パウリンに導かれて

パウリンに導かれて《第9章4》

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フリードルの許に尾行についている者達からそれぞれ連絡が入って来た。
122番の者は無理だったが245番の者とは話がつき、この後仔山羊と会える事になった。
落札者は隣町の者だった。

「突然こんなお願いをしてしまって申し訳ありません」

ローレライはゼロと二人で仔山羊に会いに裏の引取場へ来ていた。

「いいえ。見てやって下さい。山羊の好きな方は大歓迎ですよ。うちの子供達もお嬢さんのように本当に山羊が大好きなんですよ。ですが先頃亡くなってしまって……。とても悲しんでいたんです。それで亡くなった山羊がユリスって言うんですが、そのユリスに似た山羊をずっと探していて、今まで見つけられなかったんですが、今回やっと出会えたんですよ!」

主人は声を弾ませて、とても嬉しそうに落札の話をする。
優しそうな人物だ。

ローレライは複雑な心境だった。
腹部に見える特徴ある模様は、間違いなく屋敷に居たジュリエッタと同じものだった。
けれど……。

「本当に可愛い仔山羊だわ。見せて頂いて有難うございます。幸せになるのよ……」

ローレライは紡ぎかけた続く言葉を飲み込むと、仔山羊を撫ぜながら切な気にその手を離した。

「本当に有難うございました」

礼を言い深々と頭を下げると、ローレライは逃げるように足早にその場を立ち去った。

「おい、待て! 違ったのか!?」

急に身をひるがえしたローレライの後を慌てて追いかけたゼロは、その手を捕まえた。
するとローレライは急に立ち止まった。
俯いたまま、自分の問いかけに答える所か顔すら上げようとしないローレライの姿に、ゼロは何故だか苛立ちを覚えた。
肩を掴み無理やり自分の方に振り向かせると、責め立てるように次なる言葉を紡ぎ出す。

「おい、一体どうし……」

だが、口にする言葉の途中で、ローレライの身体が微かに震えている事に気が付いた。
一体ローレライの中で何が起こっているのか?
力なくローレライはゼロの胸にコツンと額を預けると、ハラハラと泣き出してしまった。

「私のジュリエッタなの……でも、そんな事言えない……。あんなに喜んでくれて、子供達も待ってるって……。あの仔はきっと私の許でなくても幸せに暮らせるわ。だからッ……」

「そうか……。おまえは優しいな」

思った言葉をそのまま口にすると、ゼロはいつもの様にポンポンとローレライの頭を優しく叩くと、その胸に抱きしめた。


ゼロはローレライが落ち着くのを待って、直ぐに245番の仔山羊がローレライ屋敷に居たのものだと言う事を直接フリードルへと知らせた。

「直ぐに押さえましょう」

「いや。245番はいい。122番をどうにか押さえられないか? 落札金額の倍額即金で支払ってやれ。それで駄目なら近衛姿で乗り込め! 証拠品として差押えろ!」

「招致致しました」

そう告げるとフリードルは、素早く次の行動へと身を挺した。

「おい、お前どうしたんだ? 事が性急すぎないか!?」

「俺から見ても、ちょっとやりすぎにも思えるんだけど……」

何時もとは違う、何処か冷静さを欠いたかに思えるゼロの行動をシドは訝しげに見つめ、ルシオンは不思議そうな眼差しを送っていた。

「これで、良い」

ゼロはそう告げ、憮然とした態度を崩さない。
その様子を側で見ていたローレライは、自らの為に取ってくれたゼロの行き過ぎるとも思える行動に対し、深々と頭を下げる他なかった。

「迷惑をかけてごめんなさい。そして、有難うございます」

「気にするな」

ローレライに向け言葉を口にした途端、ゼロの表情は明らかに和らいだ。
当然の事をしたまでだとでも言いたそうな口ぶりだった。
互いを見つめ合い、絡まる二人の視線。
その姿をシドは楽しそうに眺めていたが、ルシオンはとても複雑な心境で見つめていた。

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