ずっと心に決めていた

ずっと心に決めていた《175.邸 内6》(祖父視点)

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日常的に手合わせする相手がいる訳では無いが、今でも週に2度の鍛錬を欠かした事はない。
まだまだ素人に負ける気など、更々ない!

「おっ、お爺様止めてッ! アレク相手に剣を手にするなど、お爺様のなさりようとは思えないわ! お爺様、いつも仰っていたじゃない。剣は素人相手に抜くべきものでは無いってッ」

「状況が状況だ。致し方ない!」

私は孫娘の言葉を振り切った。

「アレクも相手にしてはいけないわ! お爺様はこう見えても昔、少しの間だけれど騎士団に身を置いていたことがあって……」

「ああ、知っている。騎士の称号も持たれているらしいね。実際には従騎士として働いた後、騎士の称号を賜って間もなく除隊されたらしいから、職務には殆どついていなかったようだけれど、記録には名が記されてあった」

「そこまで調べているのならば話は早いな」

「お爺様ッ!」

「お止めください、あなた!」

「アレクを嗾けないで。卑怯です!」

「そうですよ。大人げない」

貴族間の恋愛結婚には障害がつきものだ。
地位間に大きな落差の無い家同士の婚姻ならば何ら大きな問題にはならないが、格差が生じる場合、特に女性側の家が高家の部類に属する場合は何時の時代も中々に難しく、容易には纏らないものだ。
かく言う我々もそれに漏れることなく結婚に際しては、人並み以上に苦労を強いられたものだ。
会う事もままならず、門前払いを食らい続け、中々話すら聞いては貰えないのは当たり前。人を介して何とか正式に話をさせて貰える事は出来たが、その間に2年近くの歳月を費やした。
更に両親に了承の意を得てからもその後が大変で、旧家ゆえの悩み事まで発生した。親族の長たる本家の許しを請う必要があると……。
妻の実家は先祖に王妃を輩出した事もある程の名家で、侯爵家の分家となる伯爵家で、幸い跡継ぎ娘では無かったが、彼女の周囲には自分より高位、好条件の縁談話が山のように来ていたらしい。
本来ならば地方領主としての肩書しか持たぬ平凡な男爵の跡取りが、名乗りをあげる事を許されるような家の娘では無かったのだ。

『説得できるだけの材料を持ち合わせていないのならば、それを認めさせるだけの地位につけ。我が姪に肩身の狭い思いをさせる事は許さぬ!』

告げられた言葉の真意は、すなわち最低でも城に上がれるだけの身分を持てと言う事だった。
だが、ただの地方領主としての地位しか持たぬ男爵家の息子が、そのような地位を容易に得られる訳も無く……。
だが、地位が低くても城勤めが容易に許され、努力次第でそれなりの地位を得られる仕事が一つだけある。
それは騎士団に入隊し、正騎士としての称号位を得る事。
国王に栄誉職として称えられる騎士の称号を持つ者には、誰もが敬意をはらう。だが容易く得られる称号では勿論無い。
私は仲介をして貰ったある権力者の力を借りて、何とか従騎士としての城に入る事を許された。そして、そこからは死に物狂いで身を粉にして剣術を学びながら働いた。
かなりの時間はかかったが無事騎士の称号を得る事も叶い、私は正式に愛しい者を迎える準備を整え目ことが出来た。私の努力は認められる事となり、そして我らは結ばれ現在に至る。
だから孫娘の伴侶と成り得る者には、本来財力などは期待せず純粋に孫娘を愛し慈しむ事が出来る者をと思っていた。どうせ婿養子として迎え入れるのだから、下級貴族、最悪平民の出の男でも孫娘が良しとし、幸せになれる相手であればそれで良いとさえ思っていたのだ。だから今ある縁談は我がマニエール家にとってみれば良縁中の良縁。こちらから何かを求める等おこがましく思えるほどの話だった。加えて孫娘も望んでいる事ならば、下手な事はしない方が孫娘にも嫌われることも無く良いのだと頭では分かっているのにどうしても感情がついて行かなかった。
更に孫娘の縁談事には新たな問題も浮上し、今後の見通しは決して明るいものでは無い。
それなのに、この目の前の男と来たら、この問題をいとも簡単に考えている感がぬぐえない。如何言う頭をしているのか?
こちら側にしてみればまたと無い良縁と言う事には違いは無いが、話を纏めようとする事は分不相応で、はた迷惑極まりない状況に陥る事となる。
口に出すことも腹立たしいが、既に孫娘の身も心も奪っている様子だ。本当に忌々しいッ。
ならば兼ねてから孫娘を奪っていく相手には、是が非でも示して欲しいと思っていた事を実行させて貰おう心に決めた。

