離婚しましょう? 旦那様ッ

離婚しましょう? 旦那様ッ 番外編 ~不遇なる父(前編)~

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我が最愛の妻との間に生まれた私の可愛い子供達。
結婚後、立て続けに長男のマクシミリアン、長女のエミリア、二男のフリードル、三男のカールストンと子宝に恵まれて、その後パタリと妻に懐妊の兆しも無かったものだから、すっかりもう打ち止めかと思っていた矢先に思いがけず授かったのが三男と10歳違いの末娘のシルビアだった。

シルビアは妻に良く似た柔らかに亜麻色の髪に、亡き母にそっくりの濃い瑠璃色の瞳をした、まるで人形のように可愛い……愛くるしい程の娘で、私は目の中に入れても痛くない程に末の娘を溺愛していた。
娘も私にとても懐いていて『おとーしゃま、おとーしゃま』と、まだ口のまわらない頃から私を慕い、いつも私の姿を見つけては追い駆けて来てくれていた。
可愛い、可愛い、私のシルビア。
そんな娘が……。

『えっ? 川に落ちただと!? だっ、だだだだ大丈夫なのか?!』

娘の大事な誕生日だと言うのに、祝いにと訪れてくれた者への接客を最優先し、娘を乳母に任せきりにしていた事を酷く後悔した。

『はい、ローゼリアン伯爵様のご子息が助けて下さり、大事には至らず本当に安堵いたしました』

『サンベルクの息子がか?! そうか。先程、来月騎士養成舎に入所が決まったと言って挨拶に来てくれたが、さっそく人助けとは見上げた息子だな。年が近ければそう言う者にこそ我が愛しの娘を任せたいものなのに残念だな』

等と娘を助けて貰った話を耳にして快く思い、つい、あの時口から出てしまった言葉がいけなかったのだろうか?
あの後から娘は、友であるサンベルク・ローゼリアン伯の息子の事を……。

『私の王子様なのぉ~』

等と言い始めてしまった。
不覚だ。一生の不覚だ!

『ああ、……私の可愛いシルビアが……』

『まあ、あなた。まだシルビアは4歳ですのよ。助けて下さった殿方を、夢物語の王子様のように思うなんて可愛いじゃありませんか。所詮子供の戯言ですわ。そんなに悩まれなくても……』

等と、妻からも当時は諫められ、私も納得しようと試みた。
だが娘は、やはり……私の娘だったのだ。
ある意味、殊の外思い込みが激しい。おそらく兄妹の中でそう言う点は私に一番似ている気がする。
何を隠そう私が妻を見初めたのは5歳の、父に付き添って出かけた領主会の席でのことだったのだから……。

その後も――。

『お父様、今度行われるお城での演武会、私も是非拝見したいわ。スタンベルク様が出られるらしいの』

『お父様、サンセント公爵家へ招かれたのですって? そちらの警護には、今夜スタンベルク様がいらっしゃるの。私も是非ご一緒に伺いたいわ』

『お父様、スタンベルク様に、こっ、恋人がいらっしゃるって本当ですの?』

『おっ、お父様ぁっ……。ターレン伯爵家からスタンベルク様に縁談のお話が届けられたのだとか。ほっ、本当でしたら私っ……、私ぃ……ううっ』

『お父様、スタンベルク様が……』

もう鬱陶しいから私が所用で出かける際の警護の中にあの者が居ると分かった時は、近頃では率先して娘を連れ出すようにもしていた。縁談話があると聞けば、心痛に咽び泣く娘があまりにも哀れで、即座に調べて裏で握り潰しまくったのは内緒の話だ。勿論私の手の届かない所で進んでいた縁談話も過去にはあったようだが、それは当人が如何言う訳か皆断っていた様だった。
何とか娘の涙を見ないで済むと言う事が、私にとっては一番の幸いだったのだが、ぁっ……。
待・て・よ・!
まさかとは思うが、あの者も当時4歳のシルビアに、深い愛情を覚えて成人する日を待ちわびていると言った事は……。

『お父様、スタンベルク様に貴婦人の恋人がいらっしゃると言うのは本当ですの?』

『相手は既婚者だ。結婚はない! それに独身の男が恋人を持つのは世の常だ』

……無いよな?
確か、今は人妻専科だと聞いた。
その様な者が、このような初心な小娘を相手にするとはとても思えない!
良かった……。

最近、やっとその事に気付き、今まであの者の数々の縁談話を悉く潰しまくって来た事を少しばかり心の中で謝罪した。そして何時の日か訪れるであろう友人の忘れ形見である息子の幸せを願った。

まあそこまで心配せずともあれだけの容姿だ。加えて騎士としても出世街道まっしぐらの様だから、精根尽きるまでには何らかの良縁にも恵まれるだろう。
それに娘も社交界に正式に身を置くようになれば、ゆめゆめしい乙女チックな考えも改めるかもしれない。社交界にはあの者よりも若く有望な美丈夫も沢山居るだろうし、何もすき好んで色男と呼ばれている歳の離れた男の下に嫁ぐ必要も無い訳だし、きっとあの華やかな席で新たな出会いがあれば、直ぐにでも忘れてしまうに違いないと鷹をくくっていたのがそもそもの間違いだったのか?
城でのお披露目が終わった翌日――。


「お父様ッ、これでやっと、私スタンベルク様の許へ嫁げますわね。本当に嬉しゅうございますわ、お父様」

「いや、それは……」

本気で娘はあの今世間で『独身貴族の色男』とさえ言われているあの者と、結婚する気でいるのか?
貴婦人の恋人が多く居る事も知っている筈なのに?
そんな馬鹿な……。

「如何なさったの? お父様。スタンベルク様が、私が成人するまで独身でしたら、嫁がせてやるって仰って下さっていたのに……」

「うっ……」

ああ、娘が幾ら泣いても叫んでも、ここはとっととあの者の縁談を纏めておくべきだったと……。
私は見事に自身で墓穴を掘ってしまった事態を振り返り、酷く後悔した。

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