離婚しましょう? 旦那様ッ

離婚しましょう? 旦那様ッ 番外編 ~不遇なる父(後編)~

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ああ、何と言う不遇な夢を見ていたのだろうか……。

横になっていたソファーから起き上がろうと、上体を起こしかけた途端。

「イッ!……」

側頭部を手で押さえてみたら、小さな瘤が出来ていた。

「ああ、お父様ッ、良かったですわ。お目覚めになられて……。私、本当に心配致しましたのよ」

瞳をウルウルさせながら、私を覗き込む愛しい娘の姿……。

「……シルビア……」

「急に倒れられるなんて、初めての事でしたから……。医術師に来て頂きましたけれど、瘤は出来てますけれど、何の異常も見当たらず、ただ眠っておられるだけのようだと仰られて……。状態から見て、あと考えられるとすれば何か心意的な負担による一時的なショック症状ではないかなんて仰ってお出でだったのですけれど、何かお父様は心配事がお有りですの?」

心配事が、有るかだと!?
有りも有り、大有りだ!!

「……ああ……」

私は打った頭を抱えながら、深いため息を一つ零した。

「お父……様?」

考えたくは無いッ、考えたくはないが……。

「……もしかして……、いや、もしかしなくても、あれは……夢ではなかったのだな……」

「えっ?!」


「……そんなに、あの者が良いのか?……」

「そんなにって……」

「あの者以外にも、若くて有望な男はごまんといるぞ。何もあんな、顔だけの歳の離れた女ったらしの男でなくとも……」

「お父様! 今更何を仰っていらっしゃるの?!」

「……お前にはまだ言っていなかったが、実の所、もうずいぶん以前より他に縁談の話も来ているのだ」

「そんな……。そんなの関係ありませんわ! 私が求めているのは、ずっと以前よりスタンベルク様だけですものッ!!」

「だが、結婚と言うものは一人では出来んのだ。その求婚者の中に、スタンベルク・ローゼリアンと言う者の名は無い」

「……うそ……。だって、ずっとお父様は任せておけって仰って……ッ」

「あの者に、仕事以外での実直さが少しでも備わっていれば、百歩譲って認めてやっても良い。……だが、今のあの者には無理だ! 良いか? 週に三人の熟女が相手なのだぞ! 普通じゃない。あいつは根っからの遊び人だ!」

「そんなッ……。でも、でも……、ですけれど……」

「お前は、あの者の事を夢物語に出てくるような王子様のように思っている様だが、それはまだ夢から覚めていないだけだ。現実を直視しなさい。スタンベルク・ローゼリアンと言う者は、お前が手におえるような男では無い!」

「そんな事ありません! 私、スタンベルク様の為でしたら何でもできます! ですからさっ、三人の熟女の変わりだって、やって見せます!!」

「それは無理と言うものだ。出来るものかッ、話にならんな!」

私はそのまま起き上がると、初めて溺愛する娘の話を無視し、席を立った。

「お父様ッ!!」

“バタン!”

このままつらつらと話していても、結局話は堂々巡りになるに違いない。
ならば聞かない方が良い。

だが……。
ああ、辛いッ。
私は愛するシルビアに何と言う仕打ちをしてしまったのだろうか?!
けれど、これも娘の為なのだ!
ここでまたおざなりに娘の言いなりになり全てを認めてしまい流されては、それこそ娘の為にはならないのだから……。

そう思い、断腸の気持ちで娘を突き放したと言うのに、娘はその事を理解してくれるどころか、その日の夕方出仕し、夜勤が明けての翌日、職務を終えて帰宅した私に告げられたのは、予想を遥かに超える娘の行動だった……。


「えっ? つ……、妻と一緒に、尼僧院へ……、入った……だと?!」

「はい……」

執事の言葉に我が耳を疑った。
何故、妻まで一緒なのか?!

「はい。お止めしたのですがこのままでは、他所に嫁がされるに違いないからと……。ならば、尼となって、身の内でずっとスタンベルク様を思い暮らすのだと……。奥様も、旦那様のお気持ちは理解出来ると仰りながらも、今ここで反対した所で火に油を注ぐだけだからと仰って……、とりあえず今はお嬢様に協力すると……」

「…………」

参った……。

結果、夜勤明けの回らぬ頭で妻とシルビアの入ったと言う尼僧院を探し出し、とりあえず顔を出してみた。
だが殿方の入室は禁じられていると最初から断られ、ならば二人に面会をと申し出るも用件は伺うが、それも拒否された。
ただ、正式にまだ誓いは立てていないと言う事だったので、急ぎ何とかするからと伝言だけは告げて貰った。


そして尼僧院に入った二人が私の下に戻って来たのは、それから二月後。
何とかあの後、スタンベルクを呼び止め説き伏せて、陛下より頂いた婚約申請受理証を手にしてからだった。


愛する我が子を、毒牙に曝されると分かっていながらも、抗える事の出来ない父の気持ちを、誰が理解してくれるのだろうか?

ただ、今となっては……。
あのロクでも無い女ったらしの色男に、娘の真なる想いが伝わる事を祈るほかない。

だが、これだけは言っておく。

『娘を不幸にしたら許さないからな!!!』

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~ Comment ~

NoTitle 

恋は盲目と言おうか。。。
(;一_一)

いや、周りが見えてない分、やっぱり幸せなのかな。うん。

離婚するのも一つの幸せさ~~!!
なんて話には涼音さんの話じゃならないな。
うん。

どう戻っていくのか楽しみでもあります。
戻る・・・というか再構築するのかが楽しみかな。

LandM 様 

今日は。

正にシルビアは恋は盲目ですね^^;

>離婚するのも一つの幸せさ~~!!
って思っているのは親の考えとして表現できても、この話で離婚話はもちろん無いです(笑)。
別の話で考えたら、離婚から始まる新たな出会いがあってのハッピーエンドって設定位かなぁ(結局はどうしてもハッピーエンドから離れられないわ(笑))

この後はシルビア視点の本編をこちらでUP予定です。
いつもコメント有り難うございます。
シルビアの苦悩する思いをより色濃く受け止めて頂ければと思っています。(続編はその後)

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