ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《171.邸 内2》(祖父視点)

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程なくしてこちらに向かって来る複数の足音に、少々緊張した面持ちで扉に目を向ける。
成人し、どれだけ美しくなっているであろうかと思うだけで心は弾む。
愛しい孫娘に会うのは、ほぼ1年振りだ。
喜びと共に何とも言い難い底知れぬ不安が交差する不思議な感覚だが、純粋に嬉しいと言う気持ちには本物だ。会える事を考えるだけで自然と顔がほころんでくるのが自分でも分かる。
だが事は可愛い孫娘の一大事。
浮かれることなく、ここは諭すところは諭し、今から自らが行おうとしている浅はかな行為が世間的に何と言われるべきものであるのかと言う事を、深く認識させなければならないと思っている。

私は平然を装いつつも威厳を保つ為に、ゆったりとした長椅子に座りなおした。


「貴方、入りますわよ」

扉が二度叩かれ、妻が入って来た。 

「あら随分と落ち着きはらっていらっしゃるのね」

「当然だ」

期待した妻の後ろには、妻の事を心配し、いつも近くに付き添っている専属の侍女の姿。
何処にも孫娘の姿を見つけることは出来なかった。
同行の者を認めようとしない頑なな態度の私とは、真面に話をする気は無いとでもいうのか?
少なからず孫娘の居ないことに気落ちしたが、何とか平静を装った。
だが、そんな私に向けられる妻の視線は何故かとても冷ややかだ。

「マリエッタはきちんと話を聞いて下さらないのであれば、中に入る気はないようですわ」

「どうせその同行の男の口車に乗せられている状況なのだろう。良いように利用されおってッ」

手紙の主とは過去に何度か城ですれ違ったことはあったが、当時の印象は決して悪いものでは無かった。
周囲からもとても爽やかで、若いが高家の当主であることをひけらかす事もなく、何処か奥ゆかしさすら感じられると、どちらかと言えば好印象の評判だった。
かなり若かったが当時、既に縁談話が出ていて一時期かなり話題に上った。
確か相手は然る公爵家のご息女で、王太子殿下とはお従妹の間柄。2歳ほど年上の者だったと思う。
と言う事は、今回の件は明らかに第二……、いや第三夫人と呼ばれる座の存在に違いない。
表立って口に挟む者は居ないかもしれないが、わが愛すべき孫娘を、とてもそのような日陰者にはさせられないと思っている。

「ああ、貴方ったら……、やっぱり何も分かっていらっしゃいませんのね」

妻は大きくため息をつきながら、首を大きく横に振った。

「何が言いたい?」

「口車に乗せられているのは、こちらの方かもしれないとは、全く思いませんでしたの?」

「はあ?!」

どういう事だ?
妻は何を戯けた事を言っているのだ?!

「あの子の言葉を全て鵜呑みにしてしまって……」

「息子を信じて、何が悪い!」

「あの子は明らかに嘘をついておりますわ。貴方はあの子には昔からに甘かったですもの。直ぐに信じてしまうのも無理はありませんけれど……」

「お前は自分の息子を信じられないのか!?」

「では、貴方は孫娘の言葉を信じないのですか?!」

「騙されていると分かっているのにか?! 日々陰で日陰者と罵られるのはマリエッタなのだぞ!」

「マリエッタが……日陰……者?」

「そうだ。お前はマリエッタをそのような目に合わせたいのか?! 情けないッ」

「そんな……。ですが、とてもそんな風には……」

「だからお前は甘いと言うのだ!」

「では『ただの友人としてならば会う訳にはいかない』と……、『誠意をもってこの地に足を踏み入れた。マリエッタとのことを認めてほしくて』と仰っていた言葉の真意は何なのでしょうか?」

「そのように図々しい事をぬけぬけと申したのか?! 何が誠意だ! もう我慢ならん、私が自ら追い返してやる!!」

私はその場を立ち上がると、玄関の大扉めがけて大股で歩き出した。

「あっ、あなたッ。れっ、冷静にですよ。あくまで穏便にッ」

必死に追いすがろうとする妻を振り返ろうともせずに……。



あけ放った扉の前には、驚いたような表情で固まる若い男の姿。
その横には美しく成長した孫娘が、腕に縋りつくように寄り添っている。

ああ、忌々しい。離れろ!!

男は全く悪びれる様子もなく、じっとこちらを眺めている。

「おじい……さま」

「離れろ! マリエッタ」

「嫌です!!」

「お前は、自分が何をしようとしているのか分かっているのか?」

「……分かっています……」

「マニエール家は如何するつもりだ」

「それは……まだ……」

「そんな男の側妃に収まる等、私は絶対に許さんからな!!」

「えっ? ……そく……ひ??」

目の前の二人が、驚いたような眼差しで互いに目を合わせると、こちらに目を向けた。

「あの……、奥様から、私の事づけた書類を受け取っては?……」

男は軽く私に一礼をすると申し訳なさ気に……、下から少し覗き込むように私に問いかけた。

「ああ、御免なさい。手渡す余裕がなくて……」

慌てた様子で妻が、預かったと言う書類を私に差し出した。

「読んで頂ければお分かりになると思いますが、私は正式な……ただ一人の妻としてマリエッタ嬢に求婚しております。どうか私との結婚お認め下さい!」

「…………」

深々と私に頭を下げ続ける二人の姿。
手にした書類は、目の前の男の身上書で、私はそれに目を通すと固まった……。


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~ Comment ~

NoTitle 

なんだ。この「目に入れても痛くない」という。
色ボケ祖父の視点は。
(´゚д゚`)

孫娘を溺愛しすぎだろう。。。
まあ、孫娘を可愛がることの心境は理解できますが。
これはアレク君も大変そうだなあ、、、。。。
祖父が亡くなるまで。

LandM 様 

今日は^^

マニエール家は子も少ないし、中々授からない傾向にあるため往々にして子を溺愛する傾向にあります。特に母親より父親の方が凄く(笑)
それに加えて今度は孫が可愛い女の子と言うのもあって、正にお爺様は心配で心配でならないと言った感じです(爆)
結果、こんな感じになってますが、アレク確かに大変です。
これからどのような尋問……、いえお沙汰が待っているのか、書く方も楽しみ♪

いつもコメント有り難うございます^^
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