パウリンに導かれて

パウリンに導かれて《第9章1》

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フリードルが地下室でローレライ、ルシオン、ランドン、サビエル等と今日の計画を話している所に、血統馬を持つ屋敷の調査を頼んでいた配下のミゲルが戻って来た。

「では……、ドレアスが見つかったのですか!?」

ローレライは身を乗り出し、声を震わせている。その瞳は心なしか潤んでいた。

「いえ……、まだはっきりした事は……。しかし双子と言われる仔馬がいるのです」

「血統馬で双子とは珍しいな」

「はい。ですが、双子と言いましても特徴が違いすぎているのです。大きさは全く異なり生後二月程の差を感じます。問題とされる一頭は探している仔馬と同時期の生まれた事を感じさせる月例で、見るからにまだ離乳期には程遠い青鹿毛で額に三日月の白斑馬なのですが、もう一頭の仔馬は明らかに離乳期を迎えています。加えてその仔馬が親馬に似た特徴を持つのに反し、その仔馬は全く……。親とされる馬は両馬とも血統馬との事ですが母馬は抜きん出た血統を思わせる特徴は特になく、父馬に関しては白斑馬ですが栗毛で、その両馬から青鹿毛で額に三日月の白斑を持つ仔馬か生まれる事は明らかに異端です。隔世遺伝の観点で考えましても過去に例を見ることが出来ませんでした」

「きっと、ドレアスだわ!」

「しかし、……まさかザンゾール公の屋敷とは……」

王家と深く関わりのあるザンゾール公爵家。
裏から調べる事は何とか叶ったが、正式な証拠でも見つけ出さなければ仔馬に会い確認を取る事も、それ以上の事もほぼ不可能だろう。
フリードルの表情は硬かった。

「やはり、ここはゼロ様にお願いするしか無いのでは?」

「出来ればそれは一番避けたい事なのだろうがな……。だが、この状況では最終的には頼まざるを……」

敢て言葉を濁したが、その情報に確証が持てれば他に打つ手は無いとフリードルは思っていた。

「どう言う事!?」

「ザンゾール公爵家、聞いた事位あるだろう? 先王の弟君だ」

「そ……んな……」

ローレライの顔色はみるみるうちに変わって行く。

(何故そんな方がアドレアを!?)

一体、何の為に……。

「それで、何でそこにゼロが出て来るんだ?」

「その事は、私の口から言える事ではない」

ルシオンの問いに、フリードルはそう答えるしかない状況だった。

暫くすると宿の方とは違う入口から、ゼロとシドが入ってきた。
ローレライは反射的ともいえる素早さで、姿を見つけるや否や駆けて行った。
瞳に涙を浮かべながら……。

「ゼロ!!」

ローレライは躊躇することなくゼロにそのまま突進するように抱きつくと、はらはらと泣き始めてしまった。
ゼロは一瞬だけ、驚いたように表情を覗かせたが、退ける様子はなかった。

「!! ……どうした!?」

無表情を装いつつも一瞬だけ少し驚いた表情をしたゼロだったが、その瞳は普段より柔らかでローレライの頭をクシャクシャと撫ぜた後、軽く手を添えおくと自分を見ろとでも言うように顔を向けさせた。

「何があった!? 話してみろ」

ローレライを覗き込み、優しく尋ねている。
その姿には周囲の者が今までに見て来たものとは全く異なる甘さが漂っており、二人の醸し出す空気に誰もが感嘆した。

(これは……、妹に対する反応じゃないだろ!?)

