離婚しましょう? 旦那様ッ

離婚しましょう? 旦那様ッ 本編《シルビア視点》2

 ←お知らせ(紹介) 『愛されすぎて困ってます!?/佐倉紫』  →ずっと心に決めていた《171.邸 内2》(祖父視点)
「お願いです。離婚してください、旦那様ッ」

震える声を押さえるのに必死だった。
今の私には、その言葉以外のものを口にする余裕は何処にもなかった。
それ以上の言葉を紡いでしまったら、泣いてしまう自信があったから……。

「どうしてだ?! 私達は……仲良くやっていけていると……、私は思っていた!」

身を乗り出し、私を問い詰めるようにあたかも何処か苦しげにも感じられるように言葉を紡ぎ出している演技は、並みいるご婦人方を落して来たであろう旦那様には、造作も無い事なのかもしれない。
けれど、私はその様な嘘には全く馴れていない。
だから、もうこれ以上は無理で……。

「私、だって……そうです。ですが、結婚後何故旦那様が週末以外、私と枕を共になさらなかったのか理由が分かってしまった今、私……、耐えられなぃッ。ううっ……」

夜勤明けの週末……。
それが、私達が本当の意味で夫婦として過ごす事の許された全ての時間だった。
それ以外の日は、遅い日もあれば早い日もありといった感じで、帰宅の早い日は、少しは会話をする時間もあったけれど、ここ10日程毎日帰宅も遅く、夕食を一緒にとる事もままならないのが現実だった。
旦那様はいつも仕事が忙しいと仰っていたけれど、きっと忙しいのは仕事だけでは無いのだと言う事位は、幾ら私が世間知らずだと言っても分かっていた。
そう言う方だと分かっていて、書面の上での約束は交わしたけれど、それなりの覚悟の下で嫁いできたはずなのに、面と向かってそう言う場面に直面してみると、如何言う訳かはらはらと涙があふれて来た。

「えっ?!」

旦那様が私の涙で驚いていらっしゃる。
優しいお方……。
旦那様にとってはこんな事位で、まさか私に泣かれるとは夢にも思わなかった……。そんな所なのだろうけれど……。
おそらく旦那様にとっては、私の涙等取るに足らない出来事なのだろうけれど、私にとってはそうでは無い。
どんなに気丈に振る舞っていても、心の内では他の方たちと過ごす時間はあっても、私と過ごす時間は何故こんなにも少ないのか……。理由は分ってはいるけれど、その事が悲しくて、ただ悲しくて……。

「………………」

絶え間なく溢れ続ける私の涙に明らかにドン引きして呆れ返っている様子が伺える。
けれど仕方がない、溢れ出した涙は急には止まれないのだ。
それでも、ああ……。『そんな事ぐらいで……』とか、『鬱陶しい女だ』等とこれ以上思われるのだけは本当に嫌だった。

泣いて、泣いて、段々と泣き疲れて来ると、遂にはその内今まで悩んで来た事も、何だかもう如何でも良く感じられて来て、ならば最後位、胸の奥に仕舞ったままずっと口に出来ず燻ったままでいた想いを……、そして今日ついに決定的となったあの告白の事も話しても良いのではないかとさえ思えるようになって来た。
波風立てずに綺麗に別れてあげようと思っていた考えも、それももう良い……。
最後位、私だって思いの丈を叫んでも良い筈だ!