孫娘を本気で奪う気ならば、それなりの覚悟を見せて見ろ!
相手がこの者ならば躊躇する必要は何処にも感じられないッ。
この者の力を試してやる!!

「こういう状況も、予測していたのではないのか?」

「否定は致しません」

これ程までの高家ともなれば、この男の場合、若さゆえのやっかみ事や、おそらく敵も多い筈だ。
媚びを売る者もあれば、忌々しく思う者もおそらくは居る。あわよくば若いがゆえに足下を掬いその地位に座ろうとする者も現れるやもしれん。
その時、足下をすくおうと利用されるのは家族と言う事も十分にあり得る話だ。
側に居るこの者が、その時本当の意味で孫娘を果たして守れる力を持っているのか?
腕の立つ者を側に置くことは容易いだが、何としても愛しい者を自らの手で守り抜くのだと言う意思は常に持っていてしかるべきだと私は思っている。既に何を言っても無駄かもしれないが……。

「趣味の欄には『薔薇造り・鍛錬』と記されてあった。多少は心得があるのだろう?」

「まあ、それなりに」

男は私に向かって、薄笑みを浮かべた。

「それは頼もしい」

「お爺様ったら! アレクもいい加減にしてッ!!」

「マリエッタ! これ以上、口を挟むな!! これは男の勝負だッ。貴族の男子たる者、こういう決断を迫られることはあるのだ! そうだろう?グラッセ侯爵」

心配する孫娘の言葉を払いのけ、私は男に言葉を嗾けた。
貴族の男子の教育要項には剣術の基本的指南が義務付けられている。
昔ほどではないが何かあれば最終的には決闘で決着をつけると言う話は今でもたまにだが聞くことがある。私が簡単に頷かない事は想定範囲の筈だ。ならばその事も視野に入れ準備をしていなければこの者の器量もその程度だと言う事。結婚を反対する名目も出来ると言うものだ。
試す事に何のためらいも無かった。
どれ程の腕前か、楽しみで仕方がない!

「仰る通りです」

剣を受け取り不敵にほほ笑む男の姿に、私はその心得を理解した。
本当に……、何処までも忌々しい奴だが、楽しくなりそうだ。

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※見直しも後半300文字程加筆し、それに伴い内容を一部修正いたしました。内容に大きな違いは有りませんが、ニュアンス的要素が多少変わっています。
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~ Comment ~

NoTitle 

決闘ですか!!??
(´゚д゚`)

流石は涼音さん!!
おじ様に対する若さが痺れる!!憧れるぅ!!
(/・ω・)/

アレクの運命はどっちだ。。。

LandM様 

今晩は^^

はははっ。結局そうなりましたかねぇ(ふぶっ)
お爺様、若いですよ♪
年齢的には絶対に60は超えてる筈なんですが、元気さはまだまだ50過ぎくらいかな。

さあ、アレクの運命はどうなるのか?
ここで、アレクがあっさり勝っちゃったりしたら、絶対に面白くないな。ギャグ的にはアリだけど(笑)

いつもコメント有り難うございます♪
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