パウリンに導かれて

パウリンに導かれて《第9章3》

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最後にその場に残ったシドが、その後のランドンの処遇を任された。
済まなそうな眼差しでランドンを見つめている。

「すまんな。私もお前に害はないと思っているが一応な。既にバラサインには人をやった。2、3日もあれば調べて戻って来れるだろう。それまでここで我慢してくれ」

ランドンは自室に連れ戻され、扉の前には黒衣の男が置かれている。
確かな証拠も無くブラックナイトの面々が調べた情報に異議を唱えた上に、己の罪に問われても仕方のない過去まで洗い浚い告白したのだ。
現状において拘束されるのは仕方のない事だった。

「いえ。当然の事です。その代りルシオン様の事、宜しくお願いします。軽んじて無茶な事はなさいませんが、色々な事に興味がおありで目が離せない方ですから」

「分かった。お前が自由になるまで、俺が責任をもってルシオンは警護する」

「お願い致します」

ランドンは深々と頭を下げた。


ローレライは兄の部屋へ入り浸っていた。
ずっと我が家へ来る以前の事を話すことが無かったランドン。
何かあるだろうとは薄々思っていたが、兄と二人でランドンから話してくれるようになるまでこちらから聞くのは止そうと決めていた。

傷が癒えてからも、最初はあまり話す事が無かったランドン。
だから時間がある時に兄と二人で連れ出し、良く草原に行ったり、買い物に出かけたり、馬の世話も一緒にさせた。
すると少しずつ心を開いて来るようになり、今ではローレライにとって二人目の兄のような大切な存在となっていた。

「ゼロも酷いわ。ランドンを疑うなんて。きっとランドンは嘘なんてついていないわ!」

「疑っている訳では無いさ。ただ他の者の手前、きちんとランドンは無害だと言う証明をしたかったんだと思うよ。口ぶりは分かってくれていた感じだったし」

「だったら拘束までする必要ないじゃない!」

「こういう場合はそう言うものなんだって」

感情的になっているローレライよりルシオンの方が冷静だった。
いつもはランドンが居たから少しくらい無謀な行動も取れたルシオンだっちたが、今自分まで暴走してしまったら止めてくれる者は居ない。
今まで自分が伸び伸びとしていられたのはランドンのお蔭でもあるのだと、ルシオンはその事をしみじみと思い噛みしめていた。


正午過ぎ、一同はランドンと監視の者を残し市へと出かけた。
午後2時から市の一角で動物たちの競売が行われる事になっているからだ。
仮設テントの前に設けられた特設の小さい馬場の柵前には、既に数名の仲立人の姿があった。
数名の者が話を聞きに回っている。
ゼロは購買希望者を装い仮名で事前に山羊と馬の登録を済ませていた。服装も皆、その場にいて目立たぬ簡素なものに変わっている。
時刻が近づいてくると、馬場の周りには多くの人が集りはじめた。

競売開始の鐘が鳴ると最初に豚の競りが開始された。
続いて牛、羊、山羊等の競が行われ最後が馬となる予定になっていた。
動物たちは次々と落札されて行き、いよいよ次が山羊となった。
進行役の者によって山羊の競売が開始される。

「次は、登録番号36番です」

出て来たのは親山羊6頭と、2頭の子山羊だった。
子山羊の数は屋敷から盗まれた数とも一致する。

「どうだ?」

「似ているけれど、抱き上げてしっかり確認しない事には、はっきりとは……」

「そうか……」

ゼロも一応競りには参加しているように見せかけていたが、落札はしなかった。
落札するのは容易な事だが、それによってみすみす素性をばらして相手の警戒心を煽る必要も無い。
結局122番の者と245番の者が落札し、ゼロが合図をすると仲間が2名ずつ、それぞれの者の尾行に就いた。
ゼロとローレライは最後まで競売に参加したが、馬の競りには結局ドレアスらしき仔馬は見つけられず、バラサインで見つかったと言う仔馬に趣を置く事にした。

「売人との直接交渉は禁じられている。だから買い手側は追跡で判明出来ても売人の特定は難しいが、競りが成立した以上管理詰所に必ず金を受け取りに来るはずだ」

「そうですね。ですが、どの者がランドンの言う36番の者なのか……」

ゼロはフリードルと今後の方針について論じていた。
契約は通常書面で行うのが通例の為、顔を認識するべく手段は無い。
集めた情報を手に口頭で問い確認をするか、或いは第三者となる面識ある人物を探し出し引き合わせ確認をさせるか否かしか無い。だが人物が絞れない以上、どちらにしても難しい話だ。

「ランドンを連れて来ればいいじゃん」

不意に口から零れたルシオンの言葉に二人の視線が大きく揺らいだ。
確かにそれが一番合法的な手段ではあるが、今の状況でランドンを安易に連れ出す事は戸惑われる事でもあった為、その考えを敢て二人とも口にはしなかったのだ。
こう言う場合、不信的人物とされる者の情報に趣を置く事はタブーとされている。
勿論、ゼロもフリードルもシドにおいてもランドンがきな臭いとは思ってはいない。だが、調べを行っている現段階で安易に連れ出せば、下の者に示しがつかない。自身が信じている者であれば誰であれ連れ出しても良いと言う事になってしまう。
道理が伴わないものを認めるものでは無いとゼロは今まで教えて来ていた。
それでも状況によってはルシオンに協力を要請する事も有り得ない話ではないが、その場合は容疑が晴れるか、或いはブラックナイトの規約でも上層部全員の了承がなければ動きが取れない事だった。
直ぐに身動きの取れない状況を疎ましく思いながらも、ゼロは今直ちにしなければならない事に趣を置いた。

「ランドンの事はまた後程考えることにして、先ずは122番と245番の落札者に事情を話して協力を仰ぎましょう。出来ればローレライに面通しもさせて……。どちらかでも近くで観察でき、盗まれた子山羊だと分かれば、他の解決策も見出せるかもしれませんし」

「そうだな」

フリードルは主であるゼロの了承を得ると、配下の者達との合流場所へと急いだ。

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