいかないかな?
でも、リレントが何やらやってくれている様子。
持つべきものは信頼のおける従者(兼側近)ですね。
とにかく頑張って頂きたい限りです♪

いつもコメント有り難うございます。
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