「……本日、旦那様のお仕事の奥様方との集まりがあり……、そこで、全てを聞きましたの……」

「なっ、何だって?!」

旦那様は、少し声が上ずり反り返りながら、かなり驚きの表情を覗かせていた。


本日参加した、定例とされる騎士夫人等の親睦会なるもので知ってしまった新事実。
この所毎日帰宅が遅いから、それなりの予測はしていたが、突き付けられた現実はそれを遥かに超えていた。

『ローゼリアン団長殿は美丈夫であられるから、今でも若い貴婦人たちが放っておかないのは仕方ありませんわ』

『そうそう。それに殿方としても一番脂ののった時期なのですし、そこは許して差し上げないと……。やはり日夜技も無い若すぎる方が相手では満足できないでしょうし……』

『それは「私が……」と仰っていらっしゃるのでしょうか?』

『あら、世間一般的に、と言うお話ですわよ。ほほほっ』

『けれど、幾らなんでもあのお話はね……。まあ、いつかはそう言う事になるのではないかとは、思っておりましたけれど……』

『本当に。美丈夫な殿方をお持ちだと、何時の時代も女は泣かされますわね。あちらの方とも仲良くお過ごしくださいね?』

『あちらの方……とは?』

『あら、御存じありませんでしたの? そう言う事でしたらお忘れ下さいね』

『はあ……』


夫人等の言っている事の意味が部分的に理解出来ずに困惑し、邸に帰って色々と考えてみた。
何故休日前の夜に親密な態度をとっている旦那様が、平日は何処かそっけないのか?
何故我々には新婚なのに俗にいう密月が存在しなかったのか?
何故、求められるのはいつも1度きりなのか……。

考えれば考える程、それは旦那様の浮気に直面してしまう事ばかりで、私は大きく首を何度も振った。

旦那様の浮気は、書面での約束を取り付けはしたが、それなりに覚悟はしていた。
浮気はしても、毎日私の下に帰って来て下さるのならばそれでいいと思い込もうとしていた。
けれど、どうしても

『あら、御存じありませんでしたの? そう言う事でしたらお忘れ下さいね』

あの言葉が帰宅してからも、ずっと脳裏を過り離れなかった。
まさかとは思うが、とっても嫌な予感が拭えない。
けれど、例え何があったとしても、それでも私は……。

(別れたくないかも……)

かすかな期待を胸に、私は父が私を心配し、旦那様の行動を探る為に雇ってくれていると言っていた密偵に全てを託した。

その結果が……。つい先程知らされた。現実は、とても辛く重いものだった……。


「すっ、すまない!」

ああ、旦那様は、全てを認められるのですね……。

「ずっと……不思議に思っておりましたの。新婚の内は日々睦み合うものだと聞いておりましたのに、旦那様は帰宅の早い時も中々私を求めては下さらず……。うっく……。でも、旦那様のお仕事は護衛騎士と言う大変なお仕事だと伺っておりましたから……、お身体を休める為に必要なお時間なのだと、ずっとそう思い込もうと思っておりました……。でっ、でも、もう無理ですぅッ」

そう告げると、私は大きく泣き崩れた……。

★押して頂けると励みになります

にほんブログ村
にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村


続編に興味のある方は↓まで
風波涼音作品 【離婚しましょう?旦那様ッ】続きを読む
総もくじ  3kaku_s_L.png パウリンの娘
総もくじ  3kaku_s_L.png 記憶の彼方とその果てに
もくじ  3kaku_s_L.png お知らせ&感謝
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【お知らせ(紹介) 『愛されすぎて困ってます!?/佐倉紫』 】へ
  • 【ずっと心に決めていた《171.邸 内2》(祖父視点)】へ

~ Comment ~

NoTitle 

・・・。
・・・・・。
・・・・・・。
まずい。笑いをこらえるのに必死になり過ぎる。
ここまで勘違いが過ぎるともはやコメディにもなる。
流石は涼音さん!!
\(◎o◎)/!

LandM 様 

今日は。

すれ違いでの視点替え、書いていてもホントに楽しくて♪
どれくらい食い違っているのかを前面に押し出して書いてみたのですが、お褒めの言葉を頂けて光栄です♪
確かにコメディ要素満載ですね(笑)

この楽しさを知ると、視点替えがやめられなくなります^^

いつもコメント有り難うございます。
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【お知らせ(紹介) 『愛されすぎて困ってます!?/佐倉紫』 】へ
  • 【ずっと心に決めていた《171.邸 内2》(祖父視点)】へ