ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《174.邸 内5》(祖父視点)

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そんな私の心を知ってか知らずか、思わず視線を反らせた私の姿が孫娘にどう映っているのか。

「お爺様?」

「いや、何でもない……」

心を見透かされぬように必死に取り繕おうと言葉を発してはみたが、多分の不自然さは抗いきれない。
その証拠に真面に孫娘の顔すら見る事も出来ずにいる。何とももって本当に情けない話だ。
すると、その事に何を思ったのか孫娘が……。

「お母様の事なら心配はいらないわ。ご実家なの」

「あっ、ああ、そうか……」

内なる心を見透かされていないことに安堵して、小さく息を吐き出した。
自らが振った話だと言うのに見事に足下を救われ、たかが言葉一言でこれ程までに感情が起伏し、心臓がせわしなく不安げに鼓動する始末。こんな感情は久しく覚えていなかった。

「お手紙の話では、昼間は邸に戻っているようだけれど、お父様とは全くお顔は合わせていないみたい。それでも公式行事には二人で参加されているから、本当に別れる気は無いのかもしれないけれど……」

そう告げながら孫娘は何処か悲し気に目を伏せた。

「お前にまで心配をかけているのかッ。全く情けない親達だな」

「いいえ。そんな事は無いわ。だってもとはと言えば全ては私のせいだから……。夫婦の事は夫婦にしか分からない事もあるのでしょうけれど、私のことが無ければ少なくともお母様は邸を飛び出してはいないと思うの。その事だけはこれでもお父様には申し訳なく思っているのよ」

「ならば、お前が屋敷へ戻ればいい。それで全ては解決する」

これはいいタイミングだと話を切り返してみれば、顔を見上げ大きく首を横に振られ、挙句には、更に力強く訴えられてしまった。

「それは絶対に無理ッ!」

その視線は鋭く、私はまたしても自らが墓穴を掘ってしまった事に気付いた。
言葉を発するや否や孫娘の視線は側に居た男へと向けられ、愛おし気に見上げているッ。
男も目を細めて孫娘を見つめており、またしても二人の世界を作り出そうとしていた。
こちらから言われた事を気にしてか、確かに触れ合ってはいないが、際どい雰囲気だ。
もっと離れろ! 離れるんだッ!!

「おい! お前たちッ!!」

私は二人の間に入り、その距離を引き離した。

「お爺様ヒドイッ!!」

「どっちがだッ!」

「あなた、大人げがありませんわ」

「うっ、うるさいッ……」

ため息交じりの妻の発言に、私が耳を貸すことは無かった。
妻は一体どっちの味方なんだ?!

「彼から離れるなんて絶対に無理だから! こんな状況だから本邸にはまだ顔を出せる立場では無いけれど、執事や彼の乳姉弟にはもう紹介して貰っているし、私、何があっても彼の側を離れる気は無いから。これかも私は彼の良き伴侶として恥ずかしくない行動を取っていくつもりだから、お爺様もそのつもりでいらして!!」

「!!!……、いま……なっ、なななッ……」

(彼の……、は・ん・りょ……だとぉ?!!!)

瞳を大きく見開き、食い入るように見つめる孫娘の視界には、もはや私の姿などおそらく映ってはいない。
側に居る男の顔を愛おし気にじっと見上げる孫娘の熱い視線。その頬はほんのり朱色に染まっていた。
その孫娘の視線には、既に私の知る少女の姿は感じられない。
あの男とここに来てから、ずっと懸念を抱いていた事だが、それを認める事がはっきり言って怖かった。
胸に秘めたる思いを、声に出すべきか迷いあぐねていた正にその時、私は決定的ともいえる事実を目にする事となった。
見上げた視線の先に映った孫娘の首筋には、襟もとのから茶褐色印が見え隠れしていたのだ。それが何を意味するかを知らない私ではないッ。
即座に切り返し、鋭い視線を男に向けた。
すると視界に入って来たのは私の予想を肯定するかのような男の態度。額に手を当て、顔を覆い隠すような姿だった。

