離婚しましょう? 旦那様ッ

離婚しましょう? 旦那様ッ 番外編 ~出会い(後編)~

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『ああ、お嬢様、お嬢様ッ。お怪我は? 大丈夫ですか?!』

涙を流しながら、私を心配する乳母の姿。

『……すこし、お水のんじゃった……』

『ああ、直ぐに医術師に見て頂きましょうね?』

『意識もしっかりしているし、おそらく問題は無いと思いますが、小さい御子ですから直ぐに身体を温めて差し上げないと……』

そう告げると私を助けてくれた人は、水に浸かる前に投げ捨てたらしい自らの上着を私に掛け、微笑んだ。
たおやかな金髪に、深く青色に澄んだ瞳。それはまるで絵本の中に出てくる者のように美しく思えた。

『王子さま……なの?』

『いえ、私は……』

少し苦笑いを漏らした後に、その人は名を教えてくれた。

『お父君の友人の息子でスタンベルク・ローゼリアンと言う者です。今日は成人し、邸を離れることになりましたので、その御挨拶ついでにと父と一緒にこちらへ。ですが、知る者も少なく、こちらの庭を散策させて頂いていておりました。まさかこのような場に居合わせるとは夢にも思っておりませんでしたが、良かったです』

『まあ! ローゼリアン伯爵のご子息でしたか! 本当に有難うございました』

『お役に立てて何よりでした』

『直ぐにお召し物の用意をさせて頂きますので、あちらに……』

『いえ、今日は温かいですし、心配は御無用です。それに少々所用も出来ましたので……』

『えっ? ですが……』

『お気遣い無く』

笑顔でそう告げると、その人は川岸沿いを何も気にかける様子も見せずに、濡れた髪を絞り後ろに束ねながら、そのまま去って行った。


そして、後日私宛てに届けられた箱包み。
その中にはあの時流された筈の両親に贈られた帽子が、少し土色に染まっていたが綺麗にされて入っていた。

『すごい! 王子さまじゃなくて、まほうつかいだったの?!』

『さあ、如何でしょうか? ですけれど、スタンベルク様には感謝しなくてはなりませんわ。本当にお優しい方ですわね』

『うん! やさしーひと好きなのぉー』

『まあ、お嬢様ったら』

帽子はその後、流されたと聞いて両親が同じものを再びプレゼントしてくれいた。
当時は再び現れた、失くした筈の帽子の事を、私は魔法で探してくれた等と思っていたのだけれど、少しずつ大きくなって来て、当時きっとあの後帽子を探して出し届けてくれたのだと言う事に気付いた。
あの時、川岸を濡れたまま歩いて行ったのも、きっと帽子を探し出すつもりだったからなのだろう……。
助けてくれた美しい王子様のように思い、初恋にも似た感情を覚えたのは4歳の時、そして届いた帽子は魔法などでは無くてその人が見つけて届けてくれたのだと気付けたのは10歳になってからだった。

以降、父に連れられて出かける先々で、時折目にするようになったその人の騎士たる優美な姿は、私の胸をときめかせるには十分すぎる存在となって行った。


「この帽子はね、私の一番の宝物なの」

「宝物? こんな古い帽子がかい?」

「覚えていない? 私の4歳の誕生日の事……」

「4歳と言う事は13年前だな。私が成人した年か……。その事を思うと、やはりお前との歳の差を感じるな……。少しばかり罪深い気になってしまうが……」

等と、私との歳の差を今となっても少し気になさる旦那様の事を、私が少しだけ可愛いと思っているのは内緒だ。

「そうではなくて、私の誕生日にいらしたでしょ? 旦那様ッ」

「ぅん?! ……ああ、そう言えばシュナイダー侯爵家に出かける両親に、ついでにと言われ付き添わされて挨拶に出かけた事があったなぁ。確かあの時……、あっ……」

「思い出した?」

「そうか! これは、あの時の帽子か?!」

如何やらやっと思い出してくれたようだ。

「私ね、この子が女の子だったら……4歳のお誕生日に、この帽子を贈りたいと思っているの」

片手で、まだ膨らみのないお腹にそっと手を添えて、微笑みかけた。
不思議だけれど、この子を授かったと分かってからは、お腹を手で触れると自然と笑みが零れようになっていた。

「古びた帽子だと、嫌がられないかな?」

「あらそれは有り得ないわ。どの時代でも、女の子にとって王子様は特別なのよ。その私の王子様が授けてくださった帽子だもの。絶対に大丈夫だわ」

「……何だか少しむず痒いな。『王子様』か……」

「ふふっ」

内緒だけれど、今も私にとって旦那様は、ずっと王子様だ。

旦那様は何かあの時の事を思い出したのか? 苦笑いを浮かべていた。

「では、私はせめて娘がお前に似たロマンチストである事を祈るとしよう。そうでなければ恥ずかしすぎる……」

横に座り、お腹に触れる私の手に、そっと自らの手を重ねると、旦那様は私に笑みかけて優しく啄むようなキスをしてくれた。

「幸せです、旦那様」

「私もだ」

何時の日か、必ずこの子に伝えたい。
この私達の、出会いの物語を――。

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~ Comment ~

NoTitle 

むむ。最近アレクンの物語が出てこない。
さては、涼音さんは忙しい時期に入っているな。。。

何はともあれ、私はインフルエンザで39度の熱の状態でコメントしているので、あまり人のことは言えないのですが。。。

それはともかく。

なかなか4歳の頃の記憶で断片的ですけど、残っているのがメインですよね。覚えていないと、伝えてもなかなか伝わらない部分があるのも悲しいところですけど。

LandM様 

今晩は。返信遅くなりました。

はい。恋愛大賞ノミネートに伴い、そちらを重視させて頂いてました。もう激忙しく毎日睡眠3~4時間とれればいい方で頑張ってました。(今日は早く寝る予定)
が、先程終わったので、今度からは各々ローテーションみたいな感じか出来上がった状況でUPして行きたいと思っています。
確かどっちもストックは何話かあったはずなので(見直しを怠ってただけ^^;)近々UPしたいと思っています。

いやぁ、インフルの時は寝ましょう><;
もう熱は下がっているかな?お大事になさってください。

4歳の頃の記憶は、私が結構インパクトのあるものを覚えているのでその設定にしてみました。そうそう覚えてないと伝わらないので悲惨ですからね(笑)

いつもコメント有り難うございます。
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