ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《168.邸 前2》

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アレクシスは、あのロナルドと間違われたと言うのに、祖母に対し怒りを露わにする事もせず、柔らかな笑みを零し、気品に満ちた眼差を向けている。

「ご挨拶が遅くなりました。お初にお目にかかります、夫人。私はアレクシス・ルボル・グラッセと申します。突然の訪問を失礼致します」

そう告げるとアレクシスは深々と頭を下げた。

「グラッセ?! グラッセですって? まさか……あの王室と縁のあると言われている、あのグラッセ侯爵家の方ですの?!」

アレクシスは苦笑いを浮かべている。

「はい、そのグラッセ家です。……私の家の者が、昨日私とマリエッタ嬢との訪問を記した書状を届けていると思うのですが……」

「ええ、書状は主人が受け取りましたが、あの書状はグラッセ家からのものでしたの? 主人からは『マリエッタが連れを伴って来るぞ』とだけしか聞いておりませんでしたので、私はてっきり……」

「ご婚約者との呼び声の高いドワイヤル家のご子息と共に来られると思われていたと言う訳ですね?」

「ええ。そうですわ。ですけれど、その言い方ですと……。あの、ドワイヤル家とのお話は、既に決まっている……のよね?」

祖母はアレクシスの言葉の言い回しに何か違和感を覚えたのか、視線を漂わせながら私の方へと目を向けた。

「私は、このお話を了承した覚えは無いわ!」

はっきりとした口調で私はそう断言した。

「えっ?! そうなの? けれど先日、オセアドから貴女の結婚が決まったとの報告を受けたばかりなのよ。お爺様はこんなに早く嫁に出す必要はまだ無いと仰っていたのだけれど、相手の方もとても良い方で貴女もとっても乗り気だと言うし、おまけに婿養子に来て頂ける良縁だと伺って、ならば良かったと仰って……」

「お爺様、そのまま突っぱねて下されば宜しかったのに!」

「……マリー、少し落ち着いて。おそらく男爵は事情をご存知ない」

父に対する怒りを祖父に向ける私の姿と、アレクシスの私を親しげに呼びながら落ち着かせようとする姿に、祖母は私達二人の顔を交互に見つめながら、何度も瞬きを繰り返し、少し途惑った様子を覗かせていた。

「それは、お父様が勝手に仰っているだけで、私は一切認めていないわ、お婆様!」

「そうなの?!」

「それ所かお父様はそれ以前にあった私への求婚話も私に内緒で断わった上に、私には今回の話も既に決まった事だからと言うだけの決定報告。私の気持ちなんて全く無視だったんだから!!」

「まあ……如何しましょうマリエッタ。けれどオセアドは……」

「お父様が何を仰ったのかは知らないけれど、私はその事が原因で邸を出たの。お父様が、ロナルドとの結婚を強要し続けようとする限り、私はマニエールの邸に戻るつもりは無いわ! ……けれどお爺様が、アレクシスの事は何ひとつ仰っていらっしゃらなかったなんて……」

「ええ、それは……。昨夜は少し何やら考え込んでいらっしゃるご様子だったけれど、今朝になって急に『連れの者に会う気は無い。友人としてならば話位聞いてやっても良いが……』等と、訳の分からない事を仰るから、てっきり私はやはりお連れのご子息に年甲斐も無く焼きもちでも焼いていらっしゃるのかと思っていたから、ここは無視して会わせる気ではあったのだけれど……」

「是非そうして、お婆様! アレクシスとお爺様を会わせて!!」

とにかく祖父に会って貰わなくては話が進まない。私は何としてもアレクシスに祖父と会って欲しくて祖母に懇願した。

「それはかまわないけれど……」

「本当に?! 有難うお婆様ッ!」

私は喜び勇んで祖母に飛びついた。すると……。

「いや、それでは駄目だ、マリエッタ」

アレクシスに止められた。

「如何して?!」

「どの様な言われ方をしているかは分りませんが、うちの者から私が『マリエッタ嬢と同行する』と聞いた時点で、あの男爵であればある程度の事は推察御出来になる方だと思います。ですが現段階ではどうやら私に良い印象は持たれていない。現男爵が私とマリエッタ嬢との関係性をどの様にお話になっているかは分りませんが、ならばここで下手な細工はしない方が良い。更にきっと男爵の煽りをかう。そうではありませんか? 夫人」

「……そうね。そのお話しだと、きっとそうだと思いますわ。私も……」

「もう、信じられないわ!!」

祖父は、結婚相手では無く、二人の事を賛成してくれるつもりは無いらしい。

「友人として……、ですか……」

アレクシスの表情が目に見えて大きく揺らいでいた。今の言葉に、前途多難だと思っているに違いない。
それなのに如何したのか?
アレクシスは祖母の言葉に、かすかに笑みを浮かべている……ような?

「アレク……シス?」

今日の目的は婚約申請書に記入して貰う事だ。その為だけに訪れたと言うのに、アレクシスは何を思っているのか??

想像を超えたアレクシスの反応に、私は戸惑いを覚えた。

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~ Comment ~

NoTitle 

更新、お疲れ様です。

続きをずっと待っていたので嬉しいです。
感想は書いてませんが他の2作も楽しんで読んでいます。
私生活始め、トラブルもあるでしょうが、楽しみにしてますからね。


マリーの祖父にはまだ情報が届いていないのか、
それともある程度さっしてあえて試練のようなものを与えているのか。
アレクが何か案を思いついたのか、それとももう何かをしているのか。
こういう時のアレクは頼りになるんですけどねえ。
いつ色ボケモードに逆戻りするのかな(笑)

yama様 

今晩は。お久しぶりです。

他の2作も読んで頂いてるとの事で、有り難うございます。とっても嬉しいです^^
古いPCはついに今日修理に出してしまったので、もう頼りはこのおニューPCのみ!(笑)
かなり使いにくいですが^^;何とか頑張って慣れていきたいと思っています^^

おお!流石アレクのことを分かっていらっしゃる^^
次の「ずっと~」の更新は他の作品の更新で、まだ先になりますが、引き続き楽しんでお読みいただければ幸いです。

いつもコメント有り難うございます。

NoTitle 

今回はアレクがエロボケ色モードにならなかった!!??
Σ(゚Д゚)

後は家族との折り合いがどうなるかですね。
当人同士は大丈夫ですけど、
祖父とか他の人が色々注文をつけてくるのかな?

LandM様 

今日は。

はい、今回は色ボケモードではないですね。
切れ者のデキる男のアレクの登場です。
やっぱりこういう重要な局面で色ボケは流石に頂けないと言うことで、彼もそこは分かっています(笑)

そうそうこれからの難関はお爺様との折り合いとなりますが、上手く行きますかね?(笑)

いつもコメント有り難うございます。
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