シドは半ば呆れたような眼差しで、ため息交じりに二人を見つめていた。

「ドレアスを助けて! お願い……、ゼロにしか頼めない事みたいなの……」

涙ながらにローレライがゼロに懇願した。

「どう言う事だ!?」

柔らかだったゼロの表情が一瞬にして憮然としたものに変わって行った。


フリードルはミゲルからの報告を主ゼロとシドに話すと返答を待った。

「そう言う事ならば直ぐには動けないにしても、私が行かねばならないだろうな。先ずは裏付けが必要だ。ザンドール公の屋敷の周囲に人を増やせ。監視が必要なのはおそらく息子のライサンドの方だ。詳細が分かり次第、随時報告しろ!」

「招致致しました!」

そう告げるとフリードルとシドは黒衣の男たちを集めて、何やら難しい表情をしながら話しを始めた。

「必ず仔馬は見つけて連れ戻してやる! だが、確証も持てぬまま無暗には動けない。とにかく今日は市だ。先ずはそちらを調べてみて、それからだ」

「……はい……」

ゼロはおそらくは息子のライサンドが裏で何かを画策していると確信にも似た想いにを持っていた。
だが、表立って動くには、何においても証拠が必要となる。
仔馬と一緒に盗まれた子山羊だけでも今日の競売で出てくれば、他の手掛かりが掴める好機になるかもしれないが、状況から見てそれは簡単にはいかなそうだ。
だが、競売リストは揃っている。 
普通登録番号しか公開されないが、そこは皆が調べて売主の名前と所在地が明記されていた。
後は馬よりも成長の早い子山羊の現段階での様子を、ローレライが何処まで把握し認識できるかが大きな問題だった。


ローレライの落ち着く頃合いを見計らい、その後揃った他の者からの情報も集計してリストを作り皆で回覧を始めた。
だが、リストの中にはブラックナイトのどの者の記憶にも触れられる人物の名はいなかったようで、視線も止まる事無く通り過ぎていくだけだった。

「やはり無理そうだな……」

メンバー最後となるフリードルから手からランドンへとリストを手渡された時にゼロがそう告げた。
だが皆が軽く項垂れため息を漏らした途端、そのリストを目にしていた者の視線が一定の場所を捉えながら停止した。

「この子山羊を2頭出品している36番ザグソン・ブリムナード(委託者)とありますが、彼の所在地は本当にルマシードですか? ザンゾール公の領地の者ではありませんか?」

ランドンがさらりとそう告げた。

「管理事務所から入手した情報を基に調査したが皆本人と所在地の確認は出来たぞ」

「お前……、何故そんな事を!?」

「我等の調査が間違っていると言いたいのか?」

ランドンに対し、若い者達が口ぐちで疑問に満ちた声をあげ始めた。

「いえ。ですが、出品者と確認元双方が故意に地名を偽っていれば話は別ですよね?」

「偽装か……?」

ゼロが一言そう告げた時、皆が一瞬にして静まり返った。
確かに双方が偽っていれば厳密な資料にはならないが、密売者が介入している事もある為主催側もある程度のそこは気を配っている筈だ。

「はい」

(まさかとは思うが、彼は何か知っているのか? ……何者なのだ?!)

「何故そう思うのか理由を聞こうか」

ゼロは疑心に満ちた眼差しでランドンを見据えながら、重々しい口調でそう告げた。

「はい。同姓同名かもしれませんが私の生まれ育った町に、ザグソン・ブリムナードと言う者農場経営者がおりました。それに、ブリムナードと言う性はルマシードらしくないと思いまして……」

彼の言葉に、皆が一斉にしてざわつき始めた。

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~ Comment ~

NoTitle 

女の涙も武器か・・・。
・・・とローレライが泣いているシーンをみて思ってしまった。
本人は当たり前ですが、武器と思っていないのですが。
こういうところも人を惹きつける要素なのだなあ。。。
・・・と思いますね。

LandM様 

今日は。

確かに^^
本当に毛嫌いしているだけの相手ならただ、ウザいと思うだけの筈ですが(普段のゼロなら絶対に女に対してはそう)、そう思っていない様子のようなので、その時点でもうこの女の武器は只今発動中ですね(笑)
勿論ローレライはそんな事微塵も思っていません。
良かった、人を惹きつけられて♪

いつもコメント有り難うございます。
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