「……マリー……、やってくれたね」

男は小さく微笑むと、孫娘に向けて苦笑いを浮かべていた。

「えっ?」

自らの告げた内容の真の意味に孫娘は全く気付いていないようで、小首を傾けている。

「マリーが自らここまで大胆な告白してくれるとは思ってもみなかったから、当初の計画とは随分と違ってしまう事になりそうだ。けれど、確かにこの方が一番手っ取り早いやり方だったのかもしれない。とっても協力的で嬉しいよ、マリー」

「えっと……、アレクシス??」

孫娘はまだ自分が爆弾的発言をしてしまった事実に、全く気付いていないようだ……。

「確かにマリーは紛う事の無い私のたった一人の伴侶だ。例え二人の仲が認められなくとも、今までも……、そしてこれからも、永遠にね」

「ああ、アレクシスッ」

「!!!……」

決定的とも取れる男の言葉に加え、孫娘の羞恥な態度!
恥ずかしげもなく目の前の男の首に自ら手を回ししがみつき、くっ、唇をよっ、よせ……。
私は思いがけず眩暈を起こし、側にあった椅子に倒れ掛かるように項垂れた。

「あなたッ!」

心配して側に駆け寄る妻の手を振りほどき、私は声を荒げる。
もう二人の関係に、疑う余地は無いッ!!

「……表に出ろ。アレクシス・ルボル・グラッセッ!!」

私は地を這うような低い声で訴えた。

「あっ、あなたッ!」

「その根性、叩きのめしてやるッ!!!」

告げると直ぐに、私は応接室の暖炉の上に飾られていた、二本の剣を手にしていた。

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~ Comment ~

NoTitle 

更新、お疲れ様です。


ふふふ、マリーったら祖父にアレクを否定的に言われまくって彼女も感傷的になってしまって爆弾発言してしまいましたね。

祖父も気づき始めてしまっているようですけど、いっそこの際すでにアレクに初めてを捧げた上に中に出してもらって赤ちゃんがいる可能性もあるって最大の既成事実を言ってしまってもいいんじゃないかなって思うんですよね。

まあ、婚前交渉なんてお祖父様の価値観に絶対に合わないと思うから余計頑なになるかもですけど(笑)

マリーがもっと強かだったら「今お腹にいる子の父親と一緒にいたい」とか言っていたかもしれないと勝手に想像もしてましたけど。

まあ、逆上して決闘を申し込んだお祖父様ですがアレクがどう反応するのかな?

yama様 

今日は。

マリー、感情的になって突っ走っちゃいましたね(笑)
当初の設定ではここまでマリーはしゃしゃり出るはずでは無かったんですが、書いてたらマリーが黙ってられなくなって勝手に出て来ちゃって^^;私も「あれれ?」って感じでした。
でも、確かにあのマリーが、口を挟まずじっと大人しく聞いていられる訳もなく、書いていてキャラが勝手に走ってくれる時は、あまり操作せず勢いに任せちゃいます。

アレク的にはお爺様の性格を既に把握している状況だっちたので、穏便に済ませるなら、あまり刺激せずが一番と思っている状況でしたが、マリーの天然ボケで予定が崩れてしまったので、もう変な小細工は出来なくなったし、そこはこれから腹をくくって頑張ってくれる筈。頑張れ、アレク♪

アレクは決闘の申し込みを受けるのか?
それは次回分かるかな?その次になるかな?
今その部分は書きかけなので、何れにしても「邸内」は次回で終わる予定です。

いつもコメント有り難うございます。

NoTitle 

よし、ここでアレクの反撃パンチだ。
(゚∀゚)

・・という展開にはならないのですかね。
なられても困るのですが。


おじい様なんて知るか~~~!!!
\(◎o◎)/!

とアレク君も言ってあげると、良いのかもしれないですね。

LandM様 

今日は^^

>よし、ここでアレクの反撃パンチだ。(゚∀゚)
・・という展開にはならないのですかね。

これはちょっと難しいかも~(笑)
でも、絶対引かないのは確か♪

まあ、どうあしらうにしろ、あしらわれるにしろ、絶対にあきらめませんけどね。アレクは^m^

いつもコメント有り難うございます。
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