離婚しましょう? 旦那様ッ

離婚しましょう? 旦那様ッ 番外編 ~出会い(前編)~

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寝室の長椅子に座り、実家から持ち寄った古い箱を手にして中の帽子を眺めていた私に、旦那様は寄り添いこう告げた。

「可愛い帽子だな。子供の頃のお気に入りだったのか?」

如何やら旦那様は、この帽子に記憶がないらしい。

「覚えていませんか? この帽子」

「えっ?」


旦那様との私の記憶中に残る初めての出会いは、私の4歳の誕生日を祝うガーデンパーティの席だった。

『お誕生日おめでとう、シルビア』

『おめでとうございます、シルビア様』

『ありがとうございますぅ』

『まあ、本当に可愛らしいお嬢様ですこと』

誕生日を祝い、私が皆にもてはやされていたのは最初の方ばかりで、皆々からプレゼントを受け取り、本格的な料理が並べられる頃には、大人たちは皆お喋りに夢中になっていて、私の側には何時も傍にいてくれる乳母だけになっていた。

『お嬢様はもう食べられませんの?』

『もう、お腹いっぱい。おかーさまは?』

『あちらで、今日お見えの方々とお話しされていますよ』

『おとーさまは?』

『あちらに……』

お父様も、グラスに入ったワインを片手に、知らない大人たちと話をされていた……。
二人とも、私の知らない大人たちと話ばかりされていて、全然側に居てくれず、当時の私は退屈で仕方なく思っていた。

『つまんない……』

『あっ、お嬢様ッ!』

私は大人たちの間をすり抜けて、何時も良く両親と散歩に出かける屋敷の敷地内にかかる水辺の傍まで駆けて行った。
そこには良く白くて大きな水鳥が居て、それを眺めて過ごすのがとても私は好きだったのだ。

『あっ、すこいっ、 ヘレン見て。今日は鳥さんたくさんいるよ』

『はあ、はあ、はあ……。もう、お嬢様、早すぎです。はぁ……』

乳母は私について来るのがやっとの様だった。

『白い鳥さん、綺麗ねー。仲良しで、おとーさまと、おかーさまみたい』

『そうですわね。あれは番のようですからね』

目を向けたそこには、まるでお辞儀でもしているように向い合せになっている2羽の鳥。

『つがい?』

『シルビアお嬢様のご両親のようなものですよ』

『なら、こどもは?』

『そうですね。来年には新しい家族を連れて来てくれるかもしれませんね』

『たのしみぃ』

そんな会話をしていた時だった。
突如突風が吹き、誕生日プレゼントにと両親から送られた、花をあしらった白い帽子が飛ばされてしまったのだ。

『あっ、わたしのぼうしぃ!』

私は帽子を追いかけて、河辺へと飛び出ると、その声に驚いたのか、水鳥たちが一斉に飛び立ってしまった。

『あん、鳥さんたち、行かないでぇッ!』

『あっ、お嬢様、危険ですッ!!』

飛ばされた帽子に夢中になり、続いて飛び立つ鳥に目を奪われた私は、ひたすらに追い続け見つめて走りだした。それ以外のものが見えなくなってしまっていて、結果……。川の中へと落ちてしまった。

“バッ、シャーン!!” 

『キャーッ!! お嬢様――っ!!!!』

『だっ、誰か来て! お嬢様がッ!!』

心配し、私の名を叫びながら必死に流される私を、体半分浸かりながら追いかけるて来る乳母の声。かすかにその声を耳にしながら、私は如何していいのかも分らぬまま、ただもがいていた。

『た……すけ……、ぁっぷ……、ヘレ……ッ』

ただ、苦しくて、苦しくて、なにも考えられなくなっていた時だった……。

『下がって!!!』

“バシャーン!!!!” 

大人の男の人の声がしたかと思うと、続いて大きな水音がした。

『はや……く、ぅっぷ……き……てっ……、ぁっぷ……』

沈みそうになる身体を必死で保ちながら、私はどんどん近付いて来くるその人に、必死に手を伸ばした。
そして、ついにその人は、私を捕まえてくれた。

『大丈夫ですか?! 私に……、掴まれますか?!』

『ケホッ、はぁ……、ケホ、ケホッ! ……(コクリ)』

少し水を飲んでいたので、咳をしながら息を整えつつ、ただ私は必死でその人に頷いた。

必死にしがみ付く私の姿にその人は安心したように目を細めると、ある事に気付いた様だった。

『ん? 良かった。何とか足がつくな……』

私を抱え直すとその人は、川岸に向かっていてゆっくりと歩き出した。
逞しい腕に抱えられ、助かった事に安心していると、私は自分が何故濡れてしまったかと言う事をふいに思い出してしまった。
その事を口に出来たのは、純粋にまだ私が何も考える事の出来ない子供だったから……。

『ぼうし……』

『えっ?』

『流れちゃった……。プレゼントのぼうしなの……』

『ご両親からの?』

『うん』

『ああ……』

遠目に流れて行く帽子を二人で眺めながら、私達は何とか川岸に無事辿り着いた。

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