ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《173.邸 内4》(祖父視点)

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目を通した上申書は立派なもので、成人した孫娘を嫁がせる先としては、一般的には申し分ないものだ。
真剣な眼差しで私を見つめ、結婚の許しを乞おうとする姿には何一つ浮ついた気持ちは感じられない。
この者が本当に孫娘を愛し、正妻として迎えたいと思っている気持ちは十分に理解できた。
だが、マリエッタは我がマニエール家の跡継ぎ娘だ。加えて当主となった息子の認める婚約者も既にいる。
そのような状況下にありながら、私に何を求めると言うのだ。
私が認める認めないの問題では既にない。息子に婚約申請を撤回させようとでも言うのか?!
その為にここへ訪れたのならば考えが甘いと思った。
息子は私に似てとても頑固だ。一度言い出したことは簡単には引かない。孫娘もその点は私たちによく似ている。マニエール家特有の頑固さを備えている。既にその孫娘が決め言い出したことだ。容易に引くとは思えない。これは根競べだ。
とは言え、つい孫娘に私が甘くなってしまう事が時としてある事は事実。100歩譲って例え口添えをしたとしても、簡単に認めることは出来ないだろう。
元々孫娘の結婚事態、私は乗り気ではなかったのだ。マリエッタの嫌がる結婚を押し付けようとすることに対しては口を挟んでやってもいいが、この我がマニエール家に障害にしかならない男を孫娘の伴侶として簡単に認める気にはどうしてもなれない。
それに、何よりたかが一日で私から孫娘を奪う気でいると言う生意気な態度も気に入らないッ。

「距離が近い。離れろ!」

「はあ?」
「えっ?」

「婚姻の容認を得る事を希望し、この地に足を踏み入れているのであれば、まだ認められている訳でもないのに、そのように親密な態度を相手に見せつけるのは控えるべきではないのか? 気分が悪いッ」

目の前の男と孫娘の親密な姿を見て、私は孫娘が嫁に行くと言う事の本当の意味を今まで理解していなかった事に気付いた。
結婚をすると言う事は、見ず知らずの男に可愛いたった一人の孫娘が寄り添い手を取ると言う事なのだ。近しい友人等に可愛がられ、じゃれつく姿を可愛いと思い目を細めていた昔の感情とは全く違う。この目の前の二人の親密めいた様子を見ていると、胸にしめつけられるような苦しさと共に明らかに苛立ちを覚えた。
孫娘が……、私の可愛いマリエッタが、目の前で恥じらう様子もなく然も当然と言う態度で若い男に自ら触れている等、耐え難い事実。

「仲を公に認められてもいない若い男女が、周囲に対して節度無い……自らを軽んじる行動を取るべきでは無いのではないか?!」

厳しく睦まじい二人を叱咤した。
だが、孫娘は全く怯まなかった。

「節度って何? デビュティの時ですら認められている初めて出会う男性の腕を取ると言う行為を、思いを寄せる殿方にしては何故いけないの? みんなしている事だわ。若い恋人たちは誰だってッ」

「親の承諾も無しにか?」

「それは……ッ。でも、心は偽れないわ!」

私の可愛いマリエッタが、私の言葉に反抗し、更には悪びれる様子もなく男の腕に縋りつこうとする始末。まさかの可愛い孫娘の態度に、私は思わず側に居た男を睨みつけた。
最近の若い連中はこんなにも軽々しく人目もはばからず振舞えるものなのかと呆れて返っていれば、側の男が優しく孫娘の手に手を添えた。
やってられるか! と思い瞳を反らそうとした瞬間、互いに顔を見合わせ小さく微笑む姿にまたまた固まってしまった。

(何だ?! まっ、まさか……)

更に近づく二人の距離に、挑発しているのかと思い、思わず立ち上がろうとした途端。

「マリー、手を放して。男爵の仰る通りだ。我らはまだ許しを乞うている段階だ。今日の告白だけでも憤慨に思っていらっしゃるはずなのに、この態度は私も配慮が足りなかった」

そう告げると男は優しく孫娘の手を自らの腕から引き離し、深々と頭を下げた。

「申し訳ありませんでした男爵。ですが我らが真に愛情をもって思い合い、この場に居る事だけは分かって頂きたいと思っております事だけは、ご理解下さい」

「……いや……。分かって貰えるのならば、それでいい」

挑発的なのかと思えば、急に紳士的な態度。何を考えているのか?
だが、相手の出方を見て的確な判断を下し振舞える人物だと言う事は間違いない。
この若さで多くの領地を一人で治め、書類にもあったがこの年で国務省の筆頭補佐官だ。
頭が切れる者だと言う事は間違いないだろう。
今後何処までその地位を登りつめるのか。将来的には頼もしい人物だが、孫娘との親密な態度を思えば簡単に頷く気にはなれない。頭が良く仕事も出来る男が愛する者を側において尚、真摯な態度で振舞えるかと言えばそれは否だ。
若い時ほど抑えは効かないものだ。
聞きたくもあるが、知ることが怖いッ。
だが、息子に内緒で二人が会っていた事は事実で、息子もそれを止められなかった。と言う事が意味するものは……

「一緒に出向いたと言う事は、マリエッタは今、もしかして侯爵の側にいると言う事なのか?」

思い切って率直に思っている事を口にしてみた。
落ち着いてこちらに向けられていた男の視線が、一瞬だが揺らぐ。

「……如何して、そのように思われるのですか?」

「マリエッタは今ある縁談を拒否している。と言う事は、息子は私に対し虚言を働いていたことになる。侯爵とマリエッタが相愛と言うならば、そのような状況で息子の下にこのマリエッタが留まっているとは思えない。この気性だ。既に家は出ているのであろう? 母親も一緒なのか?」

二人が相愛で付き合いがあるのならば、状況からしてあの息子がマニエールの屋敷からマリエッタが容易に出る事を許すとは思えない。

「……只今マリエッタ嬢は、我が屋敷の別邸にてお預かりさせて頂いております。急な事でしたので私の乳母を侍女として側に置き、お世話をさせて頂いております。この件はお母君には既に了承を頂いており、良く丁寧なお手紙も頂いております」

「そうか。では、セザンヌは一緒ではないのだな?」

嫁が一緒でないと言う事実は、私を大きく落胆させた。
孫娘は、もう……。
いや、今は考える事は止すまいと、無大きく首を横に振った。

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~ Comment ~

NoTitle 

よし。
ここはアレクよ。ここはマリーとイチャイチャして、おじい様を怒り心頭で心筋梗塞を起こさせよう。
(゚∀゚)

・・・なんて、ことをしちゃ駄目なのか。。。

おじい様も大人げないのだから、アレクも大人げない対応しても大丈夫さ!!

LandM様 

今日は^^

そうですね。ここはスルーするのか、イチャイチャ或いはシレっと告白して怒りをかうのかのどれかでしょうね。次回分かります(笑)

>おじい様も大人げないのだから、アレクも大人げない対応しても大丈夫さ!!

この言葉、結構当たってるな(爆)

いつもコメント有り難うございます。
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